公募/コンテスト/コンペ情報なら「Koubo」

第9回W選考委員版「小説でもどうぞ」 江國香織さんインタビュー&応募要項

タグ
小説・シナリオ
小説
投稿する
小説でもどうぞ
                              写真提供:上田泰世(朝日新聞出版写真映像部)
第9回W選考委員版「小説でもどうぞ」の募集がスタート!
ゲスト選考委員は直木賞作家で、新刊『川のある街』を発売中の江國香織さんです。

また、季刊公募ガイド春号(2024/4/9発売)では江國香織さんのインタビューを掲載しますが、ここではこのインタビューの別バージョンをお送りします。応募前にぜひとも熟読ください。作家志望者必読の内容になっています。

レギュラー選考委員
高橋源一郎

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。 小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。

<第9回>
江國香織さん

1964年、東京都生まれ。89年『409ラドクリフ』でフェミナ賞を、04年『号泣する準備はできていた』で直木賞を受賞。ほか、『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』『犬とハモニカ』『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』など著書多数。

第8回ゲスト選考委員は直木賞作家の江國香織さん。
童話作家、小説家とキャリアを重ねてきた江國さんに、
新刊について、小説について、公募についてお聞きしました。
季刊公募ガイドの巻頭インタビューの別バージョンです!


カッコの多用はおすすめしないが、

わたしにとっては便利なツール

―― 江國さんにとって、川とはどのようなものでしょうか。
 昔、「川はながれる」(アン・ランド作、ロジャンコフスキー絵、岩波書店)という絵本を読んで感動して以来、川をどこかで生きもの視しているかもしれません。川に限らず水が好きです。雨も噴水もお風呂も。
――「川のある街Ⅱ」には、〈地縁という義母の言葉が夏子の胸に迫りあがってくる。この土地では、みんなつながってしまうのだ。〉とあります。実際に「地縁」を実感されたことはありますか。
 実感したというより目撃したという方が近いですが、「地縁」はたぶんそこらじゅうにあって、旅先などで目撃するぶんには味わい深いものですが、当事者になったら厄介なものでもあるに違いなく、だから小説のモチーフとしておもしろいものだと思っています。
――「川のある街Ⅲ」では、冒頭、車内で席を譲られた主人公が「結構よ」と断る印象的な場面から始まっていますが、導入部を何にするか、決める基準のようなものはありますか。
 基準はないです。毎回手探り。物語の要請に従ってその都度書きたいと思っています。
――「川のある街Ⅱ」はさまざまな視点が交錯します。この視点で書かれる効果やメリットにはどのようなものがありますか。
 小説世界を立体的に見せられますし、誰かひとりの感情や思い込みによって物語に色がついてしまうことを避けられます。でも、煩雑になって読みにくいかもしれないというリスクがあります。
――「川のある街Ⅱ」にはカラスが登場し、さまざまな生態を見せてくれます。もともとカラスに興味があり、観察していたのでしょうか。
 多少調べました。そして、調べるのも書くのもとてもたのしかったです。個人的に、今回の本では、自分がカラスを書けたことがいちばんの収穫だったと思っています。書いているあいだずっとカラスの感覚を疑似体験していられましたし、読んでくださったかたが、もしそれを体験してくださっていたらほんとうにうれしい。
―― ふと聞こえた会話を、改行せずに続けて書かれています。セリフの書き方について、江國さんご自身の流儀のようなものはありますか。
 とくに流儀はなく、これも毎回手探りですが、今回の小説では、主人公の少女が自分とまったく関係のない人たちの会話をたくさん聞いていて、それによって世の中の広さや手触りが小説に持ち込まれる、という効果を期待していたので、こういう形でカギカッコを連続させました。
―― 一文の中に注釈のカッコを入れた文がよくでてきます。この書き方をするメリットと、書くときのコツのようなものはおありでしょうか。
 小説にカッコを多用するのはよくない、という意見もよく目にするのでおすすめはしませんが、わたしにとっては便利なツールです。ライヴ感を損ねずに、加えたい情報を加えたい場所に書けるので、五感をいろいろ刺激できます。



