文章表現トレーニングジム 佳作「想像」 サイトウ
第12回 文章表現トレーニングジム 佳作「想像」 サイトウ
私はこれまで怒り心頭の経験がない。従ってエピソードがただの1つもない。
そこで「怒り心頭」の意味を調べてみようと思い至った。そういえば、これまで激しい怒りの表現だと思ってきたが、実際そうなのかを確かめてみたことがない。
電子広辞苑を引く。慣用句として『怒り心頭に発する』とある。ここで私の心に浮かんだことが2つある。「怒り心頭」が塊と思っていたが、慣用句の略だったという驚き。そして、その通常省かれている言葉が『発する』となっている違和感。
ここにきてようやく、心頭が心の中の意だと知る。そうだったのか。であれば、発すると続くのも納得できる。感情は心の中に生まれるものだ。そのままではないか。何の違和感もない。私は今まで字面の「頭」に気を取られ、その部分のみで「激しさ」を想像していたのではなかろうか?頭から湯気がでるような怒りだと勝手に想像していたのだ。本来は極めて冷静な語句で構成されており、そこから激しさを感じとることの方が困難に思われる。ではなぜ激しい怒りと解釈するのか。想像してみた。
怒りに種類があるとすれば、この怒りは少々恐ろしくはないか。外部に現れる怒りは分かり易く対処もできるが、心の中の生まれたての怒りは周囲に分からない。その空恐ろしさを最初から“激しい”とすることで受け止め側の衝撃を和らげるのではないか。
今この時間にも自分の周囲に怒り心頭している人がいるかもしれない。