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どこまでが盗作か6:類似チェック・主催者の実際

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盗作しやすく、発覚しやすい時代

 中国で、有名キャラクターにそっくりなものが堂々とまかり通っている現実を見ると、かの国の人たちは泥棒をしている意識はないのだろうと思ってしまうのだが、他国のことをどうこうは言えない。
日本でも以前は「ADIDOS」なんて偽物やコピー商品が堂々と流通していた。
 しかし、90年代ぐらいになって、「知的所有権」という言葉をよく見聞きするようになった。それは「知的所有物は無断で使ったら泥棒だからな」という脅威を伴ってまたたくまに浸透していったのだった。
 だからというほどの因果関係があるかどうかはわからないが、昭和の終わりから平成の始めぐらいにかけては、公募の応募作品でも盗作・盗用は少なかった気がする。泥棒になると知らなかったときはいざ知らず、知ってしまったらもうできないという抑止力が働いたからだろう。
 ところが、2000年を過ぎたあたりからまた盗作・盗用問題が起こるようになった。原因はインターネットだ。
 ネットの中には個人の著作物、つまり、文章や絵や写真などが無数にあり、コピーすれば簡単に自分のパソコンに取り込める。それに手を加えたり、切り貼りしたりするのも楽。泥棒には便利な環境というわけだ。

ネットは悪くない。悪いのは人だ

 ネットの機能でもっとも便利なものは検索だろう。過去の入選作品を知りたければ、検索すればたちどころに候補が出る。
 それが作文なら、「作文 作り方 コツ」と検索すれば、文章の書き方を解説したサイトが山ほど出てくる。
 悪用もしやすい。
 たとえば、同じ系統の公募の審査結果を検索し、その中の作品を丸パクリしたり、少し手直しして別の公募に応募することも、やろうと思えばできる。
 あるいは、あちこちのサイトから泣ける話を集め、それらをうまい具合に切り貼りして、1つの作品に仕立てることもできる。そんな面倒なことをするなら一から書いたほうが早そうだが、自分では書けない人はそんなことまでして書くのかもしれない。
 そうしたことはアナログの時代にもやっていた人はいただろう。しかし、手書きの場合、資料を見ながらでも一から書き起こすので元ネタの痕跡が残りにくいし、コピペ(コピー&ペースト)チェッカーもないから発覚しにくい。アナログでは集められる情報量も少ないから、1つ1つを消化することができたのだ。
 ところが、ネットを使ってこれをやるとぼろが出やすい。フードプロセッサーに野菜を入れすぎ、原形をとどめた野菜がごろごろ出てくる感じだ。
 しかし、毒を飲んで死んだ人がいても毒が悪いわけではない。悪いのは人だ。同様に、ネットを悪用する人がいてもネットは悪くない。悪いのは人だ。

大半が類似を調査、半数がネットでチェック

 こうした時代にあって、主催者はどう対応しているのかアンケートをしてみた。
 結果を見ると、ほとんどの主催者が類似チェックをしていた。チェックをするのは、最終審査の前後が多く、これは当然だろう。落ちたものについては、類似していてもいなくても関係ない。
 チェック方法はやはりネット検索が多かった。これはネーミングや標語、短詩型、画像には威力を発揮する。全く同じ先行作品があれば検索に引っかかるだろう。
 こうしたごく短い作品では、検索してみて、どこかですでに発表されている作品と同一であれば選外となる。似ている場合はどの程度か検討されるが、その線引きは主催者の判断による。
 一方、文章ものはネット検索では調べようがない。コピー&ペーストについてはコピペチェッカーもあるが、書き換えている、またはアナログ原稿の場合はチェックしようがない。

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最終的には人が判断するしかない

 文章系の作品で、すでにある作品と類似していた場合、主催者はどうするだろう。
 こうしたときの1つの判断基準に、類似性と依拠性がある。
 類似性は似ているかどうかということだが、著作権侵害になるかどうかで言うと、著作権は表現を保護する法律だから、表現(文章)まで同じでなければ類似とされるケースはまずない。となるとどの程度似ているかという主催者の個別判断による。
 そこで似ているとなった場合、次に依拠性が問われる。つまり、盗用したのかどうかということだが、これは本人に聞くしかない。結果、「盗用した」と言えば受賞はなし、「偶然」と言った場合は……これも主催者の個別判断だ。

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※本記事は「公募ガイド2018年2月号」の記事を再掲載したものです。