あなたとよむ短歌 vol.62 テーマ詠「怒り」結果発表 ~推敲と承認欲求~(2/3)


それでは、佳作5首のご紹介です!
妹は怒ってないって言いながらジブリみたいな速度で歩く
(もりおさん)
ジブリ作品に親しんだ人なら思い浮かぶのではないでしょうか。メイとケンカしたあとのサツキ、トンボとあったばかりのキキ。顔をこわばらせてずんずん歩くアレですね。
掃除機の音がリトマス紙であった母の機嫌をおしはかる朝
(石川真琴さん)
掃除機の音ってなんて雄弁なんでしょう。「いつまで寝ているの」「急がなきゃ」「今日のランチ楽しみ」。「おしはかる」という控えめな表現が、まだ主体が布団の中にいるような雰囲気をだしています。
既婚者に騙されて泣く我のため藁人形をポチってる母
(繭中舞百合さん)
一句ごとに驚きがある、ドラマチックすぎる短歌。藁人形ってネットで買えるんですね。「よし、藁人形を通販で買おう」と思った母もすごい。凄みとおかしみがぶつかりあって爆散しています。
お互いを傷つけようと深夜2時LINEの吹き出し殴りあってる
(七野愛子さん)
LINEの吹き出しで殴り合うという表現。確かに向かい合っていて、ぶつけ合っている感じがします。声で話してしまえばいい気もするのに、そういうものでもないんですよね。
一度でも我のプリンを貪りし人みな死ねと投稿したり
(東沖和季さん)
石川啄木の「一度でも我に頭を下げさせし人みな死ねといのりてしこと」の本歌取り(オマージュ)ですね。現代において「祈り」は、SNSへの投稿の形をしていることもあるのかも。