あなたとよむ短歌 vol.62【お悩み回答】~推敲と承認欲求~ (3/3)


今回はこちらの質問について考えていきたいと思います。
柴田さんは、短歌を詠まれる時はなんども推敲なさった上で完成なさるのでしょうか? それとも57577の形で、ほぼ、完成した状態で頭にふうっと歌が浮かばれるのでしょうか?
よりよい推敲の仕方、特に一度31音にはめてしまった後の推敲による改作方法がしりたいです。
推敲についての質問が複数寄せられました。歌人によってかなり違うところですね。
私は、言葉やフレーズ単位で思いついたことをメモしておきます。それらを材料に短歌を詠むことが多いです。最初から57577の形で浮かぶことはほぼありません。でも、そういう人もいるそうです。
個人的には、私は自分のことをそこまで信じきれないので、むしろふっと浮かんできたり、早々に31音にハマってしまったら、一旦は壊してみようと試みます。
短歌を始めたばかりの方にもオススメな方法は「上句と下句を別の短歌同士で入れ替えてみる」「上句と下句を入れ替えてみる」などです。また、品詞ごとに「名詞・動詞・助動詞を他のものにしてみる」という手もあります。自分のなかの理屈を凌駕する、意外な良さが生まれるかもしれません。やっぱり元の方がいいとわかれば、それはそれで収穫です。
投稿で入選しようとしてつい奇をてらってしまいがちになるのですが、素直に、読み手の心に響く歌を作るにはどういうことを心がけたらいいですか?
創作をする上で、承認欲求とどう付き合っていけばいいと思いますか?
こちらも別々の質問です。まず、自分がなぜ短歌を詠むのかは、ちょっと考えてみてもいいかもしれません。
楽しいから詠む、日記の代わりに詠む、感情を短歌にすると落ちつくから詠む……。入選したいという欲もOKだと思います。ただ、短歌はスポーツではないので、タイムや距離など数字で良し悪しが測れるものではありません。「選がある公募」は、その場にふさわしい作品や、選者の意向などが反映されるからこそ公募に個性が生まれるという側面もあります。だから「入選を目指す」のであれば、自分にマッチした公募をいくつかに絞った方がいいかもしれません。
また、基本的には短歌は奇をてらうとハズれがちな気がします。奇をてらうというのは平常モードがあってこそ「奇」が輝くもので、一首の短歌で奇をてらおうとすると、作られた「奇」だけしか残らないケースが多いものです。読み手の心に響く作品は、まず自分の心に響くのではないでしょうか。
承認欲求については、公募に入選する・しない以外であれば、SNSに投稿して「いいね」がつくかどうか、という話が最近は多い気がします。ひと昔前なら歌集を出版してしばらくしたら読者から感想が送られてきたり、書評が載ったり、という反応が主だったでしょうが、現在はなんだか忙しないですね。
「いいね」は励みになるものですが、励みにだけすればいいと思います。自分が短歌や創作を「する」ことが大切なのであれば、生活に関わるわけでもなく、しかも創作を邪魔する事象などすべて不要なものです。たとえば「いいね」数が励みにならずに傷つくことの方が多いなら、なんの役にも立ちません。自分の創作魂を守りたいなら、そのへんの損得を考えてやっていきましょう。
もし「とにかく人に認められたい」ならば、個人的にはボランティアや仕事で給与を得る方が確実だと感じています。私もその「承認されたい」という気持ちはわかるからこそ、こと短歌には持ってこない方がいいと痛感しています。
今月は、テーマ詠「運動」を募集しています。
テーマ詠は、お題の単語を短歌のなかに入れても入れなくてもOKです。そのテーマにあった短歌をお待ちしています。
どこかに応募した作品も、未発表も作品もぜひご投稿ください。(著作権がご自身にある作品に限ります)
分かち書き、句ごとの改行はしなくてOKです。採用されている短歌の書式をご参考に!
応募規定 | 短歌(57577)を募集します。 テーマは「運動」。 応募点数制限なし。 応募フォームに柴田さんへの質問欄を設けています。短歌のことや、作品づくりについて選者:柴田葵さんに質問があればご自由にお書きください。匿名で質問内容とその回答を記事に掲載させていただく場合があります。必ずしも回答があるわけではございませんので、ご了承ください。 |
応募方法 | 応募フォームからご応募ください。 ※X(旧Twitter)での応募はなくなりました。 ※応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。 |
賞 | 最優秀賞1点=Amazonギフト券3000円分 優秀賞2点=Amazonギフト券1000円分 佳作数点=ウェブ掲載 ※該当作品なしの場合があります。 ※作品を記事内で推敲する場合があります。 ※発送は発表月末~翌月頭を予定しております。 |
締切 | 2025年5月31日 |
発表 | 2025年7月1日 |