あなたとよむ短歌 vol.6「体言止め」には要注意
「体言止め」には要注意
こんにちは、柴田葵です。
連載『あなたとよむ短歌』も6回目。なんと、もう9月です!
さっそく今月も、ご投稿いただいた「公募に応募したものの入選を逃した短歌作品」を、一緒に読んで・詠んでいきましょう。
「うたの日」はオンライン上で毎日開かれている「歌会」です。誰でも参加することができ、1日に200人以上も参加者がいることも。私も何度か参加したことがあります。
「歌会」というと、宮内庁主催の歌会始を思い浮かべる方も多いかと思いますが、一般的には、自作の短歌を持ち寄って評や感想を言い合う場のことを指します。
多くの歌会では、最初は作者を伏せて作品を出し、忌憚のない意見を述べ合います。自分の作品について他の人の考えを知ることができるとともに、他作品について自分の意見を語ることで「どんな歌を、なぜ良いと思うのか?」など、自分自身の感覚も確かめることができます。
刺激にも勉強にもなる歌会ですが「知らない人と会うのは怖い」「時間が取れない」「緊張する」など、参加までのハードルが高いのも事実。短歌結社やカルチャーセンターが催す歌会は、比較的安心して参加できそうです。また、「うたの日」のような専用サイトや、掲示板、zoomなどを利用したオンライン歌会は、このコロナ禍ますます盛況です。歌会は参加者によって雰囲気がさまざまなので、最初は見学できるといいかもしれません。
甘酢さんの作品は、ご本人のメモによると、48人中真ん中くらいの成績だったとのこと。「うたの日」では1日に複数の「題」が出されますが、「飴」というお題には48人が参加し、それぞれが良いと思う作品に点を入れあった結果「真ん中くらい」の成績だったということです。ということは、当然、何人かがこの作品に「良い」と点を入れているわけで、私もすごく素敵な一首だと思いました。
神社のお祭りでしょうか。夏の夜、「君」はりんご飴を落としてしまいます。空には流れ込むような天の川。
地面に「落としたりんご飴」への視点から、りんご飴のツヤに反射するお祭りの明かり、夜空の「天の川」と、下から上へのダイナミックな視野の移動にドキドキします。
「夜」「君」「りんご」「天の川」という言葉からは、どことなく宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を思い起こします。
この見事な視野の移動を、さらに生かせるように考えていきましょう。
気にかかるのは、上句・下句とも「体言止め」になっている点です。
「夏の夜に君が落としたりんご飴」「神社に流れ込む天の川」と、体言止めが重なっています。つまり、2つの名詞(とその修飾語)が並んでいる形になってしまいます。安定感のある名詞は「ビシッと決まった」ようにも思えるのですが、まるで物が並ぶように、躍動感が損なわれてしまいがちです。
せっかく「下から上へ」「小さなりんご飴から大きな天の川へ」という、爆発するような視野の変化を描いている作品なので、上句か下句どちらかを体言止めでなくしてみてはいかがでしょうか。
方法はいろいろあると思うのですが、例を考えてみました。
「夏の夜」が舞台であることは「天の川」という言葉から伝わるので、一旦なくしてみました。空いた音数で、代わりに「手を繋ぐ」という動作をいれてみました。これは「りんご飴を落としたら手が空くだろうな」という私の連想ですので、実景を詠んだ作品でしたら他の動作や描写を入れても良いと思います。2人の関係性や感情が少し出てくる気がします。
いかがでしょうか。夏祭りも中止が相次いでしまいましたが、来年こそは出かけたいですね!
引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています。
応募規定 | ペンネームと、入選を逃した公募タイトル・応募した作品・お題やテーマ(ある場合のみ)をお送りください。 |
応募方法 | 応募フォームもしくはTwitterでご応募ください。Twitterの場合は公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローして、ハッシュタグ「#あなたとよむ短歌」をつけてツイートしてください。 |
賞 | 採用1点=公募ガイドONLINE上で講評・アドバイス、第6回掲載分から金券2000円分進呈 |
締切 | 常時募集 |