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ヨルモの「小説の取扱説明書」~その31 小説の構成法~

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作文・エッセイ
小説の取説

 

公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。

第31回のテーマは、「小説の構成法」です。

小説にも応用できる三幕構成法

構成法というと、起承転結を思い出しますが、これは漢詩の構成法ですから、小説には応用しにくい部分があります。

ここでは、ギリシャ劇の時代からあり、ハリウッド映画の構成法としても有名な三幕構成について解説します。

その際、話をわかりやすくするために、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」を例にとります。結末にも触れますので、観ていない方はネタバレにご注意ください。

カタリストとセントラルクエスチョン

物語には、主人公の目的(セントラルクエスチョン)とカタリスト(目的を持つきっかけとなる出来事)が必要です。

以下、それぞれを説明します。

●セントラルクエスチョン

セントラルクエスチョンは、主人公の目的、およびその目的は実現するのかという問いです。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で言うと、「30年前の過去にタイムスリップしてしまったマーティーは、もとの世界に戻ってこられるのか」というのがセントラルクエスチョンです。観客や読者は、ずっとこの問いを追いかけていくわけです。

●カタリスト

カタリストは、主人公が物語上の目的を持つきっかけになる出来事のことです。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で言うと、時限転移装置を発明したするドクがこれについて話す場面がそうです。

第一幕は、設定編

では、第一幕から説明していきましょう。

〔第一幕〕

第一幕は、設定編です。

分量は、全体の1/4です。全体が100枚なら25枚ぐらいです。

 

セットアップ

三幕構成では、第一幕の冒頭にセットアップと呼ばれる導入部があります。ここでは、これから始まる話がどんな話なのか、「いつ、どこで、誰が」といったことを示します。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で言うと、主人公のマーティーはバンドオーディションに落ち、恋人のジェニファーとデートして、両親が出てきて、父ジョージの上司のビフが出てくるといったあたりがセットアップになります。

 

第一ターニングポイント

ターニングポイントは、主人公に行動を起こさせ、物語の方向を転換させる出来事のことです。

第一幕の終わりには、第一ターニングポイントがあります。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で言うと、デロリアンが時速140キロに達した瞬間、1955年にタイムスリップしてしまい、どこかの家の納屋に突っ込む場面がそうでです。ここでガラっと舞台が変わります。

第二幕は、展開編

〔第二幕〕

第二幕は、展開編です。

分量は、全体の1/2です。全体が100枚なら50枚ぐらいです。

第二幕では、第一幕の設定が破れ、話が展開します。

端的に言うと、主人公の目的が阻害され、主人公は困ります。目的が遠ざかります。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で言うと、もとの1985年に戻りたいのに、1955年当時にはデロリアンを動かす1.21ジゴワットという動力はなく、おまけに両親の出会いを邪魔してしまって、このまま帰っても自分が生まれないという帰るに帰ればない事態になります。

第二幕で展開に行き詰まったら、トラブルや問題を起こし、対立させたり葛藤させたりして、主人公が困るように困るようにストーリーメイクしましょう。

 

ミッドポイント

第二幕の真ん中には、ミッドポイントという折り返し点があります。

ここでは、ここまで目的の実現に近づけずに困ってばかりいた主人公が、目的実現のために動き出す、またはその方向性を見出す出来事が起こります。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で言うと、落雷を予測できれば、その動力を使ってデロリアンを動かすことができると気づく場面がそうです。

これが「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のミッドポイントで、以降物語は「未来に帰る」という結末に向かって動き出します。

 

第二ターニングポイント

第二幕の終わりには、第二ターニングポイントがあります。これは、ミッドポイントで結末に向かう方向性を見出した主人公が、さらに結末へと向かうことになる出来事のことです。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で言うと、ドクが雷の落ちる時計台にケーブルをつなぎ、落雷の瞬間、この下を時速140キロで走り抜ければ未来に帰れると言い、その準備を進める場面がそうです。

第三幕は、解決編

〔第三幕〕

第三幕は、解決編です。

分量は、全体の1/4です。全体が100枚なら25枚ぐらいです。

第三幕では、これまでにあったさまざまな問題がすべて解決し、物語は終局へと向かいます。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で言うと、「未来に帰る」というメインプロットのほか、「両親を結びつける」というサブプロットも解決します。

 

クライマックス

第三幕の最後にはクライマックスがあります。

ここまで、「主人公は目的を実現できるのだろうか」とやきもきさせ、観客や読者にストレスを与えてきましたが、それが一気に解消し、興奮が高まるところです。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で言うと、ロレインに迫るビフをジョージが撃退し、二人が結ばれる場面と、すべての問題を乗り越え、最後にもとの1985年に戻ってくるというのがクライマックスです。

 

結末

最後に、それでどうなったというエンディングがあります。

「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で言うと、主人公の目的は達成されましたが、実はまだ解決されていない問題がいくつか残っていました。

たとえば、家庭が貧しい、父親はうだつがあがらない、恋人ジェニファーとデートに行く四駆が壊れている、といったことです。

結末では、これらもすべて解決します。しかも、解決に至る伏線も張ってあり、観客や読者は結末に満足し、納得します。

ごくごく基本的な作劇法ですが、覚えておくと、特に長編を書くときなどには威力を発揮します。

(ヨルモ)

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ヨルモって何者?

公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。