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第11回W選考委員版「小説でもどうぞ」 今村翔吾さんインタビュー&応募要項

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小説でもどうぞ
第11回W選考委員版「小説でもどうぞ」の募集がスタート!
ゲスト選考委員は直木賞作家の今村翔吾さんです。

また、季刊公募ガイド秋号(2024/10/9発売)では、今村翔吾さんのインタビューを掲載しますが、ここではこのインタビューの別バージョンをお送りします。応募前にぜひとも熟読ください。作家志望者必読の内容になっています。

レギュラー選考委員
高橋源一郎

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。 小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。

<第11回>
今村翔吾さん

1984年、京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。22年『塞王の楯』で直木賞受賞。書店経営、本を通じて地域の発展に貢献する一般社団法人ホンミライの設立、九州さが大衆文学賞サポートなど多方面で活躍中。

第11回ゲスト選考委員は直木賞作家の今村翔吾さん。
小説の執筆のほか、多方面で活躍中の今村翔吾さんに、
作家への道と小説の書き方についてお聞きしました。
季刊公募ガイドの巻頭インタビューの別バージョンです!


完結させないのはもったいない

完成の先にしか答えはない

―― 作家を目指したのはいつでしたか。
 なりたいと思ったのは中学校ぐらいですが、書き始めたのは 30 歳からですね。小・中学生のときに読んでいたのは、池波正太郎、司馬遼太郎、山田風太郎、山本周五郎、吉川英治などです。
―― 小・中学生で、なかなか渋い。
 歴史小説ばかり読んでいて、池波先生の『剣客商売』の続きを自分が書くなら、どんなものがいいかなと想像していました。
――「三十にして立つ」ではないですが、きっかけがあったのですか。
 若い頃、ダンスを教えていたのですが、教え子に「夢を諦めるなよ」と言ったら、「翔吾くんこそ諦めてるやん」と言われたことがきっかけですね。それで書こうと決めたら、いきなり書き出していましたね。
―― 思い立って書き始めたのはいいけれど、途中で放り出してしまったという話もよく聞きます。
「書いていたけど、途中でやめた」という話を聞くことがあります。これが一番面もったいない。
――「完結させても面白くならないと思ったからやめた」と言う方が多いですね。完結させても意味がないと思ってしまうようです。
 プロになったら、面白いかどうかを決めるのは僕らじゃなくて読者ですからね。作者が面白くないと思っても、めっちゃ面白いと言われることもあり得るし、その反対もあるかもしれない。完成の先にしか答えはないような気がします。
―― どうせなら次につながる失敗でありたいですよね。一発で受賞することはまずないですから。
 僕は地方の短編の賞を一発で受賞したけど、中央の文学賞には2年かかったよね。オール讀物と野性時代は最終選考まで行きましたが、集英社の小説すばるは一次落ちも経験しています。
―― 今村先生を落とした人の責任は重いですね(笑)。
 直木賞を受賞した『塞王の楯』の版元が集英社ですが、「俺を一次で落としているからな」と嫌味を言っているんです(笑)。
―― 今村先生はプロットを作らないとお聞きしました。
 構想は頭にはあって、なんとなくこういう道もあるよね、と何個か道を見ながら書いているイメージですね。
―― 書きながら解像度が上がってくる感じ?
 そう、近くなってきたらどの道を行くか決断するという感じです。
 ただ、最初は100メートル先まで近づかなかったらどの道を行くかわからなかったのが、書けば書くほど5キロ先からでもわかるようになります。ドローンを飛ばして先の状況まで見るようなことも訓練次第ではできるようになります。そのような感覚です。
―― プロットは作らないほうがいいですか。
 作ったこともありますが、ぼくには向かなかったですね。
 一方で、作ったほうがいい人もいます。これはタイプによるかな。音楽にたとえると、オーケストラのように一つ一つ譜面を起こしてやっていくようなタイプはプロットを立てたほうがいいです。
 逆に、ライブみたいにお客さんの反応やコンディション、雰囲気で曲順を変えたり、ソロを長くしたりするのがライブタイプで、こちらはプロットなしのタイプだと思います。
―― ライブタイプは地力が必要ですね。ギターで言えば、まだコードを覚えたばかりという初心者では即興は難しいですよね。
 僕がいきなり書けたのは才能があったからというわけじゃなくて、もちろん才能も必要かもしれないけれど、それ以上にやっぱり本を読んでいたから、小説がどういうふうに書かれているのかを把握していた。これが大きかったですね。



