【公募の「これってOK?」を本音で語る】二重投稿・焼き直し・盗作の境界線とは? 読者3人の座談会


応募のときの「?」を話そう 読書座談会
日々、公募生活を送っている読者さん3人とオンライン座談会を実施。創作するときや応募するときの「これってどうなの?」を話し合い、リアルなお悩みに迫ります。
静さん
1960年生まれ。多忙な勤務と公募の両立生活を40年送ってきたが、今年の春に退職。今後は公募ライフを満喫する予定で、長編小説での受賞が目標。
あまくみさん
1972年生まれ。子どもが生まれて一時期は公募から離れていたものの、最近子育てが落ち着いてきたので再開。川柳や標語などを中心に応募している。
井上さん
1999年生まれ。現役の大学生で、公募を始めて3年目。電車通学の時間を使って、公募ガイドONLINEを見ながらできそうなものにどんどん応募するスタイル。
ジャンルでも異なる応募のルールと悩み
——得意ジャンルも公募歴もバラバラの読者の方3人に、応募に関する疑問を率直に語り合っていただきたいと思います。さっそくですが、それぞれのお悩みを教えてください。
静 私は、同じ題材を扱って応募する際の書き分け、どこからが二重投稿になるのかが特に気にかか
る部分ですね。たとえば最近ですと、プロゴルファーの松山英樹選手のマスターズ優勝について複数の文章を書いて、新聞などに投稿しました。いずれもネタは松山選手の歴史的快挙に関してですが、内容や切り口は全く異なるものに仕上がるよう配慮しました。そのあたりの機微には細心の注意を払いますね。
あ 過去に発表したり入賞したりした作品は、どれくらいまで焼き直しをすれば許されるのかなというのも気になりますね。若い頃に、「仕事の忙しさ」という題材で1句詠んで入賞したことがあります。でも今は全然ちがう忙しさを感じているので、またそのことを詠みたくて。それって単語が変わるくらいじゃダメなのかなとか。発想や手法が同じなのはいいのかなと悩みます。
井 僕も川柳や標語をよく作るので、「単語ちがい」は盗作にならないのか?「てにをは」くらいのちがいだとどうなのか?などはいつも気になっています。特に標語って、毎年受賞作の中に同じ単語が入っているものもあるじゃないですか。そういうコンテストに応募するときは、その単語を入れたほうがいいのかなと思うけれど、そうすると知らないうちに過去の受賞作とかぶってしまわないかとドキドキします。
あ それ、よくわかります。気がつかずに盗作になっていそうで怖いし、ルールとは関係ないですが、その単語を使わず自由に創作してみたいという葛藤もあります。
静 そういう場合、私はそのフレーズを「制服」と捉えて創作に取り組んでいました。制服はみんな同じだけれど、それ以外でどう個性を出すかという勝負だと。だからあえてそのフレーズとはかけ離れたニュアンスの言葉をコラボさせるよう意識していました。そうするとかぶる心配もないし、むしろキラリと光るはずです。
井 なるほど、制服ですか。面白いですね。
静 それから、過去の作品の改編については、20代の頃に恋のエッセイを書いたことがあるんですが、その作品を59歳になってから小説に焼き直したんです。今度は女性視点で書いてみました。ジャンルを変えて視点も変えて、そこまですれば大丈夫だと思っています。
——そうですね、そこまですれば全く別の作品ですね。
あ 書くときはそれくらい慎重になりますよね。たぶん実際はそこまでしなくてもルール違反にはならないんでしょうけど。
井 僕はまだ、以前に書いた作品を書き直してみようと思ったこと自体がないので、公募歴の長さによっても悩みや対処法は変わるんですね。
「法的にはOK」でも個人的にはモヤっと
——みなさんやはり慎重ですね。聞いている限りだと、問題なさそうなものもありますが。
あ そうですね。たとえば手法が同じというだけのものは、法的にはおそらく問題ないと思うのですが、自分的にはモヤモヤすることが多いかなあ。
静 創作に関してはそうですよね。法的には許されても、自分自身がなんだか納得がいかない。けれど、長く公募をやっていると「この人、またもや同じパターンの踏襲で採用されているな」と残念に思うこともあります。
——それも、問題はないかもしれないけれどモヤモヤする場面ですね。そのほかにも応募のルールで気になるものはありますか?
あ 固有名詞は入れていいのかなというのも気になっていますね。電車やバスからヒントを得て書こうとしたものがあったのですが、実際の名前を出していいのかなと迷いました。
——これは、長編小説もお書きになる静さんいかがですか?
静 小説だとそこまで気にしなくていいと思います。小説は虚構というのが前提ですから。でもエッセイの場合は、実在の人物が存在するので、固有名詞の処理には関係者の了解をほぼ必ずとります。これもあくまでジャンルによってちがうのではないでしょうか。
——なるほど。それから静さんは事前アンケートで引用についてあげておられました。詳しく教えてください。
静 小説において、引用をすることがあるかと思います。論文ならば、原文を正確に用いて注釈を記すというルールがすでに定着しているわけですが、小説では注釈だらけにすると文章のリズムを損なってしまいます。ですから時にはぼかすこともあります。文献リストをどの程度まで載せればよいのかなども、まだまだつかめていないのが実状かもしれません。
——小説を書く方には多いお悩みですね。応募規定では明記されていない、難しい部分です。
あ 応募規定といえば、受賞作の著作権の所在が明記されていない公募で困ったことがありました。動物のネーミングの公募で、私の考えた名前が採用されたのですが、その名前をまた別ジャンルの公募でも使っていいのかなと。きちんと確認しなかった私の落ち度でもありますが、主催者側も著作権やルールについてどう考えているのか知りたいですね。
井 そもそも主催者って、盗用かどうかなどはどれくらいまで調べるんでしょうか。
静 大抵はきちんとチェックしてくださっていると信じていますが、日本中には何万もの公募がありますから、なかには甘いものもあるでしょうね。
——応募する際には、応募者側だけでなくて主催者側にも、双方のルールの意識が必要ですね。
※本記事は2021年6月号に掲載した記事を再掲載したものです。