【創作歴10年以上の書き手3人が本音で語る】「私が書く意味ある?」リアルな悩みと乗り越え方


書けない読者の座談会
「書けない」悩みを持つ読者3人による座談会を開催しました。書けない自分にどう向き合ってどう乗り越えるか?等身大の、現在進行形の、渦中の、3人の語りは共感することばかりです。
大西さん
執筆歴は20年以上。ブランクを挟みつつも高校生から創作を続けている。公募以外に小説投稿サイトへの投稿も行う。最近ヨガをはじめた。
桜井さん
執筆歴は10年以上。主に公募へ応募するために創作している。長編は半年に1本のペースで執筆。趣味は神社仏閣巡りで、神社検定に挑戦中。
大野さん
執筆歴は10年ほど。主に公募へ応募するために創作している。友人と添削し合いながら執筆することも。マイブームは卵焼きをきれいに作ること。
私が書く意味ある?落ちたら全部無駄?
——それでは、それぞれのお悩みを中心にみていきましょう。大西さんの「SNSでほかの人の活躍を知ると気力がなくなる」は現代ではあるあるのお悩みですね。
大西 自分が書いたものにすぐ反応をもらえて、それがやる気につながる場面も多々あるのですが、人と比較してしまうこともどうしてもあります。私はみんなに「いいね」を押すだけの人になっているんじゃないかなと思うことも……。小説の投稿サイトでもランキングなどがあるので、すごい人が目につきやすいんですよね。こんなにすごい人がいるなら私が書く意味ってあるのかなと考えてしまいます。
桜井 私はSNSや小説サイトへの投稿はしていなくて、基本的に公募だけなので、創作のつながりがある方に対して「見てもらえてうらやましい」という気持ちがありますよ。半年かけてやっと書いても、落ちたら本当に誰の目にも触れないままですから。
大野 私は創作用のTwitterアカウントを持っていますが、非公開に設定して、本当に仲の良い数人とだけつながっています。誰かが「今日はこれくらい書けた!」とつぶやいているのを見ると「自分も頑張ろう」と思えます。
——SNSの活用はそれぞれ違うようですね。
桜井 SNSはしないですが、「人と比べてしまう」という悩みはとてもよくわかります。自分が考えていたものと似た題材で、自分よりずっとうまく書けている小説を読むと「もうこんなに面白いものがあるなら自分が書く必要はないんじゃないか」と思って筆がとまることはよくあります。ちなみに最近だと、比べるのもおこがましいですが、宇佐見りんさんの『推し、燃ゆ』でした。「推し」を題材に、こんなにうまく書けるのかと、感心しっぱなしでした。
——桜井さんのお悩みは「私生活でつらいことがあると書けなくなる」ですが、皆さんはいかがですか?
大西 それはやっぱりあることだと思います。私生活で気を取られたり悲しいことがあったりすると、創作どころじゃなくなりますよね。
大野 私生活でつらいことがあったら、私は逆に創作に逃げ込んじゃうタイプです。悲しくてもすべて書いて吐き出します。
桜井 そういう方もいますよね。いま聞いていて思い出したのですが、私生活での悲しいことと、予選落ちの連絡が重なって、書かなくなったんです。もう傷つきたくないって、思ったのかなあ。
大野 1次で落ちると、特に思いますよね。出したときはもう自信満々なんですけど、結果が来て1次も通らなかったとわかると「出した意味あったのかな」とか「かけた時間が全部無駄だったのかな」か、思っちゃいます。応募したコンテストのTwitterも、発表があるまでは真剣に見ているけど、落ちた瞬間にフォロー外します(笑)。あとは、入選したとしても出版されるわけじゃないものもたくさんありますし、これを続けて本当にデビューできるのかなと考え始めると、後ろ向きになります。
——全部無駄だったと思ってしまうとつらいですね。
大西 私は落ちたから無駄だったとはそこまで思わないかも。書き上げたからには、「悔しいけど書きたいものは書けた」という満足感はありますね。
大野 あ〜、たしかに。私が無駄だと感じるのは、自分はそこまで書きたいネタじゃないけど、公募のお題で書けそうだから書いたときやちょっと入選を狙って書いたときが多いですね。
——次は大野さんのお悩みです。「締め切りまで延ばしてしまう」とのことですが。
大西 これはまったく一緒です!締め切りから逆算して、ギリギリいけるかな?を狙ってしまいます。それで結局は中途半端なものを出すこともあります……。
大野 そうなんですよ〜!
大西 スケジュール管理できる方、とても尊敬します。桜井さんはいかがですか?
桜井 じつは私はかなり余裕をもって仕上げる派なんです。推敲と校正に2カ月くらいは取ります。たぶんお二人に比べて筆が遅くて、長編は半年で1作くらいしか書けないとわかっているので、最初からそれぐらいのスケジュールを立てています。
大野 なるほど、すごい。推敲を丁寧にされるんですね。ちなみに私は、書いたら人に読んでもらうのを推敲にしています。
桜井 見てもらうのいいですね!
1年書けなくても消えなかった「書きたい」
——さて、話が変わりますが、皆さんの「書けない」を乗り越えた経験も教えてください。
大西 私も落ちたことがきっかけで、1年間書けなかったことがありました。本当にショックで苦しくて、どうしたらいいかもわからなくて、しばらく創作から離れていました。でも「もう書かない」と思って離れているあいだも「こんなストーリーはどうだろう」とか、どこかで考えてはいるんですよね。あるとき思い切って、難しいこと抜きでプロットも考えずにキャラを2人だけ決めて書き始めました。そうしたらすっと書けて、投稿サイトでの反応も良くて、待っていれば時期が来てくれるのかなと思いました。
桜井 私は以前も書くのをやめた時期がありました。そのときは創作する人が身の回りに全然いなくて、ひとりでずっとやっていたので「私ももっと遊びたい!」ってやめました。小説は完全に書かないつもりで。でもあるとき、車を運転していたらものすごく涙が出てきて、「小説書きたい」って思ったんです。それで、泣くくらいなら書こうと決めて再開しました。
大野 私は大きなブランクはないのですが、出したい公募があったときだけ書くという感じなので、3カ月空くこととかはよくあります。そんなときは自分のリズムを取り戻すのに苦労しますね。
——最後に、皆さんからほかの参加者の方に質問があれば。
大西 書けないと言えば、自分が知らないものは書けないというのが少し悩みで、皆さんは取材とかしていますか?
桜井 私はネットで調べるのが主ですかね。ホストの小説を書いたときは、ホストの方が投稿されているYouTubeを見て勉強しました。
大野 私は、お寺のことを題材にした小説のときは、まだ学生だったのもあってお寺でバイトしました。やっぱり実際に行ってみると発見もあってよかったです。
桜井 バイトするのいいですね! 私の質問もいいですか? 皆さんは自分が落ちた文学賞の受賞作読めますか? 私は嫉妬したり絶望したりしちゃうので読めなくて。買ってはあるんですが2年くらい読めていないものも。
大野 読めないですね〜。一時期は本屋さんにも行けなくなりました。仕事からの帰り道に本屋さんがあるんですけど、受賞作が並んでいると思うと嫌で嫌で仕方なかったですね(笑)。
大西 私も読めないです。読むとしても何カ月か経ったあとに、ちょっと上から目線で「あ〜こんな感じね」とか思いながら読みます(笑)。
——最後だけ満場一致でしたね(笑)。ありがとうございました!
※本記事は2021年10月号に掲載した記事を再掲載したものです。