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あなたとよむ短歌 vol.26 「固有名詞」を取り入れる

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川柳・俳句・短歌・詩
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あなたとよむ短歌
vol.26
「固有名詞」を取り入れる

日差しの強い日が増え、地域によっては初夏を感じる日もあるようです。
5月は新年度の慌ただしさが一段落し、緊張が解ける時期。疲れがでたり、なんとなく気落ちすることも多いようです。「五月病」という言葉もありますよね。
長い小説が読めない気分のときは、短歌が収録された「歌集」を読んでみるのもいいかもしれません。また、長い小説が書けないときは、短歌を詠んでみるのも気分転換になるかもしれません。

それでは今月も、みなさんの一首を読んで・詠んでいきましょう!

新学期一人静かに本を読む朝の光に埃は舞って
(檸檬さん/読売歌壇応募作品)


「読売歌壇」は、この連載でも何度か取り上げている「新聞歌壇」の一つです。新聞に設けられている短歌コーナーですね。

短歌結社の指導者であったり、短歌の公募で審査員を務めたり、という有名な歌人が選者となり、誌面に掲載する作品を選出します。多くの場合、一人の選者の判断で一定期間の応募作品を選考するため、「この歌人に読んでもらいたい!」と狙って応募するのもオススメです。
全国誌の新聞歌壇は投稿数も非常に多いそうです。掲載を目指す人は、諦めず、粘り強く投稿しましょう。

今回は檸檬さんの短歌です。「新学期」とありますが、2学期や3学期の始めではなく、新しいクラス、新しい学校の緊張感……どことなく春を思わせます。
また、下句の「朝の光に埃は舞って」は、雑多な学校と、そこに通う10代たちの繊細さを表現しているようです。大人になった身からすると、懐かしい空気感に胸が詰まる作品です。

一首全体から静謐さが伝わってきます。読書というシチュエーションと、「新学期」「一人」「朝の光」などの単語が効いているためです。そうなると、「静かに」という説明は不要になるかもしれません

その分、どんな本を読んでいたのか、作者名を入れるのはどうでしょうか?

新学期ひとりミヒャエル・エンデ読む朝の光に埃は舞って
新学期ひとり東野圭吾読む朝の光に埃は舞って

どうでしょうか? 全く違った印象になりそうです。作者名という「固有名詞」を取り入れることで、それ自体が持つイメージを短歌に生かすことができます
なお「一人」は「ひとり」に開きました(漢字をひらがなにすることを、文芸の場では「開く」といいます)。「新学期」から漢字が続いてしまうと読みづらくなるためです。漢字、ひらがな、カタカナ、どれがいいか考えるのも、短歌を詠む楽しさですね!

引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています!

 
■講師プロフィール
柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
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