ネットの海で物語る【第9回】クラウドソーシング 2/2
「ちょっとこれは……」という仕事もある
当エッセイでは度々創作をするクリエイターを騙そうとする悪い人への注意喚起をしているのですが、もちろんクラウドソーシング上でもあります。業務内容、契約内容は必ず確認しましょう。 私も何度か嫌な思いをした経験があります。報酬が極端に低かったり、クライアントの姿が見えなさすぎたりする案件は注意しましょう。 なかには、仕事の体裁をしながらも、実態は高額な情報商材や講座等に勧誘する目的の案件もあります。(勧誘はほとんどのサービスで規約違反ですので相手にしてはいけませんし、個人情報も教えてはいけません)
また、倫理的な観点からどうなのか?という案件もあります。
ひとつ例にあげます。みなさんは「不幸系Vlog」という言葉を知っていますか?
2年前くらいに爆発的に増えていた動画ジャンルです。
内容は、顔の見えない女性が料理をしながら「浮気されていた話」「パートナーが急逝してひとりで子育て」「熟年離婚」「余命宣告を受けた」などが多いです。表立っては言えない悩みを共有するので同じような立場の視聴者から応援をしてもらいやすい傾向にあります。また、言い方はあれですが、人は他人の不幸が好きです。だいたいは実録エッセイだと思うのですが……。
当時、この「不幸系Vlog」のシナリオを募集する依頼が多くありました。
というか、料理をする演者や中に入れる声の募集をする案件もありました。
こういう「不幸系Vlog」へのコメントって本気で心配やアドバイスをする人も多く、更新がないと「まさか大変なことになっているのでは……」とハラハラする視聴者も多いようです。最初からフィクションと謳っているものはほとんどないでしょう。 「再生されればなんでもいい」スタイルの仕事も、クラウドソーシングではあるのです。私個人としてはノンフィクションを偽りたくないので、依頼が来たとしても断ります。
しかし、最終的な使用目的が明かされず「サレ妻(浮気された妻)のエピソードを5話提出してください」とだけ依頼されたらわからないですよね。そのような意味でも、自分の作品がどう使用されるかの確認は必要だと思うのです。
確認しておきたい大事なこと
以上のことも踏まえて、クラウドソーシングを利用する時に確認すべきことを挙げます。
• どんな仕事内容か
納期は?修正はどの程度必要になる?報酬は?納品物の使い道は?自分の能力で対応できそうか?
• 制作物に自分の名前が記載されるか
クラウドソーシング外で仕事の実績として紹介していいのか? トラブルを防ぐために事前の確認をおすすめします。作成物に対して自分の名前が載らない仕事も多いです。名前を記載してほしい場合は契約前に聞いておくことが大事です。
どんな案件でも、仕事である以上責任が伴います。
クライアントの、そして自分のためにも必ず確認したうえで契約をしてください。
まとめ
クラウドソーシングのメリットは「趣味と実益を兼ねることができる」「実績を積むことができる」ことです。 ただ、文章系の案件は報酬が低いものが多いので「これ1本で生活をするぞ~!」というのは現実的でないように思います。また、悪質な案件もあるので、情報の精査が必要です。 結果として私自身は、クラウドソーシングで仕事をして良かったと考えています。創作活動をするうえで、今もその経験が活かされていますから。
クリエイターが物語を創るひとつの場所として、クラウドソーシングも選択肢のひとつになり得るでしょう。
次回は「初めての長編小説! 小説投稿サイトの選び方」です。
※次回は11/8(水)更新予定です。
■profile
蜂賀三月 (はちが みつき)
小説家。ショートショート、児童書、YA小説をメインに執筆活動を行う。著書に『絶対通報システム~いじめ復讐ゲームのはじまり~』(スターツ出版)、 短編小説収録『5分後に奇跡のラスト』(河出書房新社)など。小説情報メディア
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