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"ガキ使"からYouTubeまで――ヒット連発の放送作家・白武ときおの仕事術

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お笑いを中心にテレビやラジオ、最近はYouTube放送作家として注目を集める白武ときおさん。メディアを乗り越え、次々とヒットを生みだしていく、その企画力と仕事術に迫る。

ヤンキーに罰ゲームを提案するポジション

——プロになる前はどんな生活をされていましたか。

親の影響で小さい頃から映画ばかり観ていました。高校に入学し、部活に入ろうとサッカー部に見学に行ったのですが、体育会系のノリになじめず、結局、アルバイトをしながらレンタルビデオ店で毎週10本のDVDを観ては返すという生活を送っていました。中でも映画とお笑いが好きで、特にダウンタウンさんの作品にハマって観まくりました。

——もともとお笑い芸人志望だったのですよね。

小学校までは人前でふざけていましたが、中学生くらいになると「このボケは、この太っている友達が言ったほうが面白いな」と思って吹き込んだり。考えて、ボソッと耳打ちしてっていうポジションになりましたね。ヤンキーたちには「こういう罰ゲームをしたら面白いんじゃないか」と提案したり。今やっていることと変わっていません。原点ですね。

——放送作家という職業については知っていたのですか。

学生時代に、ダウンタウンの松本人志さんと放送作家の高須光聖さんがやっている『放送室』というラジオを聞いていて、そこで初めて放送作家という仕事があることを知りました。

——その後、放送作家の樋口卓治さんと出会いますが、師匠の樋口さんにはどんな指導を受けたのですか。

企画書や台本の書き方の基本はいろんな資料を見せてもらいました。でも手取り足取りということではなく、樋口さんは、谷底に突き落とされて、もがいて強くなれというタイプなので、入り口を作っていただいて、師匠の立ち居振る舞いを見て学んでいきました。

——放送作家を志した最初の頃は、どんなことをして経験を積んだのですか。

芸人ライブではライブ運営のスタッフをし、雑用もしながら、ネタとネタの間に流す芸人の面白いロケ動画、今のYouTubeみたいな映像を作って出したりしていました。

シャワーのようにコンテンツを日常的に浴びる

——放送作家を始めてすぐ、人気番組の『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』に参加されていますね。

先輩から『笑ってはいけない』シリーズに誘っていただきました。いろんなブロックがあるので、とにかく時間がある若手を探しているんですね。ぼくは22、23歳の若さにしてはとにかくダウンタウンさんの過去の作品をめっちゃくちゃ観ていました。だから参加させてもらえたのだと思います。

——やはり、得意分野があると強いですね。

クイズに強い人はクイズ番組に、ゲームに強い人はゲーム番組に呼ばれます。ぼくのまわりで言うと、AKB48にすごく詳しい人がいたのですが、年配の放送作家の方はAKBのどの子が誰で、どんなキャラなのか知らない。その点、彼はどんな角度からも話せますから、よく番組に呼ばれていました。

——ネタを集めるコツはあるのでしょうか。

日常的にシャワーのようにコンテンツを浴びることです。信頼できる友達が薦めてくれた、ディズニープラスやNetflixxなどでやっている作品は必ず観ます。

また、世の中で流行っていることもチェックして、そのときに引っかかったことやフレーズなどをメモアプリのエバーノートに書き写して蓄積する。とにかくたくさん観て、面白かったものを覚えていることが重要です。

——インプットが大事なのですね。そこから企画案に落とし込む際のポイントは?

再現性がある企画を考えたいと思っています。たとえば、スポーツ・エンターテインメント「SASUKE」のようにどこの国でやっても面白いような企画。タレントパワーに依存していないもの。そういう枠組みみたいなフォーマットを作っていきたい。

——企画の再現性のほか、考慮するといいことはありますか。

人々の消費行動にコンテンツを絡める。アイデアを現代性にフィットさせることが大事だと思っています。恋愛バラエティーで言うと、お見合いパーティーが流行っていたときにはとんねるずさんの『ねるとん紅鯨団』があり、そのあとの海外旅行ブームのときには『あいのり』があり、シェアハウスブームが来たら『テラスハウス』が生まれました。「恋愛×そのときの時流」というように、高いエンタメ性と流行っているものを組み合わせられると強いです。

——企画書の見せ方、提案の仕方で大事なこと、押さえておくとよいことはありますか。

ぼくは、パワポ1枚の企画書にまとめます。企画のストックは常に何百と用意しておいて、相手の要望に合わせて瞬時に出せるようにします。依頼が来てから考えるよりも、呼ばれたときにぱっと出せると楽ですから。日々の習慣として企画は常に考えていますね。

伝えたい熱量や本気でやっていることが見えること

——営業はどうされるのですか。

放送作家の営業は、番組の企画書を書いてディレクターさんや演出家さんに「こういう企画があるんですけど」と提案していくことです。ディレクターさんが上に出して通ったら仕事の依頼が来るという感じですね。

——YouTubeでの仕事に特徴的な依頼はありますか。

番組の話題化ですね。テレビで言うなら視聴率の数字を取るということです。ふだん接していない層にいかにリーチし、いかに世間の話題を集め、いかにバズるかということを求められます。

——今、メディアが着目している視聴者層は?

最近のテレビ局で言うなら、若い人に観てもらおうという指標に切り替わっています。今までは高齢者を意識していたけれど、若い人に見てもらうほうが消費も動き、広告価値が高いという判断になった。だから50歳以下に指標が変わってきた。そのため、出演者も若返り、若い人にアプローチする企画が増えています。

——今、YouTubeにはプロ、アマ問わず参入が増えています。

YouTubeは観た人のリアクションが早く、才能がある人がすぐに結果を出しやすいメディアです。テレビのような枠の取り合いはないし、全員に開かれている。稼ぎたい人も有名になりたい人も、スマホひとつで始められる。漫画やアニメ、スポーツ選手の参入など、今後はジャンルがさらに広がっていくと思います。

——放送作家がYouTubeに参入するようになって、これからアマチュアはどうすればいい?

タレントはイメージや事務所、他の仕事との兼ね合いもありますが、アマチュアは失うものがない強みがあります。視聴者に伝えたい熱量や、本気でやっているのが見えることが大事で、観る人はその熱量に感動して、それなら一回観てみようかなとなる。毎日更新するなど接触頻度が多いに越したことはありませんが、動画の長時間化の傾向もある。毎日更新が無理なら何時間も、あるいは何日もかけて作ったクオリティーの高いものを出して結果を出す人も増えました。

——YouTube放送作家になりたい人にアドバイスを!

YouTubeのキャッチコピーに「好きなことで、生きていく」がありますYouTubeはやらされるのではなく、その人がやりたくて楽しんでやっていることを見せる。それに向いているメディア。でも、それは楽ということではありません。弱肉強食ですし、サステナブル(持続可能)であることもひとつのポイント。実際、無理をしてドロップアウトしていった仲間を何人も見ています。モチベーションを維持して、楽しんでやれる環境にもぐり込むことだと思います。

 

白武ときお
1990年、京都府生まれ。放送作家。担当番組は「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」「霜降りミキXIT」のほか、YouTubeでは「しもふりチューブ」「みんなのかが屋」「ざっくりYouTube 」「ララチューン」など芸人チャンネルに多数参加。

※本記事は2021年7月号に掲載した記事を再掲載したものです。