「はかる」「かえる」「かたい」「おさめる」異字同訓の使い分け 【わずかな違いを判別 見分ける君】


判別1異字同訓の使い分け
漢字には異字同訓があります。字は違うが、訓読みでは同じというものですね。
これは使い分けに困るものがあります。
今回は字義までさかのぼり、使い分ける方法について考えてみます。
(参考資料:金田一秀穂『適当な日本語』)
【はかる】
①計る 時間や数を計る。
②測る 長短、遠近、高低、広狭、圧力、深浅、濃度、温度、速度を測る。
③量る 容積や重さを量る。
数字が出てきたら、「計る」「測る」「量る」のどれかと考えよう。
④図る 意図や計画を図る。
⑤諮る ある問題について意見を尋ね、相談する。「会議に諮る」。
⑥謀る 悪だくみをすること。
やっかいなのは「図る」。
同じ計画でも、悪くなければ「図る」、悪い場合は「謀る」を当てます。
また、未来のことに関しては「促進を図る」「実現を図る」「合理化を図る」「身の安全を図る」のように「図」を使い、よくわからないけれどなんとなくそう思うことは「真意を測る」「動向を測る」「才能を測る」のように「測」を使う。
ただし、「推し量る」のときだけは「量」を使う。
【かえる】
①換える あるものを渡して別のものを得ること。
「空気の入れ換え」「電車の乗り換え」「遺伝子の組み換え」。
②替える 自分の意思でやっていたことをやめて、新しいことを始める。
「建て替え」「植え替え」「模様替え」「日替わり定食」。
③変える 同種の事柄同士ではなく、もっと広い範囲の変化や変更。
「生活を変える」「季節が変わる」「信号が変わる」「顔色が変わる」
④代える 代理・代表。代理であって十分ではないという気持ちがある。
「挨拶に代える」「親代わり」。
ネーミング募集では「○○に替わる名称募集」より「○○に代わる名称募集」のほうが多いのですが、「代替わり」と言うので「替」ではないかな~!
閑話休題。
もっとも悩ましいのは、「換える」と「替える」。
「土の入れかえ」はどうでしょう。
グラウンドの水はけが悪くなり、同じ質の土に入れかえるなら「入れ換え」ですが、粘土質の土から砂土にかえるのなら「入れ替え」と書いたほうがいいかもしれない。
「ポイントをお金に換える」のように等価交換なら「換える」ですが、等価交換ということはあまり多くないので、迷ったら「替える」にするといいみたいです。
【かたい】
①固い ふらふらしないように固定したもの、されたもの。「固い地盤」など、強い力を働かせて動かな
くすること。また、「固い決意」「固い絆」「固い友情」「固い約束」「固い握手」など、強く動か
ず、自分の意思で強くすることができるような事柄に使う。反対語は「ゆるい」。
②堅い 堅実で確実であること。「堅い守備」「義理堅い」「合格は堅い」「手堅い」「堅物」など、つまら
なそうだけど真面目な様子をいい、こちらも自分の意思で調節可能。反対語は「もろい」。
③難い 難しい、容易でない。「許し難い」「想像に難くない」。
④硬い 壊れない、曲がらないような硬さ。「硬い石」「硬い水」「体が硬い」など、自然に硬くなってい
ることが多い。比喩的用法でも「緊張して硬くなる」「態度が硬い」「表情が硬い」など、自分
の意思ではコントロールできないときに使う。反対語は「軟らかい」。
「頭がかたい」はどうでしょうか。
自分の意思ではどうにもならなそうなので「頭が硬い」と書いても間違いではなさそうですが、他人がどうこうしても強く動かないという意味で「頭が固い」と書くようです。ちなみに頭皮が硬い場合は「頭が硬い」になります。
「話がかたい」はどうでしょうか。
頭が「固い」なら、話も「固い」かと思うと、話は強く動かないということではないので「固い」は使えず、「話が堅い」か「話が硬い」になり、となると「堅」か「硬」になりますが、その違いは自分でコントロールできるかどうかでした。
自分の意思で変えられるなら「話が堅い」、自分では変えられず、高尚で軟らかくないという話なら「話が硬い」となります。
【おさめる】
①治める 鎮まるという意味。「乱れる」と対になる言葉で、「暴動を治める」「痛みを治める」「氾濫し
た水を治める」「国を治める」のように使う。
②納める 納付・納入。しっかりと落ち着かせるという意味。「税金を納める」「年貢の納め時」「倉庫に
納める」「鞘に納める」「胸に納める」。これで終わりというときにも使い、「見納め」「仕事納
め」となる。
③収める 入れること。取り込む、収拾すること。「カメラに収める」「勝利を収める」。
④修める 学ぶこと、修行すること。「学業を修める」「身持ちが修まらない」。
「怒り」や「不平」は、乱れたものを鎮めたということでは「治める」のような気がしますが、問題を完全に取り除いたわけではなく、収拾させたということで、「怒りを収める」「不平を収める」の字を当てます。
「サイフにおさめる」はある場所に入れたという意味では「納める」と書きたくなりますが、「しまう」という意味のときは「収める」を使います。