公募/コンテスト/コンペ情報なら「Koubo」

選考委員が思わず感心してしまう二つの要素とは

タグ
作文・エッセイ
作家デビュー

 【特別企画】

 下村敦史×若桜木虔 WEB対談 開催中!(2016/12/12~)

文学賞を受賞するにはどうすればいいのか、傾向と対策はどう立てればよいのか。

多数のプロ作家を世に送り出してきた若桜木虔先生が、デビューするための裏技を文学賞別に伝授します。

受賞するための三要素

今回は、新人賞を射止めるためのキーポイントについて一般論を述べる。新人賞を受賞するには、とにもかくにも選考委員の心を捉えることに尽きる。それは、次の三つである。

①選考委員を泣かせる。

②選考委員を笑わせる。

③選考委員を感心させる。

この三要素を全て備えた応募作が書ければ、ほぼ確実に射止められる。二要素でも、かなり確率は高い。①と②に関しては、説明しなくても、分かるだろう。で、③の要素を更に分析して解説することにする。

A 登場人物のキャラクターが素晴らしく魅力的で、引き込まれる。

これは宝島社の『このミステリーがすごい!』大賞が特にウェートを置いていて、キャラが素晴らしければ物語に多少の難があっても「隠し玉」で拾うという方針
を採っていて、多数のベストセラーが誕生しているから、集中的に読んでみると良い。

B 専門的な蘊蓄で読ませる。

これも説明不要だろう。選考委員が知らない知識を作中で披露して、それが物語の根幹に関わっていれば高得点を得られる。

問題は、これと狙う新人賞の選考委員が何を知り、何を知らないかを見極めることで、これは選考委員の経歴を調べ、また過去の作品群から見当をつける以外にない。

例えば美大出の黒川博行氏や島田荘司氏が選考委員の新人賞に美術物の作品を出しても、感心してもらえる可能性は、極めて低い。

それに、選考委員を唸らせられるほど高度な専門的な知識は一朝一夕には身に付かない。分野が何であれ、少なくとも大学院の修士課程を修了した以上の知識レベルでなければ、選考委員の目は誤魔化せない。だとすると「取材によってカバーする」となるが、短時日の取材で何とかなるのは、風景描写のレベル。

選考委員が知らない土地を物語の舞台に設定しただけで、加点材料になる

で、ここで取り上げたいのは『首挽村の殺人』で横溝正史ミステリ大賞を受賞した大村友貴美の受賞第一作の『死墓島の殺人』である。

『首挽村』は、岩手県の豪雪地帯を舞台にしていて、雪の風景描写は確かに素晴らしかったが、作品自体の出来映えは、大して良くなかった。もし、応募作のレベルが高い回だったら予選落ちしていた、と当講座でも酷評したが、『死墓島』は受賞作よりも格段に出来映えが良かった。

『死墓島』は岩手県の海岸地帯を舞台に、横溝正史『八つ墓村』と『悪魔の手毬唄』の世界観を取り込んだような作品である。

ここで注意して欲しいのは『八つ墓村』と『悪魔の手毬唄』のパロディだと見なされれば『死墓島』は予選で落とされ、横溝正史へのオマージュだと見なされれば予選はクリアーするかも知れない、ということである。そのつもりで『死墓島』を読んで欲しい。

さて、私自身が伊豆の漁村地帯で生まれ育ったので『死墓島』の出来映えの良さが感じられるのだが、物語の隅々まで神経が行き届いている。作者自身に漁村地帯で育った経歴があるのか、それとも、何度も頻繁に足を運んで漁村や漁港で取材したのか、いずれかだろうと思う。

『死墓島』を読む人は、ただ単純に読むのではなく、現地で取材しなければ書けないであろうシーンに、蛍光ペンなどでサイドラインを引きながら読む、という方法を採って欲しい。例えば主人公の一人の藤田警部補が魚市場で聞き込みしようとして仲買人に怒鳴りつけられるシーン。