オリジナリティーを3割乗せる

ぐらいの感覚でいい

―― 書いた経験はなくても、読んだ経験がたくさんあれば、初心者とは言えないかもしれませんね。ちなみに、本はどれくらいお読みになっていたのですか。
 小学校から社会人になって忙しくなるまでは年に100冊ぐらい。3日に1冊ぐらいですね。プロになると書くことで忙しく、なかなか読めませんので、プロになる前にいっぱい読んでおいたほうがいいですよ。
―― 歴史小説を書くために、これは持っておいたほうがいいという史料はありますか。
 江戸時代の武士ものをやりたいというのだったら、僕は『武鑑』を多用しますが、歴史の流れもわからないという人なら、意外と高校の教科書が重要です。おさらいしておかなければいけないのは通史かなと思います。そのうえで、この時代を知りたいとなったら、図解付きの事典のような史料を読めばいいと思います。
―― 文学賞の選評を読むと、「オリジナリティー」とよく書かれていますが、どうしたらオリジナリティーのある小説が書けますか。
 オリジナリティーがめちゃくちゃ必要かというと、必ずしもそうとも思っていません。読んできたものにも影響を受けますし、似ているものは絶対にあるんですよ。だから、オリジナリティー100%で作るのではなく、自分が読んできたもの、勉強してきたもの、好きだったものに自分のオリジナリティーを3割乗せるぐらいの感覚でいったほうがいいと思うんです。
 100%を作ろうとするとしっちゃかめっちゃかになりやすいというイメージもありますね。映画なり小説なり、自分を作ってきたコンテンツに3割のオリジナリティーを乗せる。9対1ではオリジナリティーがないですが、7対3でいいんだよと言いたいですね。
―― 日頃からやっておくといい小説の練習はありますか。
 僕がよくやっていたのは、自分が見たものをすべて文章化すること。旅行に行って華厳の滝を見たら、その景色を50字ぐらいで文字化するっていう練習をしていました。これを歩きながらずっとやる。小説のいいところは、匂いも音も手ざわりも味もふんだんに表現できるところなので、視覚だけでなく五感で表現する。空間の切り取り練習ですね。これは非常に役に立ちます。
―― そういった上達法はほかにもありますか。
 一つの出来事を、AとBの視点で別々に書いてみるといいです。誰の目で書くかによって、ものの見え方が変わってきます。
 あと、今でもやっぱり大変だなと思うのは、4人以上の会話のシーンをずっと書くこと。読んでいる人にちゃんとわかるように、この練習をするといいです。最初に書いた『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』は、会議では常に6人で話しているんで、これはだいぶ練習になりました。
―― 4人以上の会話を書くコツはありますか。
 6人いるなら、いることを忘れさせないこと。6人いても二人だけがしゃべっていたら6人いる意味がないじゃないですか。
 ただ、必ずしも6人が均等にしゃべらなければいけないわけではありません。しゃべらなくても、いることをわからせることはできます。たとえば、ちょっとした仕草を書き込むとか、隣の人と肩が触れ合ったとか、行動や表情などを書く。そういう練習をすると非常にいい。6人ができたらなんでもできますよ。
―― 誰が誰に言っているの?と思うような原稿は困りますよね。
 口調だけでわからせようとするのは安易だと思います。関西弁の人が一人いたら、それはわかりますが、同じ口調、同じ性別でも全部書き分けられるような訓練をしたほうがいいよね。『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』なら天文の話をするのは星十郎せいじゅうろうだけなので、誰のセリフかわかります。



