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文学賞特集⑥:ライトノベル戦国時代3

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大賞賞金300 万円、ビッグネームを育てる老舗ラノベ新人賞 スニーカー大賞

キャラクター造形にはあなどれない「お約束」あり

賞創設は1996年。まだ「ライトノベル」というジャンル自体、定着してはいなかった。「若い才能を発掘し、イラストのついた文庫を刊行して育てていこう」という発想だった。
今年「学園小説大賞」の終了を受けて、スニーカー大賞はリニューアルする。締切が3月と10月の年2回となり、2回分の候補作品をまとめて最終選考をするなどの変更が予定されている。
しかし、受賞作品の発表の場としてスニーカー文庫がある以上、傾向に大きな変化はないと見ていい。
同ジャンルの新人賞の中で、スニーカー大賞は、やや特殊なポジションにある。萌えやバトルもあるが、じっくりストーリーを読ませる作品や、細部までつくりこんだ作品など、読み応えのあるものが多い。毎回必ずひとり映像ジャンルの選考委員が加わるのも、特徴のひとつだろう。ラノベはビジュアルと縁が深い。
「たとえ絵にしづらい物語でも、『この話を10代の読者に読んでほしい』と思えば、積極的に賞を出し、書籍化したいと思っています。でもラノベはほとんどの場合、表紙イラストに感情移入できるキャラクターが描かれるものですから……ヒロインがいないと辛いですね(笑)」(スニーカー文庫編集長)

ラノベ作品を読んでどこが面白かったか尋ねられたら、大抵は真っ先にメインキャラのことを口にするだろう。書き手も読み手も、キャラを深く愛する。このキャラクターへのこだわりは、ラノベのラノベらしさの所以でもある。
ところでその肝心のキャラクター造形に、「お約束」があるのをご存知だろうか。
「典型を守るか、それとも典型を崩すか。例を挙げるなら、肩までのストレートヘアで眼鏡をかけて無口で……とくれば、文学少女に違いないというのが、典型です。典型を守ればわかりやすいし、読者も安心する。説明が省ける分、キャラクターを活躍させたり遊んでみたりできる。逆に、文学少女に見えたが実は……とくれば、キャラクター自体の面白さが際立つ。キャラクターをわかりやすくしてネタで遊ぶか、意外性で楽しませるかで、作品の印象は大きく変わります」(同)

アイデアを活かしきる、使いきる そのためにキャラクターがある

さて、キャラクター造形うんぬんは、一次選考レベルの話。三次選考以降に重視されてくるのは、これもまたラノベならではの要素である、「ハジけっぷり」だ。「大風呂敷」「暴走」「荒唐無稽」などと表現してもいい。
「最終選考では、『ネタは面白いのに中途半端』とか、『もっと面白くなるのに、惜しい』という言葉をよく耳にします。いいアイデアをベースにしているのに、活かしきっていないんですね。その際に忘れないでいただきたいのが、キャラクターはその作品の根幹となるアイデアと一体であるという点です。アイデアとキャラクターがお互いをより活かしてこそ、ハジけた展開になるんです」(同)
ラノベは書き手と読み手の距離が近いジャンルと言われる。書き手がラノベ好きかどうかは、作品を一読すればすぐわかる。愛読者なら、いちいちリサーチなどしなくても、自分を含めた読者が喜びそうなアイデアのひとつやふたつ、すぐに思いつくだろう。
ただそのネタを、キャラクターの力を総動員して回しきることができるかどうかで、勝負は分かれる。
「面白いセンスを感じる方には、受賞に至らなくても担当編集者がつくことがあります。編集者とともに作品を形にしていくのは、また違った苦しさと面白さが感じられると思います。みなさんの応募をお待ちしています」(同)
ラノベの隆盛は、ジャンルの裾野を広げ、様々なバリエーションを生んだ。昨今は、作品設定がどんどん身近な舞台となる傾向があるという。ジャンル内の流行は歴然としてある。
しかし、同じジャンルの同じ属性で書いても、明らかに売れるもの・売れないものがある。最後は個性がモノをいう。技術だけでは、闘えない。

ポイントアドバイス

何度か作品を書き上げたことのある方は既にお気づきかと思いますが、400 枚というのは、意外とあれもこれも入れ込むことのできない枚数です。
実際に応募作品の多くは、399 枚とか、ほんとうに最後の1 枚まで使いきる勢いで書いてこられます。たった400 枚。自分が書きたいものを書ききるために、思いきって、最初は「これだけは書きたい」ぎりぎりのものを200 枚くらいで書いてみてはいかがでしょう。余裕ができたら、「そういえばあれも入れたかった」と足していけばいいのです。
自分が書きたいアイデアを、そんなふうに一度きっちり整理してみてください。
(スニーカー文庫 編集長)

選考の流れ(2010年・参考)

1次

下読み担当の選考者が作品を分担して選考。構成力・キャラクター力・設定力・表現力の4 点について5 段階評価を出し、感想を添える。そのうえで各自、推薦文とともに推薦作品を選出する。通過作品は全体の1 割程度。

2次

編集部内で、ひとつの作品を複数の担当者が読む。この段階では、編集者の得意ジャンルを配慮して作品を振り分ける。1次と同様の評価シートを記入し、3次選考へ進む10 作品程度を選出。

3次

選考に残った全作品を編集部全員で読み、候補作を選出。

最終選考

選考委員によるディスカッションで各賞を決定。

 

※本記事は「公募ガイド2011年7月号」の記事を再掲載したものです。

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