あなたとよむ短歌 vol.45 テーマ詠「健康」結果発表 ~定型のなかにフックを入れて~
テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。
(『母の愛、僕のラブ』より)
テーマ詠「健康」結果発表
~定型のなかにフックを入れて~
短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。
今回はテーマ詠「健康」の結果発表です。
短歌ブームと言われるほど若い世代にも人気の高まってきた短歌ですが、もちろんご高齢の方も多く活躍するジャンルです。必然的に「健康」を題材にした作品は、結社誌や新聞歌壇などを中心に多く投稿されます。
不安を吐露するもよし、剛健さを自慢するもよし。短歌は自由です。ただ、他者が読んだときにより魅力的な一首にするには、ぼんやりしたものではなく「何」を描きたいのかを見つめる必要があります。
毎回、最後にワンポイントアドバイスも載せていますので、ぜひ入賞作品とあわせてお読みください。
祖母がドクダミ茶を飲みすぎる
祖母の魅力的なキャラが伝わる一首です。「祖母がドクダミ茶を飲みすぎる」という下句が、祖母のうちの香りやお茶の湯気まで想像できます。
「飲みすぎる」という描写から、主体(=短歌のなかの視点)の「飲みすぎでしょ……」と思っている感じ(ドクダミ茶の量に引いている感じ)も伝わってきて思わず笑ってしまいました。
続いて、優秀賞2首です。
私に何も言えない私
頓服の薬なので、痛みや不安、動悸、めまいなどの症状感じるたびに飲んでいるのでしょう。日に日に増えるということは、どうも体調を崩しぎみのようです。だからといって、自分でもどうしようもありません。「私に何も言えない私」という表現が、詩的であり的確でもあります。
耳かきへ逃げられないでしょう
都合の悪い話をしようとすると「あ、ごめん、耳かきしているから」と逃げる人なんでしょうね。耳かきへ逃げられないために「あのさ、聞いてほしいんだけれど……」などと言わず、突然「別れよう」から切り出す。
まず、それを短歌にしようという発想がナイス。恋人と対峙しているというより、もはや耳かきと戦っている雰囲気な点も面白い一首です。