あなたとよむ短歌 vol.33 テーマ詠「ホラー」結果発表 ~型は大切に~
テーマ詠で短歌を募集し、歌人・柴田葵さんと一緒に短歌をよむ(詠む・読む)連載。
(『母の愛、僕のラブ』より)
テーマ詠「ホラー」結果発表 ~型は大切に~
連載「あなたとよむ短歌」、9月からテーマ詠の募集になりました!
どこかに応募した作品も、未発表の作品もぜひご投稿ください(著作権がご自身にある作品に限ります)。
テーマ詠は、その単語を短歌のなかに入れても入れなくてもOKです。そのテーマにあった短歌をお寄せください。
今回のテーマは「ホラー」。短歌のテーマとしては珍しいかもしれません。まずは最優秀賞の発表です。
すべて私のせいにされてる
最後まで読むとわかる、まさかの「死者から目線」。悪いことが発生するとすべて「あいつの呪いだ、怨念だ」と死んだ自分のせいになるのを見ている、幽霊の短歌です。面倒事を死者に押しつけているのは生きている人たち。結局は、生きている人間が最も怖いのかもしれません。
短歌の定型(57577のリズム)をきっちり踏まえることで、読みやすいだけでなく、静かな諦念も伝わってくる一首です。死んでしまったら訂正することもできません。何を言われても受け入れるしかないのです。なんだか泣けてきます。
続いて、優秀賞2首です。
指切ったあの子の肘から上を知らない
これは怖い。たしかに「指切りげんまん」をするときには指を見るので、視界には相手の肘ぐらいまでしか入りません。いったい、何者と約束してしまったんでしょうか。この一首の迫力は「肘から上」という単語にあるのではないでしょうか。「正体を知らない」「顔を知らない」という発想は出てきやすいかもしれませんが、「肘から上」と踏み込んで描写することで、人体の構造や肉体の生々しさが想起されます。
今は亡き同僚の席光るパソコン
今回の募集でもっとも切なくなった一首です。深夜まで一人で残って残業をしていると幽霊が……という怪談話はよくありますが、この一首では亡くなった同僚の席のパソコンが光っています。そこで、怖さではなく「ああ、あいつ、死んでまで残業しているんだな」と気づく。おそらくこの同僚の死は、度重なる残業も要因だったのでしょう。テーマ詠「ホラー」としても優れていますが、テーマを前提にせずとも確立している作品です。
佳作のご紹介です!
最後に、ぜひもう一度推敲してみていただきたい一首です。
見ないようにして去る
今回は「ホラー」というテーマだったためか、短歌の定型を大幅に崩した作品が多かったように感じました。リズムを崩すことで、不穏さや緊迫感を表現できる場合もあります。
ただ、定型をあえて崩す場合は、本当にそれが効果的かをよくよく推敲してみてください。定型を崩すことで、読みづらさが勝ったり、ガタガタした印象を読み手に与える可能性があります。応募の前に、5回くらい音読するのがオススメです。
みえるてさんの作品は、着眼点がすばらしい一首。「家庭ゴミの割には少し大きい」という、そこはかとない違和感がなんとも効いています。「見ないようにして去る」というのもリアリティがあってたまりません。何が入っていたんでしょうね。
淡々とした怖さを描いているだけに、もう少し定型に寄せてもいいかもしれません。たとえば、
気のせいだろう何も見てない
家庭ゴミの(6)割に大きい(7)気もするが(5)気のせいだろう(7)何も見てない(7)。一句目だけ6音ですが、ほぼ定型におさまりました。
「気もするが気のせいだろう」と、あくまで自分の「気」の持ちようである点を強調しました。「何も見てない」とあえて言うことで、何かを見た可能性を示唆できそうです。読み手に「31音以外の要素」を想像させる短歌という型は、もしかしたらホラーに向いているかもしれません。
作品のご投稿ありがとうございました。引き続き、テーマ詠「家事」を募集しています!
応募規定 | 短歌(57577)を募集します。 テーマは「家事」。 応募点数制限なし。 |
応募方法 | 応募フォームもしくはTwitterでご応募ください。Twitterの場合は公募ガイド公式アカウント「@kouboguide」をフォローして、ハッシュタグ「#あなたとよむ短歌家事」をつけてツイートしてください。 ※応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。 |
賞 | 最優秀賞1点=Amazonギフト券3000円分 優秀賞2点=Amazonギフト券1000円分 佳作数点=ウェブ掲載 ※該当作品なしの場合があります。 ※作品を記事内で推敲する場合があります。 |
締切 | 2022年12月31日 |
発表 | 2023年2月1日 |