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いつもと一緒 いつもと違う

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いつもと一緒

いつもと違う

小林みどり

ママが入院するからと、ママの妹のおばちゃんちに来た。保育園に通っていたが、お休みすることになった。おばちゃんちには、おじちゃんと、一つ上と一つ下のいとこがいる。おばちゃんは「三人そろうと、三つ子みたい」と言う。私は女の子。いとこたちは男の子。私には兄が一人いる。六つも上。兄は家にいる。家にはパパもばあちゃんもいる。私だけ、おばちゃんちに来た。

私はいとこたちと遊ぶ。兄じゃないいとこたちと遊ぶ。兄は私を邪魔者扱いをする。兄は嫌い。兄しか遊ぶ相手がいないから兄に近寄る。兄はたまに私を抱いたり、くるくる回したりする。でも、そのうち二階の自室へ行ってしまう。私もついていく。兄がドアを閉める。私がドアをたたく。内側から「うるさい」と言われる。ばあちゃんがやってくる。私を抱いて下へ。居間で私を降ろすと、腰をさすりながら「痛い」とばあちゃんは言う。本棚から絵本やぬり絵を出してきて、私にさし出す。「さあ遊ぼう!」私は兄と遊びたい。しかし、何を言ってもばあちゃんは無視する。仕方なく一人で遊ぶ。いつものことだ。

今、私はいとこたちと遊んでいる。いとこたちは違う。私と対等だ。ばしばしたたいてくる。上に下にやってくる。私も負けじと頑張る。おばちゃんが「あらあら、三つ子ちゃんだわ、だんごみたいね」と言う。いとこたちと朝から晩まで遊ぶ。いとこたちは、保育園に行っていない。そのうち、幼稚園に行くって、おばちゃんが言っている。

保育園、何日お休みしているかな。思い出す。担任の先生、隣の席のお友だち。プール、園庭、体育館、ウサギ小屋、すべり台、鉄棒、ボール、なわとび、遠足、おゆうぎ、給食、体育大会、音楽会、お昼寝、おやつ。

ふ、えええ、えええ。

私は思い出して、涙が。どんどん。

驚くいとこたち。おばちゃんがやってくる。

「あらあら、どうしたの?」

私を抱く。おばちゃん、いとこたち、おじちゃん……ママ、パパ、ばあちゃん、兄――。

ふ、えええ、えええ。

さらに大声を上げる私。困り果てるおばちゃんたち。

どうして、私だけ。

どうして、おばちゃんちなの?

どうして?

いつも、違う。いつもと違う。

ふ、えええ、えええ。

「寂しくなったのかしら」と抱いたまま、背中をとんとんして、歩いてくれる。

ゆらゆら、ゆらり。

「ママ……」

いつの間にか、おばちゃんがママに。あれ? ママなの? そのまま目を閉じる。

ゆらゆら、ゆらり。

……ふぎゃあ、ふぎゃあ。

何? うるさいなァ。私は目を覚ました。家、家の居間にいた。

居間の一角に、ベビーベッドが。

ふぎゃあ、ふぎゃあ。

そこから泣き声がする。

たたたっ、音がして、ドアが開く。兄だ。

「母ちゃん、泣いてるよー」

ママが現れる。

「あらあら」

ベビーベッドから何かを抱いて私のそばに来た。

「ほら、見て、赤ちゃんよ。あなたの弟」

小さい小さい赤ちゃんが、いた。目をぱちくり。私を見ている。

ふ、えええ、えええ。

私は泣いた。

「あらあら、ごめん、ごめん。寂しかったわよね。この子がなかなか産まれなくて、だからおばちゃんにあなたを預けたの」

ママが抱きしめてくれる。

「ばあちゃん、ぎっくり腰やるからだよ」

兄の声。

「仕方ないでしょ! 年寄りなんだから」

ばあちゃんの声。

「父さんも働きながら家事やったんだよ」

パパだ。

「僕も手伝ったよ!」

と兄。

ふ、ふえええ、えええ。

おぎゃあ、おぎゃあ。

大声で泣く私と弟。

いつもの家。いつもの家族。

一人、弟が増えた。けど、

みんなみんな一緒。一緒が良い。

私は泣きながら思った。