あなたとよむ短歌 vol.52 テーマ詠「外国語」結果発表 ~動詞の数と助詞について~(1/3)
テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。
(『母の愛、僕のラブ』より)
テーマ詠「外国語」結果発表
~動詞の数と助詞について~
短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。
今回はテーマ詠「外国語」の結果発表です。
「外国語」は英語だけに限りません。日本語も、海外の人からすれば「外国語」です。たとえば、海外からの観光客に道を聞かれたり、海外製品の説明書に微妙に誤った日本語が書かれていたり。ふとした日常のなかにも日本語を外国語だと感じるシーンはあるはずです。テーマ詠は柔軟な発想で、さまざまな角度から挑戦したいものですね。
今回は、投稿者の方からよせられた質問もご紹介しています。ぜひ入賞作品とあわせてお読みください。
声に出したら嗚咽になった
歌集や応募作品など「誰かの詠んだ短歌」を読んでいると、あまりにもすばらしく、グッときてしまって「こういう歌を私自身が詠みたかった……」と悔しくなることが私にはあります。えぺさんのこの一首にはそう思いました。
人の胸中とのは複雑なもので、自分でもすべてを理解したり、管理しきれないところがあります。そのような状態をこの作品では「存在しない国」と示しました。自分の胸の中だけれども、まるで外国のような部分。
自分の普段の論理では把握しきれない、感情の奥の奥の部分を的確に表しています。実に見事な比喩です。
その、自分の胸の中の外国のような部分から声をだしてみたら、まるで日本語にはならず「嗚咽になった」。悲しさ、悔しさ、普段の自分でも解読できない胸中の言葉は、たしかに外国語のようです。
続いて、優秀賞2首です。
国立国会図書館の夜
名詞について、女性名詞・男性名詞と分かれている言語があります。たとえば、フランス語、イタリア語、スペイン語、ロシア語、そしてドイツ語もそうです(中性名詞がある言語もあります)。それぞれの名詞につく冠詞が異なるなど、その言語を学習する側にとってはなかなかやっかいですね。
調べたところ、「図書館」はドイツ語では「Bibliothek」で、女性名詞だそうです。国会図書館は平日は夜7時まで開いているので、閉館間際でしょうか、閉館後でしょうか。国会図書館には、ドイツ語に関する書籍ももちろんあるでしょう。さまざまな書籍を内部に抱く図書館の姿は、たしかに子を宿す機能のある女性の姿を彷彿とさせます。外国語に対して、詩的であざやかな切り口で詠んだ一首です。
goneはgoの過去分詞形
「シス単」は「システム英単語」という、学生時代に多くの人が触れたであろう有名な英語学習本の略称です。こうした略語を使うのは、決してNGではありません。
略語には略語からしか醸しだせない時代性や空気感があります。ただし、企業や自治体などが募集する短歌コンテストに応募する場合には、辞書に載っていないような略語は「万人が理解できない可能性がある」という点で少しリスクがあるかもしれません。
色褪せるほど読み込んだ「システム英単語」を開きながら聞く除夜の鐘。年明けに受験か、定期テストが控えているんでしょうか。ゴーン、ゴーン、という除夜の鐘からgoの過去分詞形であるgone(ゴーン)を連想してしまうほど英語漬けのようです。大晦日の慌ただしさや、テレビ番組の華やかさとは無縁に、静かにひとり勉強に投じる姿。応援したくなります。