あなたとよむ短歌 テーマ詠「卵料理」佳作・入選 結果発表


それでは、佳作5首のご紹介です!
半熟が好きな彼氏の目玉焼き許してないから焼き尽くす朝
(虎三次さん)
「焼き尽くす」という表現に、まだ燻りつづける怒りが感じられて好きです。カチカチの固焼きにしてやりましょう。それでも彼氏の分まで朝食をつくるところが、なんとも微妙な感情と関係性を表しています。
全滅の十個食卓によみがえり子はいつまでも笑っている
(山和うらさん)
「卵料理」というテーマ詠だからこそおもしろい一首ではありますが、とにかく「全滅の十個」という出だしが絶望的でいいですね。ワンパック全部だめでしたか……。それでも「子はいつまでも笑っている」という大らかさと、明るい黄色で埋めつくされたお皿が輝いているような歌です。
私たちみんな温泉人間と思う温泉卵食べながら
(小町川えりさん)
温泉(の温度)で茹でられた卵が温泉卵なら、私たちは温泉人間ですね。それにしても「温泉人間」という言葉の奇妙さ! こういうふとした気づきが、ちょっとしたSFのような飛躍を見せる一首です。
卵かけご飯には合う専用の醤油あるのに私にはない
(谷まのんさん)
「私にはない」と比べること自体が変だといえばそうなのですが、どうしても「卵かけご飯には、真剣に向き合って専用の醤油まで考える人たちがいるのに、自分のことをは誰も見てくれない」というように、ねじ曲がった、けれども切実な寂しさを感じることはあるものです。
オムレツに砂を一粒入れましたあの日の君と海で拾った
(遊鳥泰隆さん)
卵や貝の料理の、殻や砂が混じっていたときのあの嫌な感じは多くの人が経験したことがあるでしょう。砂を一粒入れたとして「君」はそれに気づくでしょうか? 過去を少し思い出してほしい、なんらかの二人の変化や違和感に気づいてほしい、という願いのようです。
今回からスタート! 入選10首のご紹介です!
生卵割ってカラザを箸で取る やれる元気がある時はやる
(猪山鉱一さん)
マヨネーズ入れ忘れててぼそぼそのたまごサンドは父の自画像
(はしもりさん)
先輩のちくちく言葉を聞きながら醤油に浸かる卵黄想う
(さとうきいろさん)
ゆで卵まるまる口に入れたまま喋れる言葉は限られている
(斎藤光一郎さん)
醤油より卵が先かその逆か決められぬまま俺は死ぬのか
(斎藤光一郎さん)
ゆで卵時間に合わせ変身し誰かの好みに合わせている
(橋本かなさん)
本当は卵サンドが好きなんじゃなくてキュウリの塩味が好き
(久方リンネさん)
たまご寿司ばかり食べてた年齢の僕を演じる祖父の前では
(小野たまさん)
ゆで卵の輪切りを皿に並べてる 明日はCTスキャンを撮る日
(泰源さん)