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あなたとよむ短歌 vol.19 目と耳が驚く短歌

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川柳・俳句・短歌・詩
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あなたとよむ短歌
vol.19
目と耳が驚く短歌

すっかり秋らしくなってきました。秋の夜長、いかがおすごしですか?
心地いいこの季節は「吟行」がおすすめです。吟行とは、詩歌をつくるために外出すること。時節柄、大人数では集まりにくいので、一人でも構いません。歩きながら、ふと目にとまったもので短歌を詠み、どんどんメモしていきましょう。あとからいくらでも見直せばいいので、出来は気にしなくて大丈夫です。普段とは違った刺激を受けて、新しい短歌が詠めるかもしれません。

それでは、今月も寄せられた一首を読んで・詠んでいきましょう!

バカロレアババロアババア愛してる言わせるためにしりとりしてる
(窓雪さん)


窓雪さんの短歌は「応募できなかった作品」とのこと。今回、ご紹介できてとてもうれしいです。面白い作品ですよね。私は大好きです。声に出して何度も読みました。

読みはじめは「なんだろう?」とビックリしますが、どうやら二人でしりとりをしているようです。相手に「愛してる」と言ってほしくて「ア」で終わる言葉ばかり返しています。対する相手もすごいですね、「バ」で終わる言葉で攻めてきているようです。しりとり上級者でしょうか。
大人同士でしりとりをする、ある意味「無駄な時間」を共有できる二人の関係性。そんな親密さを築いていても、なかなか「愛してる」と言ってもらえない切なさが、コミカルな一首を支えています

面白いのは内容だけではありません。視覚・聴覚の面でも技巧に富んでいます。
たとえば「バカロレアババロアババア」の部分。カタカナが連続していて、まるで呪文です。見た目にもインパクトがあります。また、5音→4音→3音と次第に音数が減ることでスピード感が増し、本当に言わせたい言葉である「愛してる」に向かって意識が集中するような体感が得られます。
さらに、「愛してる」「しりとりしてる」と「してる」をリフレイン(繰り返し)させることで、二人の関係がずっと続くような雰囲気を醸し出しています。本当は「愛してる」を求めているのに「しりとりしてる」と「してる」違いなところも、ジョークのようでいて痛切な印象です。

窓雪さんにはぜひ今後も、自信を持って作品を応募・発表していただけたらうれしいです。私も窓雪さんの作品を楽しみにしています。公募への応募だけでなく、最近ではSNSで作品を発表するほか、ネットプリントで作品を配布したり、全国各地で開催される文学フリマで手製の冊子やプリントを販売する方も多くいらっしゃいます。発表の仕方はさまざまです。

最後に、音やリズム、視覚効果が印象的なこちらの名歌をご紹介して終わります。

えーえんとくちからえーえんとくちから永遠解く力を下さい
(笹井宏之『ひとさらい』)

引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています!

 
■講師プロフィール
柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
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