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芥川賞・直木賞 作家志望者必読!(2/3)

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芥川賞を有名にした石原慎太郎というスター

 芥川賞・直木賞を有名にしたのは、昭和30年度下半期に『太陽の季節』で受賞した石原慎太郎と言っていいだろう。後年、石原慎太郎は、「俺は芥川賞を受賞して有名になったわけではない。俺が芥川賞を有名にしたんだよ」と言っているが、事実、そうだ。
 それぐらい『太陽の季節』はインモラルでセンセーショナルな内容だった。
 加えて、石原慎太郎が好男子で、ちょうど家庭に普及し始めたテレビ映えする男だったから、いやがうえにも話題となる。

 原作は次々に映画化され、いずれも「女の子をナンパし、刹那的に男女関係になる」という内容だったから、アロハシャツにサングラスという若者が女性を求めてうろつくという風俗を生んだ。
 いわゆる「太陽族」だが、結果、こんな大ブームを起こした「芥川賞の次の受賞作は?」と関心を呼び、石原慎太郎以降は受賞の結果がジャーナリズムに載るようになった。
 この7月19日にも芥川賞・直木賞の結果が発表されたが、この受賞報道が始まるきっかけを作ったのは、昭和31年発表の石原慎太郎『太陽の季節』だったのだ。

芥川賞と直木賞の選考基準は?

 今現在、書店において純文学とエンターテインメント小説(エンタメ小説)の区別はほとんどないが、芥川賞・直木賞となるとこの区別が出てくる。
 では、どこで区別しているかというと、どの雑誌に載ったかどうかだ。
 大手の文芸出版社は、純文学系の文芸誌とエンタメ小説系の小説誌を持っている。

 文藝春秋は、純文学系は「文學界」、エンタメ小説系は「オール讀物」。
 新潮社は、純文学系は「新潮」、エンタメ小説系は「小説新潮」。
 講談社は、純文学系は「群像」、エンタメ小説系は「小説現代」。
 集英社は、純文学系は「すばる」、エンタメ小説系は「小説すばる」。
 河出書房新社は「季刊文藝」だけだが、これは純文学系だ。

 つまり、芥川賞は「文學界」「新潮」「群像」「すばる」「季刊文藝」などの純文学雑誌に掲載された、新進作家による純文学の中・短編作品の中から選ばれるということ。
 これ以外の出版社の雑誌に載った小説は、内容に関わらず直木賞のほうの対象になるらしい。

 一方、直木賞は、新進・中堅作家によるエンタメ作品の単行本(長編小説もしくは短編集)が対象だ。
 単行本となると相当の数がありそうだが(実際にあるが)、文芸のジャンルでないものは選考の対象にはならない。いわゆる一般文芸以外のライト文芸、ボーイズラブといった娯楽読み物は端から対象ではないのだ。
 今はミステリーもファンタジーもSFも候補に入るが、以前はこうしたジャンル小説は「文学ではない」と考えられていた。

 百目鬼恭三郎が「筒井康隆はSFだから直木賞をとれない」と言って筒井氏を激怒させたことがあったが、百目鬼氏は「SFはレベルが低い」と言ったのではなく、「SFはそもそも選考の対象ではない」と言ったのだった。
 では、何を対象にしていたかというと、中間小説だ。
 中間小説誕生のきっかけは、戦後、食い詰めた純文学作家にエンタメ小説を書かせたことだったが、これが大当たり。

 その草分けは「小説新潮」だったが、この人気に乗じて中間小説誌が次々に創刊され、それまでは大衆小説に振り切っていたような雑誌まで中間小説に寄ってきて、昭和30年代、40年代には100万部を超える市場となる。当時の直木賞は、主として中間小説から選んでいたわけだ。
 今はミステリーもSFも選考の対象になっているが、しかし、「文学である」ことは前提だ。このあたりは、シンプルに面白い作品を選んでいる本屋大賞とは趣旨を異にする。

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