ヨルモの「小説の取扱説明書」~その27 物語の大きさと枚数~
公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。毎週金曜日に配信。
第27回のテーマは、「物語の大きさと枚数」です。
枚数に対して出来事が多すぎる
学生時代に、授業で小説を書く機会がありました。
規定枚数は400字詰め原稿用紙10枚。
このとき、最初に思ったのが、「10枚なんて書けるだろうか」でした。
10枚なんて、未知の領域です。
こうなると、ある程度、長い時間を扱わないと、10枚なんかいかないのではないかと不安に駆られます。
それで“ある2年間”を題材に選んだのですが、2年間に起きた出来事を漏れなく書こうとすると、とてもではないですが収まりきれません。
結局、一つ一つの出来事に割く字数を減らしましたが、その結果、でき上がったのは、場面をダイジェストしただけのあらすじ小説でした。
小説には、物語の大きさに適した枚数があります。
2年間もの時間を扱うのであれば、10枚で収まりません。
2年どころか、ほんの一瞬しか扱えないと言ってもいいです。
少なくともメインとなる場面は、「あるとき」という単位でしょう。
この場合は、扱う時間を少なくするしか手がなかったわけです。
枚数に対して話がゆっくりすぎる
一方、同じように「10枚なんて絶対無理だ」と頭を抱えている級友がいましたが、よくよく聞くと、彼の悩みはまったく逆でした。
いわく、「10枚じゃ絶対終わらない」。
それで書いた小説を見せてもらったのですが、これが大長編のようなスローペース。
舞台は戦国時代。冒頭、主人公は騎馬で政敵宅を訪れますが、そこで武家屋敷と現代の邸宅の違いが詳しく説明され、騎馬の武者用に入り口には式台があるとか、行灯は裕福な家しかなく、下級武士は魚油だとか書いてあり、それだけで10枚尽きていました。
「はよ、本題に入れや」って感じですね。
彼の書き方は、小さな画用紙に象を原寸大で描こうとすることに似ています。
もしもそれをやるなら、象がそのまま入る大きさの紙を用意しないといけません。
しかし、規定枚数は10枚なのですから、象のほうを小さくしなければいけなかったわけです。
一場面は平均すると7~15枚
では、物語の大きさと枚数の関係は、どうしたらつかめるのでしょうか。
ジャンルにもよりますが、実際に出版されている小説を見ると、一つの場面は平均すると5~10ページ(原稿用紙にして7~15枚)ぐらいでしょう。
ちなみに、一つの場面というのは同じ時間、同じ場所が書かれ、一行空きの断章などによって場面転換がされるまでの箇所を言います。
このペースで書いていって、過不足なく物語が終わった枚数が、その物語の適正枚数になります。
といっても、書いてみないと感覚的にわかりませんね。
書いてみて、どこもかしこもぎっしり詰まっている。にもかかわらず、一つ一つの場面はあっさりしていて読みごたえがない。
こういう場合は扱う時間と場面を減らしてみましょう。
逆に、男女がキスをするというそれだけの場面なのに、そのときめきと戸惑いを書き、かつ、それまでの思い出を回想で交え、キスの起源といったうんちくまで書いていたら、それだけで100枚使ってしまったという場合は明らかにスローペースです。
これだと相当中身が面白くないともちませんから、再考したほうがいいです。
こうした判断は、何回も経験すれば誰でもすぐにわかります。
(ヨルモ)
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ヨルモって何者?
公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。