これなどは綿密に魚市場で取材していなければ、書けるものではない。ド田舎は、農村も漁村もどんどん限界集落と化していっていき、それは私の郷里の伊豆も同様なのだが、綿密に現地で取材しなければ、住民の日頃の生活にどんな影響・障害が発生してくるのかは知りようがない。

そこを詳しく掘り下げてリアリティを持って描ければ、田舎生活の経験がない選考委員を唸らせられる。あちこちで選考委員を務めている某有名ミステリー作家の作品に、大学のミステリー研究会のグループがド田舎に行って旅館に泊まったところが、台風で交通が途絶し、そういう状況下で密室殺人事件が起きる、という、ミステリーではお馴染みのものがあった。

密室殺人事件そのもののトリックは名うての作家が手掛けただけあって素晴らしいのだが、私はシラケた。その地域の環境からして、旅館が経済的に成り立つわけがなく、つまり「旅館に泊まる」という最初の設定自体にリアリティがないのだ。

『死墓島』にも旅館は出てくるのだが、なぜ旅館が成り立っているのかに関して、ほぼ納得が行く設定がなされていて、それがまた謎の連続殺人事件の動機に関わってくる。この辺りに着目して線引きしながら読めば、『死墓島』はミステリー系新人賞を狙うのに役立つ作品と言えるだろう。

 受賞できるかどうかは、書く前から決まっていた!

 あらすじ・プロットの段階で添削するのが、受賞の近道!

 あらすじ・プロット添削講座

 自分に合った文学賞はどれ? どこに応募すればいい?

 あなたの欠点を添削しつつ、応募すべき文学賞を教えます。

 文学賞指南 添削講座

若桜木先生が送り出した作家たち

日経小説大賞

西山ガラシャ(第7回)

小説現代長編新人賞

泉ゆたか(第11回)

小島環(第9回)

仁志耕一郎(第7回)

田牧大和(第2回)

中路啓太(第1回奨励賞)

朝日時代小説大賞

木村忠啓(第8回)

仁志耕一郎(第4回)

平茂寛(第3回)

歴史群像大賞

山田剛(第17回佳作)

祝迫力(第20回佳作)

富士見新時代小説大賞

近藤五郎(第1回優秀賞)

電撃小説大賞

有間カオル(第16回メディアワークス文庫賞)

『幽』怪談文学賞長編賞

風花千里(第9回佳作)

近藤五郎(第9回佳作)

藤原葉子(第4回佳作)

日本ミステリー文学大賞新人賞 石川渓月(第14回)
角川春樹小説賞

鳴神響一(第6回)

C★NOVELS大賞

松葉屋なつみ(第10回)

ゴールデン・エレファント賞

時武ぼたん(第4回)

わかたけまさこ(第3回特別賞)

新沖縄文学賞

梓弓(第42回)

歴史浪漫文学賞

扇子忠(第13回研究部門賞)

日本文学館 自分史大賞 扇子忠(第4回)
その他の主な作家 加藤廣『信長の棺』、小早川涼、森山茂里、庵乃音人、山中将司
新人賞の最終候補に残った生徒 菊谷智恵子(日本ミステリー文学大賞新人賞)、高田在子(朝日時代小説大賞、日本ラブストーリー大賞、日経小説大賞、坊っちゃん文学賞、ゴールデン・エレファント賞)、日向那由他(角川春樹小説賞、富士見新時代小説大賞)、三笠咲(朝日時代小説大賞)、木村啓之介(きらら文学賞)、鈴城なつみち(TBSドラマ原作大賞)、大原健碁(TBSドラマ原作大賞)、赤神諒(松本清張賞)、高橋桐矢(小松左京賞)、藤野まり子(日本ラブストーリー&エンターテインメント大賞)

若桜木虔(わかさき・けん) プロフィール

昭和22年静岡県生まれ。NHK文化センター、読売文化センター(町田市)で小説講座の講師を務める。若桜木虔名義で約300冊、霧島那智名義で約200冊の著書がある。『修善寺・紅葉の誘拐ライン』が文藝春秋2004年傑作ミステリー第9位にランクイン。

