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【悲しみをユーモアに変える作家の創作哲学】こだまさんはなぜ書き続けるのか|人生とエッセイの原点

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人生の苦しいことも、書いて前向きになれた書いて救われてきた

2017年のデビュー以来、人生で起こる悲しみにユーモアを添えてつづるエッセイで多くのファンを獲得してきたこだまさん。彼女はなぜ「書く」のだろうか。

小学生の頃から話す代わりに書き続けている

——こだまさんが「書く」ことをはじめられたのはいつ頃ですか。

小学生のときに日記をつけはじめたのが最初かもしれません。日記は学生の間ずっと書いていました。でも生活を記録するっていうわけではなくて、友だちが少なくて話し相手がいなかったのでその代わりという感じ。おしゃべりが本当に苦手で、書けば思っていることを自分のペースで表に出せるぞと気づいてからはいろいろと書いていました。20代の頃はちょうどブログ最盛期だったので、ネット投稿もずいぶんしました。

——日記が話し相手なんてアンネの日記みたいです。こだまさんの「書く」は私たちの「しゃべる」と同じということですかね。

みんなの「しゃべる」=私の「書く」は本当にその通りです。今も何をしゃべっているやらすでにわからなくなりつつあるのですが、文章なら何度も確かめられるので表現できるんです。私にはしゃべるより書くほうが合っているんだと感じます。

今は商業作家として書いたものでお金をいただいていますが、もしもそうじゃなくなったとしても、違う形や違う場所で書き続けるということは断言できると思います。どんな形であってもいつまでも書いていたいです。

悲しいけどクスリと笑えるエッセイを

——こだまさんといえば災難つづきの生活の面白さが特徴ですよね。なにかこだわりはありますか。

悲しい話や身の回りの事件を多く書きますが、でも絶対に「悲しいだけ」にはしたくないですね。ある出来事を書くのに、ただ悲しくつらい話にするか面白さもある話にするかは書き手次第です。私はできるだけユーモアのある方向に流れるように心がけています。

書きはじめた最初の頃はもっと沈んだ話も多かったんですが、そのうち「自分の苦しみ以上の人なんていっぱいいるのにそれだけを書いていてもなあ」と思うようになり、クスリと笑えるエッセイにしようと決めました。

——デビュー作『夫のちんぽが入らない』もユーモアを感じさせる部分がありますね。ちなみに、書くことに恥ずかしさはなかったのでしょうか。

もともとは文学フリマに出すために書いた作品でした。一緒に同人誌を出す知人から「どうせなら普段は書かないようなことを書きなよ」って言われて、たしかに100冊くらいしか出さないしいいかなと思って書いたんです。それがなんと書籍化されて、とても恥ずかしかったです。けれど最初に殻を破ってしまったので、逆に今はどんなことでも書けるようになりました。

「おしまいの地」 この僻地で、書き続けたい

——『いまだ、おしまいの地』は3冊目の著作ですが、作品に変化はありましたか。

実家も今住んでいる所も僻地なのですが、過去の面白かったことは前作でほとんど書き尽くしてしまったので、今回は現在のことを中心に書きました。今までは事件性の面白さが強かったけれど、これからはもっと日常のことを書きたいと考えています。デビュー作の後に「一発屋だ」という声をいただくことがあり、それが悔しくって内容以外で頑張るぞという気持ちになっている面もあります。

——今は日々ネタ探しをしている感じでしょうか。

そうです、日常生活のことに加えて、今年でいえばコロナのこととか。田舎でどんどん自粛自粛になっていく状況をレポートするつもりでメモを取りました。

——そういった閉塞感のある田舎暮らしに息苦しさはないですか。

面白いなと感じることも多いですよ。住んでいる地域を明かしていないので書けないことが多くて悔しいくらい。田舎の山奥に住んでいながら、それを書き続けるのが私の特徴だと思っていますし、そういう書き手になりたいです。

書き続けて「変化した」2つのこと

「つらいこと」が怖くなくなった

病気のことなどつらいこともたくさんありますが、「つらいけどこれは書けるな」と思うと勇気になります。感情のこもっていることはネタになりますから。つらければつらいほど、はしゃいじゃうくらいです。

「前向き」「外向き」になった

そもそも書くことで救われたり出会いがあったりしていましたが、最近はネタを探してさらに外に目を向けるように。書くために前向きになり、書くことでまた前向きになりと、少しずつ進んでいる最中です。

こだまエッセイの面白さ

まるでピカソのバラ色時代のよう

バラ色時代とは、青みがかった薄桃色を特徴とした、悲しみと明るさが混在した画風のこと。こだまエッセイはまさにそんな味わい。出来事だけを並べれば「詐欺」「夫のパニック障害」などとても幸せには見えないが、彼女の筆にかかれば「悲しいのに笑える」エッセイに。ユーモアを織り交ぜて淡々と書かれた作品は、読んだ人の悲しみも和らげる。

にじみ出る人間性のおかしみ

災難に見舞われがちなおしまいの地での生活。でもそれに打ちひしがれたりはしない。たとえば、うつの診断がくだったときの話では「自己免疫疾患由来の鬱」を「植物由来の乳酸菌」みたいで好感が持てるとつづった。そんな場面でそんな発想ができる⁉と読んでいて驚くような視点だ。彼女自身の考え方やキャラクターも非常に魅力的。
 

こだま
2017年に私小説『夫のちんぽが入らない』でデビュー。2018年、エッセイ集『ここは、おしまいの地』で第34回講談社エッセイ賞を受賞。2020年9月にその続編となる『いまだ、おしまいの地』を刊行。

『ここは、おしまいの地』(講談社文庫・660円+税)
“おしまいの地”にある実家は訪問販売の餌食だったこと。卒業文集で「早死にしそうな人」ランキングで1位を獲得したこと。見事なまでに災難だらけの半生をつづったエッセイ集。

『いまだ、おしまいの地』(太田出版・1300円+税)
何もない“おしまいの地"で暮らす人たちは、一生懸命だけどどこかがおかしい。とあるオンラインゲームで「神」と崇められる夫、40万円の詐欺に遭う妻こだま。主婦であり、作家であるこだまさんの日々の生活を切り取った最新エッセイ集。

※本記事は2021年1月号に掲載した記事を再掲載したものです。