せきしろの自由律俳句 第100回「記念」結果発表 (2/3)


第 100回 課題: 記念
佳作
記念になりそうで花を摘む この100円玉と同い年だった 今日をこの雪ごと覚えていよう 側から見れば日常という記念日の脆弱 記念植樹をしたことがない人生 オレンジに光る目でピースしている集合写真 振り返ってまた撮る太陽の塔 若い自分がふざけて写っている 整髪料のにおいいつもより強く父 一位獲れなかった証が並んでいる 晴れた日の子どもが泣いている記念写真だ 母の方が喜んでいる写真 レシートの消えかかった文字に思い出を探す 包み紙も綺麗に畳む どちらも忘れていて日常 どんぐりひとつ拾って帰る 新車にもたれる父の写真が何枚も 祖父の遺影囲んで一枚いとこ一同 石に刻んでもう読む人もいない 旅行の記念という言い訳を買う 記念が多すぎて日常 缶ビールの空き缶記念碑のように並べる 命日みたいなひとりの結婚記念日
『記念になりそうで花を摘む』 『この100円玉と同い年だった』 まず言っておきたいのはこの二句は悪くない。むしろ良い。だから私は選句した。ただどちらにも指示語が入っているのでここで指示語について少々述べたい。 『側から見れば日常という記念日の脆弱』 『記念植樹をしたことがない人生』 『オレンジに光る目でピースしている集合写真』 『振り返ってまた撮る太陽の塔』 『若い自分がふざけて写っている』 『整髪料のにおいいつもより強く父』 『一位獲れなかった証が並んでいる』
(福島県 メロンパン 18歳)
(東京都 めめめい 18歳)
(秋田県 日記ニキ 24歳)
(埼玉県 こせきり 19歳)
(福島県 きりんのき 23歳)
(岐阜県 次元 33歳)
(神奈川県 へやぼし 35歳)
(大阪府 石川聡 43歳)
(東京都 根本史紀 54歳)
(栃木県 縦川 島々 35歳)
(大阪府 反時計 25歳)
(東京都 白鳥 37歳)
(東京都 瓢箪 37歳)
(北海道 エリンギ 38歳)
(京都府 Isohama 48歳)
(青森県 しろとと 50歳)
(大阪府 石川かるた 51歳)
(東京都 ビールおかわり 53歳)
(千葉県 xissa 59歳)
(神奈川県 Akiki 59歳)
(石川県 ぼにぃぽりぃ 60歳)
(大阪府 雨あめ 84歳)
(宮城県 五十嵐 舞 53歳)
ちょっとした小さなことがいつまでも残り続ける可能性があることはこの年になるとよりわかる。
『今日をこの雪ごと覚えていよう』
俳句で指示語の扱いは難しく、読み手が情景を想像することをやめてしまうとそこでお終いである。一方、効果的な場合もある。あえての曖昧さやおかしさを出す時もある。私は極力使用しないが、否定はしない。ただ、指示語ではなくても良いのなら、あるいは他の言葉で置き換えることができるのならそちらを選択すべきだと考えている。
『この100円玉と同い年だった』は100円玉を手にした時の状況を指示語のところに入れるとより情景が伝わる。私はめめめいさんがこの句を作った状況を知らないがたとえば「拾った」とか「お釣りで渡された」などが代わりに入るとより鮮明で興味がわく俳句になるだろう。
『今日をこの雪ごと覚えていよう』は、指示語を取ってしまっても問題ない。読みやすくなる。
自分にはなかった視点。たしかにその通りである。外食中に知らない人の誕生日サプライズが始まるのに似ているかもしれない。
私もしたことがない。複数回したことがある人もきっといるのだろう。
フィルムカメラの頃を思い出す。
添削みたくなってしまうが。「集合写真」がなくても記念と思い出は伝わってくるし、リズムも良くなる。良かったら参考にしてもらいたい。
好き感が伝わってきてこちらも嬉しくなる句だ。
もちろん自分も経験がある。思い出と羞恥を同時にくれる句だ。
香りによる特別感。いつも以上の身だしなみ。そんな記念日だ。
たとえば二位でも敢闘賞でも証が貰える。それを「一位獲れなかった」と表現しているのがいつまでも頭に残る。