文学賞を受賞するにはどうすればいいのか、傾向と対策はどう立てればよいのか。

多数のプロ作家を世に送り出してきた若桜木虔先生が、デビューするための裏技を文学賞別に伝授します。

受賞するための三要素

今回は、新人賞を射止めるためのキーポイントについて一般論を述べる。新人賞を受賞するには、とにもかくにも選考委員の心を捉えることに尽きる。それは、次の三つである。

①選考委員を泣かせる。

②選考委員を笑わせる。

③選考委員を感心させる。

この三要素を全て備えた応募作が書ければ、ほぼ確実に射止められる。二要素でも、かなり確率は高い。①と②に関しては、説明しなくても、分かるだろう。で、③の要素を更に分析して解説することにする。

A 登場人物のキャラクターが素晴らしく魅力的で、引き込まれる。

これは宝島社の『このミステリーがすごい!』大賞が特にウェートを置いていて、キャラが素晴らしければ物語に多少の難があっても「隠し玉」で拾うという方針

を採っていて、多数のベストセラーが誕生しているから、集中的に読んでみると良い。

B 専門的な蘊蓄で読ませる。

これも説明不要だろう。選考委員が知らない知識を作中で披露して、それが物語の根幹に関わっていれば高得点を得られる。

問題は、これと狙う新人賞の選考委員が何を知り、何を知らないかを見極めることで、これは選考委員の経歴を調べ、また過去の作品群から見当をつける以外にない。

例えば美大出の黒川博行氏や島田荘司氏が選考委員の新人賞に美術物の作品を出しても、感心してもらえる可能性は、極めて低い。

それに、選考委員を唸らせられるほど高度な専門的な知識は一朝一夕には身に付かない。分野が何であれ、少なくとも大学院の修士課程を修了した以上の知識レベルでなければ、選考委員の目は誤魔化せない。だとすると「取材によってカバーする」となるが、短時日の取材で何とかなるのは、風景描写のレベル。

選考委員が知らない土地を物語の舞台に設定しただけで、加点材料になる

で、ここで取り上げたいのは『首挽村の殺人』で横溝正史ミステリ大賞を受賞した大村友貴美の受賞第一作の『死墓島の殺人』である。

『首挽村』は、岩手県の豪雪地帯を舞台にしていて、雪の風景描写は確かに素晴らしかったが、作品自体の出来映えは、大して良くなかった。もし、応募作のレベルが高い回だったら予選落ちしていた、と当講座でも酷評したが、『死墓島』は受賞作よりも格段に出来映えが良かった。

『死墓島』は岩手県の海岸地帯を舞台に、横溝正史『八つ墓村』と『悪魔の手毬唄』の世界観を取り込んだような作品である。

ここで注意して欲しいのは『八つ墓村』と『悪魔の手毬唄』のパロディだと見なされれば『死墓島』は予選で落とされ、横溝正史へのオマージュだと見なされれば予選はクリアーするかも知れない、ということである。そのつもりで『死墓島』を読んで欲しい。

さて、私自身が伊豆の漁村地帯で生まれ育ったので『死墓島』の出来映えの良さが感じられるのだが、物語の隅々まで神経が行き届いている。作者自身に漁村地帯で育った経歴があるのか、それとも、何度も頻繁に足を運んで漁村や漁港で取材したのか、いずれかだろうと思う。

『死墓島』を読む人は、ただ単純に読むのではなく、現地で取材しなければ書けないであろうシーンに、蛍光ペンなどでサイドラインを引きながら読む、という方法を採って欲しい。例えば主人公の一人の藤田警部補が魚市場で聞き込みしようとして仲買人に怒鳴りつけられるシーン。

