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せきしろの自由律俳句 第100回「記念」結果発表 (2/3)

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結果発表

 

結果発表

第 100回 課題: 記念

 

 

佳作

記念になりそうで花を摘む
(福島県 メロンパン 18歳)

この100円玉と同い年だった
(東京都 めめめい 18歳)

今日をこの雪ごと覚えていよう
(秋田県 日記ニキ 24歳)

側から見れば日常という記念日の脆弱
(埼玉県 こせきり 19歳)

記念植樹をしたことがない人生
(福島県 きりんのき 23歳)

オレンジに光る目でピースしている集合写真
(岐阜県 次元 33歳)

振り返ってまた撮る太陽の塔
(神奈川県 へやぼし 35歳)

若い自分がふざけて写っている
(大阪府 石川聡 43歳)

整髪料のにおいいつもより強く父
(東京都 根本史紀 54歳)

一位獲れなかった証が並んでいる
(栃木県 縦川 島々 35歳)

晴れた日の子どもが泣いている記念写真だ
(大阪府 反時計 25歳)

母の方が喜んでいる写真
(東京都 白鳥 37歳)

レシートの消えかかった文字に思い出を探す
(東京都 瓢箪 37歳)

包み紙も綺麗に畳む
(北海道 エリンギ 38歳)

どちらも忘れていて日常
(京都府 Isohama 48歳)

どんぐりひとつ拾って帰る
(青森県 しろとと 50歳)

新車にもたれる父の写真が何枚も
(大阪府 石川かるた 51歳)

祖父の遺影囲んで一枚いとこ一同
(東京都 ビールおかわり 53歳)

石に刻んでもう読む人もいない
(千葉県 xissa 59歳)

旅行の記念という言い訳を買う
(神奈川県 Akiki 59歳)

記念が多すぎて日常
(石川県 ぼにぃぽりぃ 60歳)

缶ビールの空き缶記念碑のように並べる
(大阪府 雨あめ 84歳)

命日みたいなひとりの結婚記念日 
(宮城県 五十嵐 舞 53歳)

 

今月の総評

記念になりそうで花を摘む
ちょっとした小さなことがいつまでも残り続ける可能性があることはこの年になるとよりわかる。

『この100円玉と同い年だった』
今日をこの雪ごと覚えていよう』

まず言っておきたいのはこの二句は悪くない。むしろ良い。だから私は選句した。ただどちらにも指示語が入っているのでここで指示語について少々述べたい。
俳句で指示語の扱いは難しく、読み手が情景を想像することをやめてしまうとそこでお終いである。一方、効果的な場合もある。あえての曖昧さやおかしさを出す時もある。私は極力使用しないが、否定はしない。ただ、指示語ではなくても良いのなら、あるいは他の言葉で置き換えることができるのならそちらを選択すべきだと考えている。
『この100円玉と同い年だった』は100円玉を手にした時の状況を指示語のところに入れるとより情景が伝わる。私はめめめいさんがこの句を作った状況を知らないがたとえば「拾った」とか「お釣りで渡された」などが代わりに入るとより鮮明で興味がわく俳句になるだろう。
今日をこの雪ごと覚えていよう』は、指示語を取ってしまっても問題ない。読みやすくなる。

側から見れば日常という記念日の脆弱
自分にはなかった視点。たしかにその通りである。外食中に知らない人の誕生日サプライズが始まるのに似ているかもしれない。

記念植樹をしたことがない人生
私もしたことがない。複数回したことがある人もきっといるのだろう。

オレンジに光る目でピースしている集合写真』 
フィルムカメラの頃を思い出す。
添削みたくなってしまうが。「集合写真」がなくても記念と思い出は伝わってくるし、リズムも良くなる。良かったら参考にしてもらいたい。

振り返ってまた撮る太陽の塔』
好き感が伝わってきてこちらも嬉しくなる句だ。

若い自分がふざけて写っている
もちろん自分も経験がある。思い出と羞恥を同時にくれる句だ。

整髪料のにおいいつもより強く父』
香りによる特別感。いつも以上の身だしなみ。そんな記念日だ。

『一位獲れなかった証が並んでいる』
たとえば二位でも敢闘賞でも証が貰える。それを「一位獲れなかった」と表現しているのがいつまでも頭に残る。

 

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