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つのねこルー

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つのねこルー

とべる

とある村に一人の少年と相棒の小さな猫がいた。少年の名はかける。見習いの星の博士。かけるは、おっちょこちょいで何をやっても失敗ばかり。猫の名はルー。頭に角が二本生えていて「ルー」と鳴く変わったやつで、周りの人たちからいつもからかわれてばかり。ある日、お父さん博士はかけるとルーに、一度いろんな世界を見て勉強してこいと言い、旅に出させた。

今、二人は砂漠の真ん中にいる。

「あちい。ルーは大丈夫か?」

「ルー」

二人とも暑さで干からびそうだ。そんな二人の横をラクダに乗った少年たちが通った。

「みてみろよ。あんなところに子どもと猫がいるぜ。しかもあの猫、角が生えてらあ。気持ち悪いなあ」

「ほんとだあ」

彼らはこの近くの村の裕福な子どもたち。角が生えている変わった姿のルーをバカにした。それを聞いて、かけるは頭にきた。

「おい! おまえら、ルーの悪口を言うな!」

「うわ、野蛮なよそ者がおそってきた!」

かけるは、逃げる少年たちを追いかけた。しかし、喉が渇いてすぐに追うことをやめた。

「くっそー。水~」

「ルー」

ルーは弱ったかけるの肩をたたき、遠くの方を指さした。

「あ!」

そこには村が見えた。村があるということは水がある。二人は急いで村にむかった。

「ごめんくださーい!」

かけるは村で一番大きな家の戸をたたいた。

「どちらさま?」

女性が出てきた。その後ろには見覚えのある顔があった。

「あ! 貧乏少年と鬼猫だ!」

後ろの少年が気持ち悪がりながらそう叫んだ。さっきラクダに乗っていた少年の一人だ。

「おまえ!」

かけるは喉が渇いていたことも忘れて少年を追いかけ、少年に馬乗りになり、

「ルーをバカにするな!」

そう言ってひっぱたこうとした。

そこに突然、大きな男の人が現れてかけるをどかした。

「うちでなにしてる。泥棒め」

少年のお父さんだった。彼はかけるとルーを外に追いやった。

「くっそー」

喉も乾いたし、友達のルーをバカにされるし、散々だ。なんだかかけるは泣けてきた。しかし、えんえん泣いていても、よそ者だから誰も助けてくれない。そんなとき、

「よお泣いとるなあ」

かけるのお父さんだった。

「どうして?」

「旅に出たきりなかなか帰ってこないから心配で見に来たんだ。で、ルーをバカにされてるお前を見つけたのさ。さあ、まずはこれを飲め。喉の渇きを癒やさないと何もできないからな」

かけるは水をごくごく飲んだ。

「なあ、かける。お前は今、旅の目的を達成しようとしている」

「旅の目的?」

「ああ。お前はおっちょこちょいだけど心は優しい。生まれたときから一緒にいるルーをバカにされて悔しいだろう? 友達のために立ちあがれ。大切な人のために頑張れば、人はより大きな優しさを手に入れることができる」

かけるは涙を拭いた。

「ルー! いこう!」

かけるはドアをたたいた。

「なにしにきたんだ。貧乏と鬼猫めが」

少年が出てきて言った。

「僕のことはなんて言ったっていい。でも友達のことをバカにするのは許さないよ」

「友達? 友達じゃなくてペットだろ?」

「本当にそう思ってるの? 君がさっき乗っていたラクダもペットなの?」

「そうさ」

「でも、少なくとも僕とルーは違うんだ。僕にとってルーはずっと共に生きてきた仲間だし、今日だってこの村をルーが見つけてくれた。一緒に助け合ってる。角が生えている変わった姿でも、僕にとっては大好きな友達だ。みんな感じ方や考え方、見え方は違っていいと思う。だけど、違うからって悪く言うのは違うよ。それに悪口言うよりも、優しい気持ちで大好きな人のことだけ考えて大事にする方がよっぽど幸せだよ」

かけるはそれだけ言うとルーと家を出た。

「待って」

少年が呼びとめた。

「ルー、触ってもいい?」

かけるは頷いた。みんなが笑顔だった