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あなたとよむ短歌 vol.15 メリハリをつける

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川柳・俳句・短歌・詩
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あなたとよむ短歌
vol.15
メリハリをつける

こんにちは、柴田葵です。
15回を迎えたこの連載。「楽しみにしている」というお手紙やメールをいただくようになりました。ありがとうございます!
公募に入選しなかった作品だけでなく、応募しそびれた作品や、誰かに見てほしい作品など、気軽にご投稿ください。送られてきた大切な作品を、今後も一緒に読んで・詠んでいきましょう。

それでは今回の一首です。

尾は黒で腹は黄色のあの鳥はいつも一人でエサをついばむ
(なこちゃんさん/東直子の「短歌の時間」/題詠「尾」)


月刊公募ガイドの人気連載、歌人・東直子さんの「短歌の時間」に投稿された作品です。
題詠「尾」、詠み込み必須、という公募でした。もし短歌の募集要項に「詠み込み必須」とあったら、指定された言葉を一首のなかに必ず取り入れなければいけません。
たとえば「尾」を「詠み込む」としたら、「お」「オ」と字の表記を変えるのはNGですが、「尾長」や「高尾国定公園」といった熟語を使うのはOKです。例外もあるので、募集要項はよく確認しましょう!

さて、なこちゃんさんの作品ですが「一人」という表現がとても魅力的ですね。
鳥の種類はわかりませんが、黒と黄色のコントラストが美しい鳥です。作品中で鳥を見ている、その視線の主(作品の主体)は、鳥に愛着を持っているのでしょう。「一羽」ではなく「いつも一人で」と人間のように数えてしまうほど、その鳥に感情移入しているようです。
もしかしたら、自分自身と鳥を重ね合わせているのかもしれません。鳥ではなく、むしろ鳥を見ている人自身に、孤独や寂しさを感じる一首です。

少し気になるのが、上句の言葉のつながり方です。
尾【は】黒で腹【は】黄色のあの鳥【は】と、鳥に関する情報がすべて【は】で並列されています。「……で……の」という緩やかな接続も相まって、いくぶん間延びした雰囲気になっています。黒と黄色、細長い尾と丸い腹、という対比をあざやかに感じさせるためにも、メリハリの効いた上句を探ってみましょう。

尾が黒く腹は黄色いあの鳥はいつも一人でエサをついばむ

どこが変わったかわかるでしょうか? 変更前と後を、ぜひ声に出して読んでみてください。かなり違いが感じられると思います。

また「あの」などの「こそあど言葉」も、どうしても使う必要がある場合以外は、一旦避けてみましょう。作者以外にはイメージが伝わらず、ぼんやりしてしまうことがほとんどです(反対にイメージをぼんやりさせたいときには、効果抜群です)。

尾が黒く腹は黄色い鳥が棲むいつも一人でエサをついばむ

「あの」の代わりに「棲む」という動詞を入れてみました。動詞を入れることで、鳥の体温や存在感がより伝わるような気がします。
さらに思いきってメリハリを出すとしたら、次のような方法もあるかもしれません。

黒い尾と明るい腹をあわせ持つ鳥が一人でエサをついばむ

「明るい」としましたが、元の「黄色い」の方がより具体的な風景が浮かびますね。迷うところです。ただ、「明るい」に変えたことで「黒」との対比が鮮明になり、生き物の内包する矛盾や裏表というニュアンスが強く出ました。

いかがでしょうか。メリハリを確認するコツは「音読」です。短歌はやはり「歌」なので、声に出して確認してみましょう。
引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています!

 
■講師プロフィール
柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
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