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第6回 日経 星新一賞のグランプリが決定!

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理系的発想で作られた短編小説を募集する「第6回 日経 星新一賞」(主催:日本経済新聞社)の表彰式が、3月2日(日)、東京都・国立新美術館にて行われた。

応募数2489編の中からグランプリに選ばれたのは、一般部門・梅津高重さんの『SING×レインボー』、ジュニア部門・岩井太佑さんの『クローン』、学生部門・藤田健太郎さんの『創訳する少女』。

『SING×レインボー』

文明崩壊の瀬戸際にある近未来。人類は偶然1つだけ生き残っていたゲームの機能に基づく全地球規模の通信網に依存して暮らしていた。通信維持のため毎日ゲームのノルマをこなさざるを得ない主人公は、その作業に虚しさを覚えていた。ある日、サーバーにアクセスできると称する人物が発見され、状況改善の期待を持って救助される。しかしそれは、通信帯域の大幅な増加とともに主人公のノルマの増加をもたらしてしまった。

 

最終審査で起きた頂上決戦

審査員を代表して、SF作家の藤井太洋氏が講評を述べた。

「一般部門では、最終審査に残った『SING×レインボー』と『コンティニュアス・インテグレーション』のどちらをグランプリにするかで、意見が割れました。

ぼくは当初、後者をグランプリに推していたのだけど、ほかの審査員から『SING×レインボー』のような作品は星新一賞でなければ顕彰することが難しい、こういう作品がグランプリという形で世に出ていかなければならないといと説得されたんです(笑)。

この作品では、情報の圧縮について取り組み、小説の中で問題を解いてみせるという難事にしっかり取り組んでいた。そこを評価しました」

 

作品から伝わる倫理観

学生部門とジュニア部門の講評では、部門全体から感じられる応募者たちの倫理観が評価された。

「ある作品で『お手伝いロボットが給料をもらう』という設定があったのですが、この発想にはしびれましたね。人間ではない『自我を持った存在』に対し、財産権や基本的人権を与えているという設定に感動したのです。

ほかにもクローン人間が出てくる作品がいくつかありましたが、みんな普通に学校へ行き、友だちと笑い合っている。そういう作品を書いた人たちが、これからの社会を作っていくんだと、とても心強く感じました。みなさんの作品がきっと世界を変えていきます」

 

星マリナ氏の語る未来

表彰式の冒頭では、星新一の次女・星マリナ氏が挨拶を述べた。

「星新一といえども、「もう書けない」とくじけそうになったことは何度もあるはずです。そんなときは、父親の教訓を思い出していたのではないかと想像しています。

星新一の父親、星一(ルビ:ほし はじめ)は、成功と挫折を繰り返した人で、人生訓のようなものをたくさん残しています。

今日はその中で役に立ちそうな3つの言葉を選んできました。

「改良発明は永遠無窮なることを知り、たえずそれにむかって企図を怠ることなかれ」

小説においても、現実においても、アイデアが出尽くすことはありません。アイデアは無限です。ただしそれは、常に努力していないと得られません。

「人間の思考は光より速い」

光が届くのに何年もかかるような星のことでも、人間は瞬時に考えることができます。

138億年前の大爆発を考えたすぐあとに、1400億年後の宇宙の終わりについて考えることもできます。思考は遠くまで飛ばしてください。

「親切第一」

星新一の本名は同じ発音で「親一」と書きますが、それは「親切第一」を縮めたものです。あなたが書いている文章は、誰にでもわかる文章ですか? 難しすぎる感じを使っていなませんか? 何事も、親切第一です。

 

人類の未来も、地球の未来も、私たちの想像力でいくらでもよくなると、私は思います。みなさんには、これからもSFを読み、書き、未来について考えていただきたいのです」

最期に「最終目的はノーベル賞ということで、どうでしょうか」とも述べた際は会場から拍手が上がった。

受賞作品は電子書籍化され、「honto電子書籍ストア」にて無料配信中。

星新一賞 公式サイト http://hoshiaward.nikkei.co.jp/

honto電子書籍ストア https://honto.jp/

(取材:畑 美雪)

 

【受賞作品一覧】

一般部門グランプリ 「SING×レインボー」 梅津 高重

ジュニア部門グランプリ  「クローン」 岩井 太佑

学生部門グランプリ 「創訳する少女」 藤田 健太郎

一般部門優秀賞

JBCCホールディングス賞 「コンティニュアス・インテグレーション」 安野 貴博

アマダホールディングス賞 「Meteobacteria」 揚羽 はな

旭化成ホームズ賞 「不安」 マウチ

東京エレクトロン賞 「KANIKAMA」 竹内 正人

日本精工賞 「アルティメットパッション」 神谷 敦史

スリーボンド賞 「ピピの物語」 代 哲安

ジュニア部門

準グランプリ 「ゆりちゃんの友達」 岡本 優美

優秀賞 「商店街に挟まった日」 山沢 智知

優秀賞 「決められた未来」 奏太朗

優秀賞 「素晴らしき AI 社会」 岡田 萌花

学生部門

準グランプリ

「ゼロ体温とオリーブオイル」 大貫 瑠香

優秀賞 「良心の種」 関﨑 歩