夕やけいろにそまるころ
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のはらりん
南の国のみどりが池にも明るい朝がやってきたというのに、あいかわらず、かばのバオはねむっています。
そうです。バオは、このみどりが池が、まだそんなにみどり色ではないときから、水に体をまかせながら、プカプカとねむりつづけているのです。
バオは、魚たちがバオのおなかをこちょこちょやっても、小鳥たちがバオのせなかにおちた木のみを食べに来ても、大きなかみなりが近くの草原におちたときだって、ビクリともしませんでした。
バオは、いつもゆめをみていました。まい日、同じゆめでした。大きなかさをさして、風にふかれてまいあがっているのです。
ねむっているとき、バオの耳はプリンと回っていました。
みどりが池が、うす赤い夕やけ色につつまれたある日、一羽の見なれない小鳥がバオの頭の上にとまりました。口にまっ白な花をたくさんくわえて……。それから、その小鳥はバオの右のはな先から左のはな先まで、そのまっ白い花でいっぱいにしました。
そのとき、バオの耳がまたプリンとうごきました。
バオの頭の中はグラグラし、はなのおくのほうにはすずしいかおりがみちていました。
バオは大きくせなかを丸めました。大きな水しぶきが、みどりが池いちめんに広がりました。頭の上にいた小鳥も、びっくりしてどこかへ行ってしまいました。
そして、バオはパチンと、小さくすずしげな目をひらいたのです。
それからというもの、朝、目がさめるとすぐに、バオはせなかに大きなはっぱをちょこんとのせて、フーフー林の広場に通いました。大きなはっぱは、かさのかわりです。
お昼がくると、みどりが池に帰ってお昼ねをし、また広場にもどり、広場が夕やけ色にそまるまで、またとぶれんしゅうです。
風がふくたびに、バオはりょう足をやっと地めんから五センチくらいもち上げます。しりもちも百回をこえました。風を少しでもキャッチできるように、耳のあなもはなのあなも思いきり力を入れて大きくしてみました。
それから、また十日くらいたったある日のこと。バオは、フーフー林の広場で、おなかも顔もぺしゃんこにしてねそべっていました。
「なかなかとべないよ」
バオの目から、小さななみだがポロンとこぼれました。まっ白な花が、ちょうどバオのねそべった高さにかすんで見えました。
(こんなところにお花がさいていたなんて知らなかった。なんだかなつかしいにおいがする)
そのとき、あの小鳥がバオの前に現れたのです。というより、本当は、バオが目ざめてからずっと、バオのことをいつも見ていたのです。
「この花、すきになってくれたらいいなと思って……」
小鳥は、まっ白な花をバオのはなの上にのせました。バオのむねのおくが、ほっかりあたたかくなりました。
バオは、ヨッコラと立ち上がると、みどりが池にむかって歩きだしました。小鳥もあとをついていきました。それから、大きなはっぱに水を入れ、二人のすきなまっ白い花をうかべました。
風にふかれて、花はクルクルと回りはじめました。
いつのまにか、みどりが池は夕やけ色にそまっていました。