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あなたとよむ短歌 vol.45 テーマ詠「健康」結果発表 ~定型のなかにフックを入れて~

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川柳・俳句・短歌・詩
短歌
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あなたとよむ短歌
結果発表

テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。

柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
■作品
プリキュアになるならわたしはキュアおでん熱いハートのキュアおでんだよ
(『母の愛、僕のラブ』より)
vol.45
テーマ詠「健康」結果発表
~定型のなかにフックを入れて~

短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。
今回はテーマ詠「健康」の結果発表です。
短歌ブームと言われるほど若い世代にも人気の高まってきた短歌ですが、もちろんご高齢の方も多く活躍するジャンルです。必然的に「健康」を題材にした作品は、結社誌や新聞歌壇などを中心に多く投稿されます。
不安を吐露するもよし、剛健さを自慢するもよし。短歌は自由です。ただ、他者が読んだときにより魅力的な一首にするには、ぼんやりしたものではなく「何」を描きたいのかを見つめる必要があります。
毎回、最後にワンポイントアドバイスも載せていますので、ぜひ入賞作品とあわせてお読みください。

それでは、最優秀賞の発表です!


健康のためなら死んでもいいと言う
祖母がドクダミ茶を飲みすぎる
(高原すいかさん)

祖母の魅力的なキャラが伝わる一首です。「祖母がドクダミ茶を飲みすぎる」という下句が、祖母のうちの香りやお茶の湯気まで想像できます。 「飲みすぎる」という描写から、主体(=短歌のなかの視点)の「飲みすぎでしょ……」と思っている感じ(ドクダミ茶の量に引いている感じ)も伝わってきて思わず笑ってしまいました。



続いて、優秀賞2首です。

頓服の量が日に日に増えていく
私に何も言えない私
(佐藤橙さん)

頓服の薬なので、痛みや不安、動悸、めまいなどの症状感じるたびに飲んでいるのでしょう。日に日に増えるということは、どうも体調を崩しぎみのようです。だからといって、自分でもどうしようもありません。「私に何も言えない私」という表現が、詩的であり的確でもあります。

不意打ちで別れ話を切り出せば
耳かきへ逃げられないでしょう
(チャーミーさん)

都合の悪い話をしようとすると「あ、ごめん、耳かきしているから」と逃げる人なんでしょうね。耳かきへ逃げられないために「あのさ、聞いてほしいんだけれど……」などと言わず、突然「別れよう」から切り出す。 まず、それを短歌にしようという発想がナイス。恋人と対峙しているというより、もはや耳かきと戦っている雰囲気な点も面白い一首です。

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