純文学作品のタイトルはこう付ける! どのくらい具体的/抽象的にすべき? 題名でどのくらい内容を説明するの?


純文学作品のタイトルは、作品の「顔」となります。というのも、「この作品がどんな物語なのか」を読者に伝える一番最初の要素だからです。公募に挑戦するみなさんもきっと、応募の直前まで迷っていることでしょう。
この記事では実際の例を挙げながら、純文学作品のタイトルで何が必要なのか、どの程度内容を説明すべきかについて解説していきます。気になる方はぜひご覧ください。
タイトルで大事なことは?
適切なタイトルのあり方を知るためにも、まずはタイトル付けにおいて大事なことを見ていきましょう。
まず頭に入れるべきなのは、読者の興味関心をひきつけることです。はじめて作品を目にする読者でも興味が持てるようなものにすることを意識すると良いでしょう。
また、物語のテーマ・内容を表現することや読者の想像力を刺激することも大切です。物語の軸となるテーマや伝えたいメッセージを盛り込んだり、あえて余白を残すような表現を意識すると、よりクオリティを高められるでしょう。
タイトルの例から考えてみよう
続いて、実際の作品タイトルにはどんなものがあるのか考えてみましょう。ここでは、「物語の内容をしっかり説明するタイトル」と「抽象的なタイトル」の2種類を例に挙げてみました。
物語の内容をしっかり説明するタイトル
こちらは、直接的な表現を使うことで物語の内容を的確に表現しているタイトルです。物語の概要がわかりやすいため、大きなインパクトを与えられることでしょう。
『コンビニ人間』(村田沙耶香) :コンビニでのアルバイト歴18年の主人公が登場する物語に適したタイトル
『百年泥』(石井遊佳):100年に一度起こる洪水を描いた物語に適したタイトル
『真鶴』(川上弘美):物語に登場する地名を名付けたタイトル
抽象的なタイトル
これらの作品は、抽象的なタイトルを用いることで、物語の奥行きを表しています。抒情的な雰囲気を醸し出せるため、作品のテイストに合わせてつけると効果的です。
『蜜蜂と遠雷』(恩田陸): 名付けられた意味を考えたくなるタイトル
『沈黙』(遠藤周作): 物語のテーマを表現するタイトル
『肩胛骨は翼のなごり』(デイヴィッド・アーモンド): 詩的な表現によって読者の関心を引きつけるタイトル
タイトル作りのポイント
ここからは、実際に物語にタイトルをつける際の具体的なポイントを説明していきます。
1. 詩的な表現を加えつつ、作品の象徴となることを意識する
作品の世界観などを表現するためにも、詩的な表現を使いながら、作品の象徴となるタイトルをつけると良いでしょう。こうすることで、物語の重要な部分を凝縮することができます。
たとえば『蜜蜂と遠雷』(恩田陸)、『肩胛骨は翼のなごり』(デイヴィッド・アーモンド)は、『蜜蜂・遠雷』『肩胛骨・翼』という一見交わらそうな言葉を使うことで、詩的な味わいを生み出しています。
キーワード選定の際は無関係の言葉を使うのではなく、物語に関連する言葉を使い、そのうえで詩的な響きがあるものを選定すると良いでしょう。また、たとえ表現として比喩や暗喩を活用することもおすすめします。
2. タイトルですべてを説明しない
読者のイマジネーションを刺激するタイトルにすることで、作品への関心を高めることができます。そのため、タイトルで物語のすべてを説明することは避けましょう。
『沈黙』(遠藤周作)では、「沈黙が何を意味するのか」と読者に感じさせることに成功しています。結果的に、作品テーマである信仰心などを印象付けているのです。
このようにあえて説明を省略することで読者からの関心が集まりやすくなるため、タイトルですべてを説明しないこと・内容に疑問点を盛り込むことを意識しましょう。
3. タイトルに作品のテーマを凝縮する
作品全体で伝えたいことを総まとめしたような、簡潔なタイトルをつけることも重要です。物語のテーマがタイトルに反映されていると、読者が「これはどんな物語なのか」を理解しやすくなります。
『推し、燃ゆ』(宇佐見りん)では「推し」という文化的背景を示すことで、物語のテーマを表していますよね。
作品全体をとらえるにあたって特定のシーンや登場人物に絞らず、作品全体を示す言葉にすると良いでしょう。また、象徴的なキーワードを組み合わせることで印象の相乗効果をねらうこともできます。
まとめ・純文学作品のタイトルはこう付ける!
純文学作品にタイトルをつける場合、「詩的な表現を加えつつ、作品の象徴となることを意識する」「タイトルですべてを説明しない」「タイトルに作品のテーマを凝縮する」を頭に入れておくと良いでしょう。
タイトルは、読者にアピールする最初の一歩です。適度なバランスを探りながら、魅力的なタイトルを付けられると良いですね。