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「女性だから不利」に終止符を 公募をきっかけに健康問題の周知を図る「Think W-Wellnessデザイン大賞」

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公募ニュース

朝日新聞社は女性の健康に関する知識を身につけ、婦人科にいくことの大切さを伝える作品を募集している。部門はポスター部門とコピー部門の2つで、締切は2023年11月30日。コピー部門のグランプリには10万円が贈られ、ポスター部門のグランプリには賞金30万円が贈られるほか、作品はポスター化される。

健康を取るか、キャリアを取るか。2択を迫らせない社会へ

 本コンテストは「女性の健康のリテラシーを高めて、誰もが生きやすい社会へ」をミッションとした「Think W-Wellness」プロジェクトの一環で、働く女性が増える一方で「女性特有の健康課題」が十分認知されていないという状況を踏まえスタートしたもの。女性はホルモンバランスの影響により、月経、妊娠・出産、更年期など、年齢やライフステージによってかかりやすい病気が異なるため、社会や企業が当たり前に取り組む課題として社会全体を見直そうというのが本プロジェクトの目的だ。

 

「男女共同参画」などのキーワードには注目しつつも、「健康問題」には光を当てきれず

女性の「権利」や「社会的地位」の向上をテーマとした公募はこれまでも数多く実施されてきた。

女性の「権利」や「社会的地位」、「性別そのものの」着目した公募の一例

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国際規模の映画祭から活動の表彰まで、ジャンルと規模は多種多様だ。また自治体や企業が「女性の活躍の機会」について考える内容の公募を開催している事例も多々あり、過去Koubo(旧公募ガイドONLINE)で掲載した情報で、タイトルに「男女共同参画」を含むものは486件にものぼった。

 

女性の「健康問題」に着目した公募

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女性の権利や地位に着目した公募の多さに対して、月経困難症や更年期障害などの他人には分かりづらい健康課題をテーマにしたものは件数が非常に少なく、またほ単発開催のものがほとんどとなっている。

無限に存在する症状を万人に周知する難しさ

事例として挙げた公募のうち、着目したいのが、「ピンクリボンデザイン大賞」である。“「まさか、私が」と毎日9万人が言う”とのコピーとともに、福引き抽選器ガラガラポンから当たりの赤い玉が出た様子が描かれたポスターが2022年グランプリに選ばれた。肌色の抽選器にはうすいピンクの取っ手がついており、乳房を想起させるデザインである。この受賞ポスター作品には「がんを福引きの『当たり』にするとはどういう神経なのか」、「抽選機からポロっと出た球が、手術で乳頭を失ったことをイメージさせ、ひどく悲しい気持ちになった」などの多くの批判が寄せられ、コンテストは中止に追い込まれることとなった。

 

炎上してしまった結果からのみ考えると、乳がん患者の方に本当に配慮して審査を行ったのかと疑問に思われるが、審査委員をつとめるプロのアートディレクターやコピーライターらは、当事者の声に耳を傾けながら、5段階にもわたる審査プロセスを経て受賞作を決定したという。こういった丁寧な審査過程を経てなお傷つく人が出てしまったという事実は、「女性特有の健康問題」が非常に繊細なテーマであることを物語っている。

 

「健康問題」と一言でくくることができないほど、症状や向き合い方は個人によってさまざま。創作側も審査側も、すべての人の気持ちをくみ取ることはほぼ不可能であり、一歩間違えば大炎上につながりかねないのが現実である。

公募を通して“タブー視の風潮”から“当たり前”に

先のような例もありながら、今回の「Think W-Wellness」プロジェクトにおいて、あえて「女性特有の健康問題」についてのデザインとコピーを「コンテスト」というかたちで募集することにしたのはなぜなのだろうか。担当者に聞いたところ「参加者の皆様には、事前に女性の健康に関する各種データや動画をご覧いただき、ご理解を頂いた上で参加してほしい。また、その作品を見た方が、ご自身の課題としてとらえ、アクションを起こすきっかけになれば」とのこと。

 

「公募」として作品を募るからには、受賞作をただ提示するだけの「啓蒙」活動ではなく、作る側も考え、それを見た人も自分なりの考えを持ち、答えを出す「啓発」活動でないと意味がないというわけだ。

 

政府が女性の就労や管理職への登用を推進しており、健康問題への対処が急務化するなかで本コンテストのような啓発活動の重要性は増している。女性同士でも理解しえないと感じる問題もあり、万人に周知するのは困難だが、本コンテストを機に日本社会全体の「女性特有の健康問題には、なんとなく触れてはいけない」という風潮が払拭され、女性だけでなく誰もがいまよりも生きやすくなる未来が少しでも近づくことを願う。

ライター
武井麻美

公募ガイド編集部スタッフ。料理動画を見ながら大量に作り置きをするのが至福の時間。
趣味は漫画を読むことや絵を書くことなどインドアっぽいが、1日1回外に出ないと気が済まない。

出典: https://www.asahi.com/w-wellness/prize/

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