その作品、みんなとかぶってますよ③:エッセイは素材を織って編む


いろいろ連想して題材を探し、そこから組み合わせを考えるといったエッセイの題材探しについて解説する。
エッセイで落選する3大パターン
1.日頃の感謝の気持ちを書く
テーマが「お母さん」ではたいがいの人が「感謝の気持ち」を書く。それを考えず、ただ単に「ありがとう」では埋もれる。
2.ありきたりの体験を書く
稀有な体験をしないと書けないわけではないが、よく聞く話が書かれているだけでは人の胸を打たない。
3.お母さんのことを書いていない
発想が飛躍しすぎると、作品の内容がテーマから外れてしまう。テーマが表現できていなければ入選しようがない。
エッセイの素材をとことん探す
エッセイを書くときも連想して題材を探すが、やはり、エッセイの題材は実体験でないと書きにくく、荒唐無稽な妄想をしても仕方ない。ここが小説等のフィクションとは違っところ。
だから、エッセイの題材探しは、自分の記憶の中から、忘れかけて似たような記憶を掘り起こす作業に近い。
素材の組み合わせを考える
よく文章は織物にたとえられるが、2つの糸(素材)が絡み合っていると、1+1が2以上になる。
テーマが「お母さん」であれば、母親に関する心情を書くわけだが、その素材に、もう1つ別の大きな要素、母親に関する別の出来事なり心情なりを交える。
うまくすると、2つの素材がお互いのよさを引き出してくれる。しかし、2つの素材が別々の方向を向いていると、互いのよさを消しあってしまうので注意。
抽象連想法
テーマから思いつく出来事を書いていく。この中からいくつかの出来事を選ぶが、その中に一見テーマとは関係なさそうな別の要素を交えるとよい。
テーマ:おかあさん
- 中学、高校時代は、母親参観日や学校行事が好きではなかった。母親がいないことがクローズアップされるから。
- 母は家を出る前の3年間、スパルタ式で私に家事全般を仕込んだ。今は家事を仕込んでくれたことに感謝している。
- 母親が若かった時代に、別の男性に走るなんて思いきったものだと思う。私には迷惑でもあったが、ロマンチックでもある。
- 母はギャンブルが好きだった。私はやる気はないが、懸賞応募は嫌いではない。ただ表彰式がないのが難だ。
- 公募に応募するのが好き。公募歴は20年、小学校のときから応募を始める。題材とするのは母親のことが多い。
- 父によると、母親は別に好きな人ができて、その人のところに行ったらしい。父の手前、母親に会いたいとは言えなかった。
- 母は私が小学生のとき、父と離婚し、どこかに行ってしまった。それから私は母と連絡をとっていない。
相乗と相殺
2つの要素を入れて、成功するパターンと失敗するパターンを紹介します。
○:相乗効果
2つの素材は一見関係ないもののように見えて、実は相互に関連する。そうしないと相乗効果が生まれない。例文では「公募」に応募することが、「母親」にメッセージを伝える手段となって一体化。
×:相殺されている
2つの素材を扱い、それらが打ち消しあってしまうこともある。たとえば下の例文の「公募」の部分を「懸賞」の話顆で書いてしまうと、「母親」の話と連動せず、話がつながらない。
※本記事は「公募ガイド2017年10月号」の記事を再掲載したものです。