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体言止めをやめると切なさがもっと伝わる あなたとよむ短歌

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川柳・俳句・短歌・詩
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あなたとよむ短歌
vol.20
細かな工夫

なんと、この連載も20回目になりました。
読者のみなさんが、大事な作品を投稿してくださっていることで成り立つ連載です。毎回、本当にありがとうございます。もちろん、読んでくださっているみなさんにもお礼を言いたい気持ちです。

WEBから投稿できるので、ぜひお気軽に作品をお寄せくださいね。それでは、今月もみなさんの一首を読んで・詠んでいきましょう!

元気です会えない君へ送るメールちょっと寂しい定時報告
(荻野直樹さん/大樹生命「短歌で想いを伝えタイジュ!」コンクール応募作品)


荻野さんの短歌は、切ない思いが伝わる一首。親子か、恋人同士でしょうか。コロナ禍のせいなのか、遠距離に住んでいるのか、会うことが叶わない日々を詠んだものですね。
定期的に様子を知らせようとは思うものの、定期的に送れば送るほど書くこともなくなり、「元気です」とつい「ですます調」になってしまう……誰でも身に覚えがあるのではないでしょうか。

大樹生命の主催する短歌コンクールは、今年、第7回を迎えました。この短歌コンクールの過去の入選作品をみると、57577の定型にとらわれない、のびのびとした作品も多く入選しています。けれども、やはり定型を意識してみると、グッと一首が引き締まります。

『元気です』会えない君へ打つメールちょっと寂しい定時報告

3音の「送る」を2音の「打つ」にしてみました。これで定型におさまります。「打つ」は手書きでもなく、声でもない、デジタル情報らしさが表れる動詞です。
また、「元気です」をカッコに入れて読みやすくしました。あえて二重かぎカッコにすることで、会話ではなく、あくまで『文字』だという雰囲気が出るかもしれません。
この変化だけで、かなり読みやすく、リズムが整った一首になったのではないでしょうか。

さらにもう一歩。上句(575)と下句(77)の末尾に注目します。「メール」と「定時報告」どちらも体言止めになっていますね。
名詞で終わる「体言止め」は標語などに用いられることが多く、口上のようにビシッと決まる雰囲気がでます。短歌でもつい使いがちですが、多用しすぎると微妙な機微が表現しづらくなる欠点もあります。
この一首も、体言止めでない方が雰囲気が出るかもしれません。

『元気です』会えない君へ打つメール定時報告すれば寂しい

「寂しい」と「定時報告」の位置をひっくり返してみました。定時報告をするたびに募る、ぽっかり空いた心の空白が感じられる気がします。

引き続き、一緒に「読む・詠む」短歌を募集中です。コンテストだけでなく、新聞歌壇、雑誌投稿、WEB投稿の短歌(投稿できなかった短歌)もお待ちしています!

 
■講師プロフィール
柴田 葵 1982年、神奈川県生まれ。元銀行員、現在はライター。「NHK短歌」や雑誌ダ・ヴィンチ「短歌ください」、短歌×写真のフリーペーパー「うたらば」への投稿を経て、育児クラスタ短歌サークル「いくらたん」、詩・俳句・短歌同人「Qai(クヮイ)」に参加。第6回現代短歌社賞候補。第2回石井僚一短歌賞次席「ぺらぺらなおでん」。第1回笹井宏之賞大賞「母の愛、僕のラブ」。
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応募規定 ペンネームと、入選を逃した公募タイトル・応募した作品・お題やテーマ(ある場合のみ)をお送りください。
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