第49回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「練習」結果と講評


1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第52回  [ ゲーム ] 
11/1~11/30(23:59)
■第53回  [ 罪 ] 
12/1~12/31(23:59)
 
          練習
 
            なんだかとても面白い作品が多くて、読むのが楽しかったです。
 最優秀賞
最優秀賞
            
「デート練習サービス」も傑作でしたが、最優秀賞はササキカズトさんの「練習しないと不安な男」。タイトル通り、主人公は、いつも「不安」を感じている。船が沈没して、人食い鮫に襲われたらどうしよう。不安を解消するには、練習しかない。水泳を習い、ダイビングを習い、鮫の研究をし、ついに鮫と何回も「実践練習」をして、不安を解消するのだ。次は「手榴弾を投げ損ねた」時の不安を解消するために、戦地に赴く。やがて「俺」はもっと大きな不安を解消するため、次の行動に出る……最高の「練習」ですね。
 佳作
佳作
            
翔辺朝陽さんの「デート練習サービス」は、なんだか胸にキュンとするお話です。「悠人」は恋人の「麻夕」と別れて五年、次第に結婚を意識するようになった。「麻夕」とは三年付き合い、結婚をほのめかされ、返事を曖昧にしているうちに去られたのだ。いまは強く後悔しているが、もう遅い。そんな失敗をしないため「デートの練習サービス」を提供する会社に連絡、デートの練習をすることになった。そして、当日、現れた練習相手は、なんと「麻夕」だった。麻夕の薬指には指輪、そして……。いや実にいいです、これ。

桜坂あきらさんの「謝罪会見」。同じテーマの作品がありましたけど、こっちの方が上手。「役員会議室」でコンサルタントが、会社の重役たちに「謝罪会見」の練習をしている。練習は精緻を極める。間違いがあってはいけないからだ。言葉を選び、秒単位でタイミングを合わせてお辞儀をする。その繰り返し。完璧に出来た。万一のためにである。そしたらなんと、練習の設定と同じ事件が起こり、謝罪会見が始まった。練習は完璧、だから会見も完璧だった。だが、社長が……誰にでも間違いはある。致命的なのは困るけど。

川畑嵐之さんの「カベドン」は、たいへん楽しい作品だ。「三十歳を越えた会社員ユウキ」の下に「段ボール荷物」が届く。中身はエレキギターにアンプ。さっそくちょっと弾いてみる。すると「隣の部屋につながる壁が『ドンッ』」。音量をしぼってつづけるけど、また「カベドン」。隣の部屋の女性は若そうだったが。その女性が会社にいって不在のようだ。なので弾いてみる。すると今度は反対側の隣の部屋から「カベドン」。両者がいない間に弾こうとすると「天井からドン」。でも結局……いいオチでした。可愛いです。

榛野ひつじさんの「忘却プログラム」。「別れた恋人のことを忘れたい」俺は、「忘却プログラム」を試す施設を訪れる。地道に、機械を使いながら「仮想空間に広がる彼女との記憶一つ一つ」を消してゆくのである。訓練のせいで、彼女の記憶は少しずつ消えてゆく。そんなある日、「俺」は施設のラウンジを利用する。そこで「俺」は一人の女性に出会う。女性は立ち尽くしたまま動かない。カウンセラーは慌てて女性を連れ去る。やがて時が来て……。はっきりとは書かれていないけれど、なんだか切ない終わりでした。

吉田孝治さんの「ゴルフ練習場の二人」は、ちょっと怖いお話。「私」は「毎週土曜日の昼過ぎ」から「ゴルフの練習場」に行っている。そこで「近所の松浦さん」に会う。運動するような人に見えないのに。それからも「松浦さん」は、土曜に来ては、だいたいは雑誌を見、時折ボールを打つだけ。そんなことを繰り返していた。そのうち、「松浦さん」は家庭の話をするようになる。なんと「奥さんと仲が悪く」「三年ほど口をきいて」いないのだ。なぜ? そしてゴルフの練習との関係は? 最後はちょっと怖いです。

杜緒悠さんの「謝罪に焦がれて」は「子どもの頃から誠斗は、人が謝罪する姿に心惹かれていた」という文で始まる。そんな「誠斗」は、初デートで「プロ謝罪師」の映画を観に行った(ただし、映画の後「謝罪」について熱弁し、彼女から別れを告げられる)のをはじめ、いつか「謝罪」の機会が訪れた時、完璧な「謝罪」をするために「練習」を繰り返すのだ。ところが真面目すぎる「誠斗」にそんな時は来ない。ついに「公園の大樹」に向かって「謝罪」をしていた「誠斗」の前に……なるほど。でも、オチはわかりやすすぎたかも。

菩提蜜多子さんの「はじめての豚役」、主人公の「僕」は、しがない独身男で、アプリで十五歳年上の「より子さん」という小さい子どももいる人妻と知り合う。延々メッセージを交換したあげく、半年後にようやく「初逢瀬」。深刻な環境にいる「より子さん」は、金策のためSMクラブに勤めることになった。そんな「より子さん」に会いたい「僕」は「練習台になります」と志願したのである。ほんとうはM(マゾ)でもないのに。そんな切ない恋(?)の顛末を描いた作品だが、こんな「練習」はちょっとイヤかも。
■第52回 [ ゲーム ]
みなさん「ゲーム」はやりますよね。スマホですか、プレステですか、オンラインでもやりますか。ボードゲームも楽しいですね。「恋愛」をゲームだっていう人もいます。となると、世の中にあるものはみんなゲーム?
■第53回 [ 罪 ]よくこんな大物のテーマが残ってました。「罪」ねえ。人間の世界は罪に溢れてます。あまりにも大きく、広く、多すぎるテーマかもしれません。みなさん、目一杯、想像を広げてください。小さな罪でもいいですよ。
■第52回  [ ゲーム ] 
11/1~11/30(23:59)
            ■第53回  [ 罪 ] 
12/1~12/31(23:59)
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第52回 2026/2/1、Koubo上
            第53回 2026/3/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
            佳作7編=記念品
            選外佳作=WEB掲載
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