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あなたとよむ短歌 vol.21「視覚情報が8割」というけれど

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川柳・俳句・短歌・詩
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あなたとよむ短歌
vol.21
「視覚情報が8割」というけれど

こんにちは、柴田葵です。いよいよ年末が迫ってきましたね。
今年1年、ありがとうございました。これからも、短歌を楽しむきっかけになるような連載を目指していきたいと思います。

それでは、今月もみなさんの一首を読んで・詠んでいきましょう!

故郷の七夕まつり人もなくシャッター街にゆれる短冊
(森野くまさん/うえだ七夕文学賞応募作品/テーマ「七夕」)


小説家・劇作家として知られる久米正雄のゆかりの地であり、夏目漱石や川端康成も好んで訪れた長野県上田市。その上田市にある、上田西高等学校と上田女子短期大学が主催する文学賞が「うえだ七夕文学賞」です。
短歌のほか、自由律を含む俳句、自由詩の3部門が設けられています。毎年、幅広い年齢層から多くの投稿が集まり、前回は国内外6273名から10520作品もの応募があったそうです。

さて、森野さんの短歌ですが、さみしげな様子が的確に描写された安定感のある一首です。「七夕まつり」と銘打っていても、実際には人もなく、シャッター街に短冊がゆれているだけ……。その「故郷」がどこかはわかりませんが、誰の眼裏にも様子がありありと浮かぶのではないでしょうか。

定型(57577)にしっかりおさまるリズムや、小さな短冊に注目することでさみしさを表現する点も◎です。

せっかくですので、1つ提案があります。「視覚」以外の情報を、意識的に入れてみてはいかがでしょうか。

人間が五感で得る情報の8割は「視覚」から得ているといいます。視覚情報は共有しやすく、言葉でも説明しやすいので、つい、短歌も「目で見た情報」だけで詠んでしまいがちです。
短歌を詠むときは「聴覚」や「嗅覚」なども駆使して、積極的に言葉にしてみるのがオススメです。より豊かで多面的な一首になる可能性があります。

故郷のシャッター街の七夕の短冊ゆらす風の音だけ

「故郷」「シャッター街」「七夕」「短冊」を「の」だけで繋ぎ、小さな短冊にだんだんとフォーカスするような効果を狙いました。
助詞である「の」の効果を生かす名歌は多く、たとえば「ゆく秋の大和の国の薬師寺の塔の上なる一ひらの雲(佐佐木信綱)」は有名です。

「シャッター街」というだけで、人気がないという情報は伝わります。「人もなく」を削るかわりに、試しに「風の音」を入れてみました。

シャッター街は、シャッターが金属でできているため、意外と風の音が響くものです。「風の音だけ」と言い差しの形で終わることで、吹き抜けて消えてしまう風の儚さを出せるかもしれません。

「味覚」や「触覚」もぜひ入れてみてくださいね!
引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています!

 
■講師プロフィール
柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
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