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あなたとよむ短歌 vol.58 テーマ詠「文房具」結果発表 ~新春・大量採用祭~

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川柳・俳句・短歌・詩
短歌
あなたとよむ短歌
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結果発表

テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。

柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
■作品
プリキュアになるならわたしはキュアおでん 熱いハートのキュアおでんだよ
(『母の愛、僕のラブ』より)
vol.58
テーマ詠「文房具」結果発表
~新春・大量採用祭~

短歌を読む・詠む連載、「あなたとよむ短歌」。今回はテーマ詠「文房具」の結果発表です。

ハサミやのり、鉛筆、ペン。生活するなかで文房具を使わない人はいないでしょう。
日常的に使用するものなだけに、今回は多様な場面を詠んだ作品が寄せられました。短歌を詠む練習をしたい人は、「文房具」しばりで挑戦してみても面白いかもしれません。

今回は過去最多となる588首の応募がありました。佳作としてご紹介したい作品が多かったので、急遽、「新春・大量採用祭」を開催します! 合計13首のご紹介です。すべてコメント付きで掲載していますのでぜひチェックしてください。

それでは、最優秀賞の発表です!


もう二度と芯を出せないシャーペンを
机の上のおまもりにする
(宮瀬さん)

テーマ詠「文房具」の回で、文房具を使うシーンではなく、使えなくなったシーンに注目する、その視野の広さがまずかっこいいですね。「もう二度と芯を出せないシャーペン」というのは壊れてしまったのでしょうか。たしかに、シャープペンシルは少し繊細な文房具です。ノックしても芯が出てこなくなってしまった経験のある方も多いでしょう。
書けなくなったシャープペンシルは、本来の役目を果たすことができない、存在価値のないものです。けれども捨てずに「机の上のおまもりにする」ということは、この人にとっては字を書く以上の価値がある、唯一無二の品だということがわかります。その思い出や思い入れは一切語られていない分、読者はそれぞれの思い出を呼び起こすでしょう。
「シャーペン」という略称を使っていることから、なんとなく若さを感じます。略称を使うことで定型のリズム(シャーペンを=5音)にはまるだけでなく、フレッシュさやノスタルジーが強化されています



続いて、優秀賞2首です。

三色のインクが同時に尽きるよな
一日でしたおやすみなさい
(藻下いのりさん)

3色ボールペン、使い切ったことがありますか? 私はないです。たくさん使う色も、使わない色もありますよね。そんな三色ボールペンのインクが同時に尽きてしまうように、体も心もすべてが疲れ切ってしまった1日なのでしょう。
「尽きるような」ではなく「尽きるよな」とすることで、最優秀賞作品と同じく定型のリズム(5音)に添いつつ、「ような」と言う余裕すらない弱々しい雰囲気も出ている気がします
「おやすみなさい」という潔い結句も好きです。疲れたときは、寝られるなら寝るに限ります。


元推しの引退ライブを流し観る
 銀テープって文房具かな
(高原すいかさん)

銀テープ(通称「銀テ」)は、ミュージシャンなどのライブ会場で打ち上げられるキラキラしたテープです。客席に落ちた分は記念に持ち帰ることができます。テープはテープでも、確かに文房具といえるでしょうか? 謎ですね。
この作中主体は、以前はライブに通い詰めていたのかもしれません。それが現在では「元推し」、つまり熱狂的なファンではなくなってしまったようです。大切な引退ライブの会場にも行かず、それでも一応は画面越しに見ている状況。フィナーレでキラキラ輝く銀テープを見て、元推しに思いを馳せるでもなく「文房具かな……」と瑣末なことを考えてしまう。「文房具」というテーマで、時間経過や感情の変化を見事に表現しています。



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