何かが降りてくるのではなく、

何かがつながって小説になる

―― テーマやストーリーなどが降りてくるという言い方をよくしますが、降りてこない人は、どうすれば着想が得られると思われますか。
 降りて、こないですよ、たぶんですが普通は。でも、普段から言葉をおもしろがっていると、小説の「着想」以前のあれこれ(というのはたとえば旅先で見た風景や、街で耳にした他人の会話、何かの映画を観終わったときの気持ち、過去の恋愛で不本意だったこと、などなどですが)が「つながる」ということはあります。
 あくまでもわたしの場合ですが、何かが降りてきて小説になるのではなく、何かがつながって小説になる、という気がします。
―― 書くことを思いついたあと、プロットは作られますか。
 プロットは立てませんが、長編の場合、人物表は作ります。登場人物たちの生年月日や身長や体重、趣味など細かく考えます。
 小説が始まる以前の時間(登場人物たちの過去)をしっかり作っておくことがわたしには大事で、ひとりずつがどういう経験を経てここ(これから書こうとしている小説のなか)にやってきたのかがわかれば、彼ら彼女らがどういう行動をするかわかるからです。
―― 江國さんの作品には、胸が苦しくなるような雰囲気が漂っている印象がありますが、そうした雰囲気はどうしたら培われますか。
 どんな雰囲気も、「こうしたい」と考えるのではなく「こうはしたくない」と考えて書くほうがいい気がしています。
 甘やかにはしたくない、とか、さわやかにはしたくない、とか、ほっこりとは言われたくないとか、癒やしからは遠く離れていたいとか。
 絶対にいやなものを排除して、残ったものが小説の雰囲気をつくるのではないでしょうか。
―― オリジナリティーは、どのようにしたら身につくと思われますか。
 難しい質問ですね。オリジナリティーはたぶんすべてのひとにあるものだと思うので、小説においてそれを発揮するには、というふうに変えて考えると、逆説めきますがいったん自分から離れて、ストレンジャー(たとえばよその土地からきた旅人とか宇宙人とか)の目で世界を見ることが有効かもしれません。
 オリジナリティーはすでに存在するので、新鮮な立場に身を置けば、ほかに頼るものがないので個々のそれが発動されるのではないかと思います。



すべてを疑う! 寄らば大樹の陰や

多数決の原理は、小説の敵です

―― 小説家を志したのはいつでしょうか。
 志したというほどのことはなく、ずっと書くことが好きで、他にできることがなかったのでなんとなく書き続けている感じです。
―― 江國さんがデビューする前に、江國滋さんの著作は何冊か読んでいましたが、やはりお父様の影響は強かったでしょうか。
 きっと強かったのだと思います。書き手としてだけじゃなく生活人として、「まず言葉ありき」の父でしたので、言葉を遊んだり味わったりせずにいられない娘になった気がします。
―― 江國さん自身が、小説の勉強になったと思われたことはありますか。
 生活のすべてが小説にはプラスになると思っています。でも、土台になるのはやっぱりたくさん読むことです。
―― 才能の有無、あるいは育む方法について、どう考えていますか。
「才能」というものは存在しますが、それはただ存在するだけなので、伸びたり消滅したりはしないのではないかと思います。
―― 小説家にもっとも必要な資質はなんだと思われますか。
 疑うこと! 情報や常識、既存の価値観のすべてを疑うことだと思います。寄らば大樹の陰や多数決の原理は小説の敵です。
―― これまでさまざまな文学賞の選考委員を歴任されていますが、何をどう書いてもいいと言われている小説というジャンルで、どのような観点で〝よい〟と判断されますか。
 これはもうその都度ですね。小説は動物と同じでひとつずつ外見も性質も違いますから、前提のない場所でまっすぐに眺めて、生命力の有無(死んだ動物みたいじゃないかどうか)を判断するよりないと思っています。
―― 今回、高橋源一郎さん連載、W選考委員版「小説でもどうぞ」の選考をしていただきますが、どのような作品を期待しますか。
 これまでに読んだことのないもの。色鮮やかなもの。生命力のあるものを読みたいです。
―― ありがとうございます。選考会でもよろしくお願いいたします。


江國香織さん新刊
『川のある街』
(朝日新聞出版・1870円)

東京、北陸、ヨーロッパ。人生の三つの〈時間〉を、川の流れる三つの〈場所〉から描いた中編3編。

W選考委員版 第8回「小説でもどうぞ」の結果発表と選考会の裏側は、季刊公募ガイド2024春号(2024/4/9発売)またはこちらをご覧ください。
応募要項
課 題

■第9回 [ 友だち ]

 若い子たちがいちばん大切にしているのは「スマホ」と「友だち」なんだそうです。ほんとうでしょうか。ぼくは「スマホ」は持っていませんが、確かに「友だち」は大切です。みなさんは何人の「友だち」がいますか。(高橋源一郎)

締 切

■第9回 [ 友だち ] 
2024/5/9(必着)

規定枚数

A4判400字詰換算5枚厳守。ワープロ原稿可。
用紙は横使い、文字は縦書き。応募点数3編以内。

応募方法

郵送の場合は、原稿のほか、コピー1部を同封。作品には表紙をつけ(枚数外)、タイトル、氏名を明記。別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、原稿と一緒にホッチキスで右上を綴じる。ノンブル(ページ番号)をふること。コピー原稿には別紙は不要。作品は折らないこと。作品の返却は不可。

※WEB応募の場合も作品には表紙をつけ、タイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を記入すること。

応募条件

未発表オリジナル作品とし、入賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。

発 表

第9回・2024/7/9、季刊公募ガイド夏号誌上

最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載

応募先

● WEB応募
応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第9回W選考委員版」係

お問い合わせ先

ten@koubo.co.jp


応募作品添削サービス!
「小説でもどうぞ」の応募作品を添削します。
受講料 5,500円

https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/