あなたとよむ短歌 vol.1「分かち書き」をやめてみる
「分かち書き」をやめてみる
こんにちは。はじめまして。柴田葵です。
連載『あなたとよむ短歌』がスタートしました!
公募に応募したものの入選を逃した短歌を投稿していただき、皆さんで一緒に読んで・詠んでいくコーナーです。
ところで、現代の短歌に「制約」はありません。季語も必要ありませんし、57577のリズムから外れた短歌も多くあります。
1日に1首詠んでも、100首詠んでも、3年休んでも、誰かに見せても見せなくても構いません。自分だけの言葉として日記に書き留めるのも、結社やカルチャーセンターで学ぶのも、どれも短歌との向き合い方のひとつです。
けれども、公募に応募するからには、やっぱり「入選したらいいな」という気持ちがあるはず。
私もさまざまな公募にチャレンジしてきたので、そのワクワク感はとてもよくわかります。自分の名前と作品が載ったときの、頭が真っ白になる感じ。私は昨年、第一回笹井宏之賞という公募で大賞を受賞し、その副賞として歌集『母の愛、僕のラブ』を出版していただきました。受賞の連絡や授賞式に加え、自分の本が店頭に並んでいるのを見たときには、頭が真っ白になるどころか透明になりそうでした。
入選するということは、誰かに読んでもらって評価されるということです。そこには、いくつか気をつけたほうがよいポイントがあるような気がします。
この連載が、なにかしらのヒントになりますように。
それでは、今回の短歌はこちらです!
第1回令和相聞歌は、前回まで平成相聞歌という名称で募集をされていた公募です。「相聞歌」は、恋について詠んだ短歌のこと。初恋でも悲恋でも、恋の内容は問いません。
健吉さんの作品は「朝のはじまり」にふと「君」の様子が変だと気づく、というシーンを描いたもの。妙に聞き分けの良い「君」。それだけなのに「なぜだか不安」になる……この些細な変化、短歌の着眼点として魅力的です。相聞歌というテーマにもぴったりだと思います。「聞き分け良い」という語のチョイスには、ふたりの関係性を感じます。
せっかくの力作。入選に近づくには、どうすれば良いでしょうか?
見直す際の、オススメポイントをご紹介します。
まず『57577の間にスペース(空白)は不要』です。これは「分かち書き」という表記方法です。短歌の音数が数えやすくなり、短歌を読み慣れない方にも「これは短歌だ」と認識されやすくなるため、主催者のWEBサイトやチラシ、公募ガイドの誌面でも必要に応じて採用されています。小学校低学年の国語の教科書も、文章を読みなれない子供のために「分かち書き」になっています。
ただし、応募者が作品を作る際に、最初からスペースを空ける必要はありません(募集要項で指定があった場合は別です)。「分かち書き」はあくまで、なんらかの都合で視覚的に認識しやすくするための、やむを得ない手段です。
というわけで、健吉さんの作品の「分かち書き」部分のスペースを取ってみました。
分かち書きの時にはあまり気になりませんでしたが、つなげて書くと少し読みづらさがあります。特に上句(前半)の「よくしゃべる君の聞き分け今日は良い」の部分は、助詞の省略などもあってぎこちない印象です。「分かち書き」で短歌を考えると、どうしても句ごとにブツ切れになってしまうもの。最初から「分けないで書く」と、全体の流れを見直しやすくなります。
健吉さんの作品をできるだけそのままに、少し自然な言い回しにするとしたら、例えば以下のような感じはいかがでしょうか。
さらに、一箇所だけスペースを入れてみました。
スペースは「分かち書きのために」入れるのではなく「作品のために」戦略的に入れるのが◎です。
この場合、スペースを入れることで、「君」に対峙する「自分」がふと我に返る「間合い」のような効果も出ている気がします。
機嫌よくペラペラと喋りながら、聞き分け良く、こちらが何を言っても笑顔で頷いてくれる……何があったんでしょう。不安ですね。恋をする相手でなければ単なるごきげんな朝かもしれませんが、これは相聞歌。作品の魅力が最も伝わる言葉のつながり方を探すのも、短歌を推敲する面白さかもしれません。まずは、短歌を書いてみるとき、もし57577の音数を数えるのが苦手でも「分かち書き」をしないのがオススメです。スペースは基本的には使いません。使うときには、効果を狙ってバシッと使いましょう!
いかがでしたでしょうか?
引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿からもお待ちしています!
応募規定 | ペンネームと、入選を逃した公募タイトル・応募した作品・お題やテーマ(ある場合のみ)をお送りください。 |
応募方法 | 応募フォームもしくはTwitterでご応募ください。Twitterの場合は公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローして、ハッシュタグ「#あなたとよむ短歌」をつけてツイートしてください。 |
賞 | 採用1点=公募ガイドONLINE上で講評・アドバイス |
締切 | 常時募集 |