座学と実践をバランスよく

やっていくのが成功の近道

―― 短編は書けるが、長編が書けないという人は?
 長編はマラソンや登山に似ていますから、まずは忍耐力ですね。500枚を書く集中力をつけるのは訓練というか、とにかく繰り返し書くしかない。それと僕はプロットは考えないけど、バイオリズムというか、感情の曲線を考えます。ここで山場を作って、いったん下げて、もう一回上げてという盛り上がり表みたいなものに乗せていくと500枚書けますよ。
―― 話が平板だと書いているほうも飽きて嫌になります。
 500枚じゃないと説明できない小説のネタを見つけられていないんじゃないかな。500枚が必要な題材をまず見つけてくること。「これなら300枚で書ける」「これは1000枚かかる」と見極めることですね。
―― それがわからない人が多いようですね。
 各論では小説は教えることができますが、頭で考えることと書いてみることを並行してやること。二つの車輪で回さなかったら、成長できないですよね。座学と実践の両方をバランスよくやっていくのが近道です。
―― 学んで書いて、書き始めたら完結させる。失敗作でも、完結させれば振り返りができます。
 何がつまらなかったのか、どこがターニングポイントになったのかは書き終わってからでないとわからないです。連載をしていても、書いていて面白くないと思うときはあります。そのときに、修正して修正して、道を定めた瞬間にアクセルをベタ踏みできる度胸というのは、訓練の中でしか身につきません。もしもプロになりたいのなら、今のうちに盛大に失敗して、修正力を身につけておくほうがいいですよね。
―― 失敗って大事ですよね。酷評されるとめげますが。
 選評はすごく大切にしておいたほうがいいです。少なくとも僕はそうしてきていて、新人時代でもプロになってからでも、文学賞の選評は読み込みました。「なるほど、そういう見方があるのか」と勉強になります。全部聞く必要もないけど、そういう意見があるという事実は受け止めたほうがいいです。事実を知ることが成長につながりますので。
―― 指摘されても、これが私のやり方だと変えない人もいます。
 自信を持つのはいいですが、小説には正解がありませんので、これで間違いないと思ったところがやめ時だと言いたいです。僕は「成長したな」とか、「これで完璧だ」と思ったときはやめようと思っていて、「まだ成長できる」「もっとできることある」と思い続けています。プロになってからも同じです。「今のままで完璧」なんて思わないほうがいいですよ。
―― 目標を持つことが大事ですね。
 書くごとに一つ意識を持つ。たとえば、今回は主人公をぐっと魅力的に描こうとか、今回は無理なく描写をきれいに落とし込んでいこうとか、一つずつクリアしていくというやり方もあります。それを十回やれば、総合力になっていきます。
―― 最後に、応募される方に一言お願いします。
 僕は5枚という数は丁寧にやる練習だと思っています。5枚はちゃんと意識を尖らせて丁寧にやらないといい小説になりません。
―― 余分な説明もできませんし、2枚で終わるものを無理やり5枚にしても間延びしますね。
 わかりやすく言うと、1.5倍、つまり、7~8枚ぐらいで書けそうと思っているものをぎゅっと5枚に収められたらいい。30枚を5枚にするのは相当達者でないと難しいですので、3分の1削って5枚にするぐらいがいいかなと思います。
―― ありがとうございます。公募ガイド冬号での選考会、楽しみにしています。




W選考委員版 第10回「小説でもどうぞ」の結果発表と選考会の裏側は、季刊公募ガイド2024秋号(2024/10/9発売)または2024/10/9更新のこちらをご覧ください。
応募要項
課 題

■第11回 [ 善意 ]

よく使われることばです。意味は「好意」、「良い心」、「他人のためを思う親切心」。まったくもっていい意味しかない言葉です。だが、実際には、ダークな意味合いになることもあるのがちょっと不思議。(高橋源一郎)

締 切

■第11回 [ 善意 ] 
2024/11/9(必着)

規定枚数

A4判400字詰換算5枚厳守。ワープロ原稿可。
用紙は横使い、文字は縦書き。応募点数3編以内。

応募方法

郵送の場合は、原稿のほか、コピー1部を同封。作品には表紙をつけ(枚数外)、タイトル、氏名を明記。別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、原稿と一緒にホッチキスで右上を綴じる。ノンブル(ページ番号)をふること。コピー原稿には別紙は不要。作品は折らないこと。作品の返却は不可。

※WEB応募の場合も作品には表紙をつけ、タイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を記入すること。

応募条件

未発表オリジナル作品とし、入賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。

発 表

第11回・2025/1/9、季刊公募ガイド冬号誌上

最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載

応募先

● WEB応募
応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第11回W選考委員版」係

お問い合わせ先

ten@koubo.co.jp


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受講料 5,500円

https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/