これなどは綿密に魚市場で取材していなければ、書けるものではない。ド田舎は、農村も漁村もどんどん限界集落と化していっていき、それは私の郷里の伊豆も同様なのだが、綿密に現地で取材しなければ、住民の日頃の生活にどんな影響・障害が発生してくるのかは知りようがない。

そこを詳しく掘り下げてリアリティを持って描ければ、田舎生活の経験がない選考委員を唸らせられる。あちこちで選考委員を務めている某有名ミステリー作家の作品に、大学のミステリー研究会のグループがド田舎に行って旅館に泊まったところが、台風で交通が途絶し、そういう状況下で密室殺人事件が起きる、という、ミステリーではお馴染みのものがあった。

密室殺人事件そのもののトリックは名うての作家が手掛けただけあって素晴らしいのだが、私はシラケた。その地域の環境からして、旅館が経済的に成り立つわけがなく、つまり「旅館に泊まる」という最初の設定自体にリアリティがないのだ。

『死墓島』にも旅館は出てくるのだが、なぜ旅館が成り立っているのかに関して、ほぼ納得が行く設定がなされていて、それがまた謎の連続殺人事件の動機に関わってくる。この辺りに着目して線引きしながら読めば、『死墓島』はミステリー系新人賞を狙うのに役立つ作品と言えるだろう。

 受賞できるかどうかは、書く前から決まっていた!

 あらすじ・プロットの段階で添削するのが、受賞の近道!

 あらすじ・プロット添削講座

 自分に合った文学賞はどれ? どこに応募すればいい?

 あなたの欠点を添削しつつ、応募すべき文学賞を教えます。

 文学賞指南 添削講座

若桜木先生が送り出した作家たち

日経小説大賞 西山ガラシャ(第7回)
小説現代長編新人賞 泉ゆたか(第11回)

小島環(第9回)

仁志耕一郎(第7回)

田牧大和(第2回)

中路啓太(第1回奨励賞)

朝日時代小説大賞 木村忠啓(第8回)

仁志耕一郎(第4回)

平茂寛(第3回)

歴史群像大賞 山田剛(第17回佳作)

祝迫力(第20回佳作)

富士見新時代小説大賞 近藤五郎(第1回優秀賞)
電撃小説大賞 有間カオル(第16回メディアワークス文庫賞)
『幽』怪談文学賞長編賞 風花千里(第9回佳作)

近藤五郎(第9回佳作)

藤原葉子(第4回佳作)

日本ミステリー文学大賞新人賞 石川渓月(第14回)
角川春樹小説賞 鳴神響一(第6回)
C★NOVELS大賞 松葉屋なつみ(第10回)
ゴールデン・エレファント賞 時武ぼたん(第4回)

わかたけまさこ(第3回特別賞)

新沖縄文学賞 梓弓(第42回)
歴史浪漫文学賞 扇子忠(第13回研究部門賞)
日本文学館 自分史大賞 扇子忠(第4回)
その他の主な作家 加藤廣『信長の棺』、小早川涼、森山茂里、庵乃音人、山中将司
新人賞の最終候補に残った生徒 菊谷智恵子(日本ミステリー文学大賞新人賞)、高田在子(朝日時代小説大賞、日本ラブストーリー大賞、日経小説大賞、坊っちゃん文学賞、ゴールデン・エレファント賞)、日向那由他(角川春樹小説賞、富士見新時代小説大賞)、三笠咲(朝日時代小説大賞)、木村啓之介(きらら文学賞)、鈴城なつみち(TBSドラマ原作大賞)、大原健碁(TBSドラマ原作大賞)、赤神諒(松本清張賞)、高橋桐矢(小松左京賞)、藤野まり子(日本ラブストーリー&エンターテインメント大賞)

若桜木虔(わかさき・けん) プロフィール

昭和22年静岡県生まれ。NHK文化センター、読売文化センター(町田市)で小説講座の講師を務める。若桜木虔名義で約300冊、霧島那智名義で約200冊の著書がある。『修善寺・紅葉の誘拐ライン』が文藝春秋2004年傑作ミステリー第9位にランクイン。