恋の短歌キット2:人を惹きつける歌にしよう


上の句と下の句の合わせ方
ステップ3で少し触れたが、短歌は五七五の「上の句」と七七の「下の句」で構成され、それぞれが心情か情景を表すことが多い。
初心者の場合は、両方とも心情を表すことはあまりおすすめしない。
情景の力で心の揺れを伝えたほうが伝わりやすく、人を惹きつけるからだ。
よって、上の句と下の句の取り合わせは「心+情」「情+心」「情+情」のどれかにするように心がけるとよい。上の句も下の句も心情を詠んでしまい、結局曖昧な歌になるのは初心者にありがちなのでぜひ気をつけてほしい。ちなみに、ステップ3で短歌を作ったときは七七で気持ちを表したあと、状況を五七五にしたので「情+心」となっているはずだ。
あなただけの言葉で詠もう
魅力的な短歌には魅力的な言葉が欠かせない。作者が自分の心の揺れをよく観察して、その気持ちを表すのに最適な言葉を見つけられたときに歌は輝く。以下にあげたような慣用句的な表現は使われがちだが、短歌に使うときは「本当にこれが自分の気持ちにピッタリなのか」と自問自答してから使ってほしい。たいていの場合はほかにもっといい表現があるはずである。
短歌の共感と発見を知ろう
短歌を読んだときの反応はだいたい2種類である。「わかる〜」という共感と、「あっそうかも!」や「えっそうなの!?」という発見だ。この「共感」と「発見」は短歌に限った話ではなく、文芸すべてに言えることであり、どちらの配合が高いかで作品の性質が決まる。一般的に詩歌は「発見」の割合が高いといわれている。
以下に4首を並べてみた。右にいくにつれて共感が強く、左にいくにつれて発見が強くなっている。
今皆さんが作った歌はどこに分類されるだろうか? おそらくは右に寄っているはず。発見を詠むにはコツがいるので、初心者は共感が多くなりがちだからだ。このようにして、自分の作った歌がどんな性質を持っているか、自分はどんな歌が好きかを知ることも上達の一歩である。
「共感」は魅力的な短歌に欠かせない重要な土台であり、まずは共感される歌を目指して作ってほしい。しかし、人は自分の想像を超えた世界や言葉に出会ったとき、どうしようもなく惹きつけられるのも事実である。良い短歌には「発見」の要素が必要だ。

共感を強化しつつ発見を取り入れよう
短歌は「共感」と「発見」のバランスが大切。「発見」をうまく詠めると「共感」も強くなるという。「共感」に比べるとちょっとむずかしい「発見」だが、ぜひ詠めるようになってほしい。
発見のための2つのポイント
視点を変えてみる
少し外れたところを詠んでみよう。たとえばデートのことを詠むなら、デート本番より準備中の気持ちを詠んでみるなどすると「発見」があるかも。
妄想空想、大いに結構
現実に忠実に詠む必要はない。こっちのほうが面白そう、こっちのほうが気持ちが伝わりそうと思えばどんどん変えよう。現実より真実を、ということだ。
毎日の積み重ねでワンランクアップを目指そう
よい歌にするためのレッスンはいかがだっただろうか。当たり前だが、すぐにうまくなるというわけではない。特に「発見」や自分だけの言葉を詠もうとすると、日頃の観察が重要になる。日常生活の中で心が揺れた瞬間を逃さずにつかまえてほしい。慣れてくると心のほうもよく揺れるようになるのできっと楽しいはずだ。
※本記事は「公募ガイド2020年10月号」の記事を再掲載したものです。