あなたとよむ短歌 vol.11「意味の重複」に注目
「意味の重複」に注目
少しずつ日が長くなってきましたね。お元気でしょうか? 柴田葵です。
季節の移り変わりは、短歌の良い題材になります。
和歌に多く詠まれる植物や動物、気候だけでなく、たとえば「パン屋さんの春の新作がおいしかった!」など、自分らしい「季節」を詠むのもオススメです!
それでは今回も、投稿していただいた作品を一緒に読んで・詠んでいきましょう。
「うえだ七夕文学賞」は、長野県にある上田西高等学校・上田女子短期大学が主催する文学賞です。短歌だけでなく、俳句、自由詩の部門もあります。
第6回は全部門合わせて7541作品の応募があったとのこと。国内外から、熱意のこもった作品が寄せられます。
複数のテーマが設定されているのも特徴的な賞ですが、かふ子さんの作品は「その他自由」を選択された自由詠だそうです。
かふ子さんのこちらの短歌は、多くの読者から共感を得られる作品ではないでしょうか。
「あったことのない祖父」の顔を写真で初めて見る。「母とそっくり」であることの驚き。
「祖母と母」ではなく「祖父と母」という異性の親子であることにも、なるほど、と思います。顔立ちや歳の取り方は、歳を取るほど、性別関係なく似てくるものではないでしょうか。
「母とそっくり」という言い差し調の結句は、まるで「!」がつくような、驚いた心情が表現されている部分です。
(たとえば「母とそっくりだと気づく」という書き方だと、より冷静な雰囲気になってしまいますよね)
今回、少し気になったのが「意味の重複」です。
祖父の顔を「初めて目に」したと書けば、祖父と「会ったことない」ことも伝わります。
「会ったことない」からこそ、写真で「初めて目に」したわけですが、少し説明に音数を取られすぎているかもしれません。「写真で祖父の顔を初めて見た」という情報自体は、どちらか片方だけで伝えることもできそうです。
「写真にて」を「写真には」としました。「~にて~する」から「~には~(がある)」に変えることで「写真で祖父の顔を初めて見た」という情報を端的に伝えています。
もしこの形にするなら、余った7音を自由に使うことができます。さて、何に使いましょうか?
私は「どんなところが似ていたのか」を知りたいと思いました。多くの人が共感する作品に、具体性を出すことで、より「かふ子さんにしか詠めない」作品になります。
いくつか例を挙げてみたいと思います。実際にどんなところが似ていらしたんでしょうか? いろいろ入れてみてください!
いかがでしょうか。額や、眉、くちびると具体的な部分を入れることで、読者にも情景がイメージしやすくなりました。1は優しそうな印象、2は厳しそうな印象、3は少しドキッとする大人の雰囲気が感じられます。
短歌は、説明文と違って「情報を伝えるためのもの」ではありません。なので、必ずしも効率的に言葉を選ぶ必要もなく「意味の重複」も一概にダメではありません。ただ「限られた音数をどう使うか」に意識的になって、あれこれ実験してみるのも面白さの一つです。
引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています!
応募規定 | ペンネームと、入選を逃した公募タイトル・応募した作品・お題やテーマ(ある場合のみ)をお送りください。 |
応募方法 | 応募フォームもしくはTwitterでご応募ください。Twitterの場合は公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローして、ハッシュタグ「#あなたとよむ短歌」をつけてツイートしてください。 |
賞 | 採用1点=公募ガイドONLINE上で講評・アドバイス、金券2000円分進呈 |
締切 | 常時募集 |