【著作権Q&A】「これってパクリ?」既存作とストーリーが似た時の対処法とルール


こちら創作者の疑問解決エージェンシー
公募や創作の局面に限定し、著作権や公募のルールを解説する!
Q.ストーリーが似ていると言われました。応募しても大丈夫ですか。
A.アイデアには著作権はありません。
既存の作品が頭になければ似ない
ストーリーは著作物ではない。既存の作品とあなたの作品のあらすじがうり二つでも問題ない。
しかし、そうとはいえ、やり方次第ではアイデアの借用の範囲を超え、表現の借用になり得る。
「具体的なストーリー、エピソード、台詞などをある程度まで借用した場合には、表現を借りています。(中略)言いまわしを少し変えた程度ではもちろん駄目です」(福井健策『改訂版 著作権とは何か――文化と創造のゆくえ』)
ストーリーに関しては、「幸せになるために素敵な男性と巡り合おうとする話」のような筋についてはそっくりでかまわない。ただし、具体的な設定や展開などがもろに何カ所も似ているとなると、程度によっては問題になる。
文章の場合はどうか。この場合はまず既存の作品が著作物かどうかを見る。川端康成『雪国』の冒頭〈国境の長いトンネルを抜けると雪国だった〉は名文ではあるが、この部分だけでは短すぎて著作物とは言えないという研究者もいる。つまり、ある一行ぐらいならすっかり同じであっても問題にはならないということだ。
引き写したように似ている文章がいくつもある場合はどうだろう。そんな偶然はあり得ないから、著作権侵害とされる可能性が大きい。しかし、意識的にも既存の作品を忘れて創作すれば、何カ所にもわたって表現までそっくりになるということはないはずだ。
同じでも問題なし
短い名前
タイトルや主人公の名前は著作物ではない。ベストセラーのタイトルも、有名なキャラクター名も著作権法上は使って問題ない(登録商標の場合でも文芸作品の文章中で使う分には商標権の侵害にはならない)。
ただし、極めて個性的なタイトルや、「寿限無寿限無……」のように長大な人物名となると著作物になり得る。
テーマ
テーマや題材、時代設定、舞台設定、登場人物の性格、視点の持たせ方や回想シーンの入れ方など手法も著作物ではない。
雰囲気
雰囲気、印象、イメージ、世界観は似ていてかまわない。文体も、センテンスが長い、短い、歯切れがいい、描写が重厚といった形になっていないものはまねしてよい。
ワンポイントQ&A
Q.著作権切れの作品の続編や改変はよいか
A.著作権が消滅した作品は自由に複製でき、複製したものを公表できる。ただ、改変となるとやり方によっては著者者人格権の侵害となる。続編を書く場合は、相手の名誉を傷つけないなど著者者人格権に配慮したい。
Q.固有名詞を使っていい?
A.文芸作品に固有名詞(登録商標を含む)を出してもかまわない。「マック」と書いたほうが絵が浮かぶと思えばそうすればいい。ただ、悪意があったり、殺人現場にするような場合は普通名詞にするなどの配慮をしたい。
Q.同じ題材で何度も応募していいですか。
A.別の作品と言えるのなら問題ありません。
入選した作品は、自作でも他人のもの
たとえば、「東日本大震災」という題材でエッセイを書いて、入選したとしよう。すると、「東日本大震災」で経験したエピソードはもう二度と書けないのかというと、そんなことはない。
ただし、著作権は主催者に譲渡されていることを前提にすれば、自分で書いたものでも、著作権者は主催者。だから、同じテーマであっても、違う表現を使って書くように工夫しよう。
この場合、前の作品のことは忘れ、新たな作品を作る意識で書けば、同じにはならないはず。「入賞作品の著作権は応募者に帰属」という場合もあるが、この場合はどうだろう。
これから応募する公募の規定に「他の公募に応募したことのない作品」という規定がなければ著作権法上は問題ないが、「オリジナル」という規定にひっかかるかもしれない。法的には問題なくても入選作品での再応募はやめよう。
発言や資料も、著作物になる得る
他人の体験を題材に、自分の言葉でまとめた場合はどうだろう。
著作権法上も書いてかまわない。問題があるとすれば、プライバシーの侵害だが、心配なら本人の承諾を得ておくとよい。連絡先がわからない場合は、個人が特定されないように書けば問題ない。
他人から聞いた話を、相手が言ったまま文字起こしするように書く場合はどうか。発言にも著作権が発生し得るので、言ったままでは問題だが、工夫してまとめたのであれば自分の著作物だ。
資料がある場合、事実やデータ、ありふれた表現は写していいが、表現の部分は借用できない。別の表現に書き換える必要がある。
ここが違えばだいたい大丈夫!
ジャンル
同じ題材で書き直す場合、別ジャンルにすれば自ずと違う作品になる。それも作文と随筆のような近接ジャンルでなく、全く違うジャンルにするといい。
テーマ
同じジャンルで書き直す場合でも、テーマが変われば、言いまわしを変えた程度の修正では済まないはずだから、書き上がったものは自ずと別作品になる。
枚数(長さ)
題材、ジャンル、テーマが同じでも、枚数が大きく違うと中身も変わる。加えてエピソードの内容や出し方、ウェイトを変えれば印象はかなり違ってくる。
この程度ではNG
前に書いた文章(原文)
推敲というと、最後にざっと素読みすることだと思っている人も多いが、それは推敲の最後の最後、確認のような作業だ。推敲には少なくとも三度の工程があり、それは第一稿が書き上がったときから始まる。第一稿ができると「終わった!」と喜んでしまいがちだが、実はこの時点ではまだ道半ばだ。
書き直した文章(書き換えた文)
推敲とは、最後に一通り目を通すことだと思っている人も多い。しかし、それは最後の最後にする確認作業のようなものだ。推敲には三度の工程がある。最初は第一稿が書き上がった直後に始まる。第一稿が書き上がると「完成した!」と喜んでしまうのも人情だが、実はこの時点では完成度50%。
※本記事は2021年6月号に掲載した記事を再掲載したものです。