ヨルモの「小説の取扱説明書」~その21 セリフの形式~
公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。
第21回のテーマは、「セリフの形式」です。
セリフとその説明文の順番
セリフとセリフに連動する説明文の組み合わせには2種類あります。
1. 説明してからセリフに入る
2. セリフを書いてから説明する
これにセリフのみの場合を加えると、合計3種類になります。
1.は、
映子は頭を抱えながら言った。
「書き方がわからないんです」
2.は、
「書き方がわからないんです」
映子は頭を抱えながら言った。
どちらを選んでもいいですが、その場面に「映子」という人物が初めて出てきた場合は、読者に対して説明するという意味では、1.のほうがベターかと思います。
この「言った」は言わずもがななので省略し、別の情報を加えてもいいです。
たとえば、
映子は頭を抱え、訴えるように見た。
「書き方がわからないんです」
こうすると、映子の視線の方向が示せます。
外国文学から来たセリフの書き方
セリフのあと、改行しないで説明文を続けることもあります。
「今日は原稿書いたの?」
「書いたよ、二十枚」嘘だった。
このセリフは、カッコのあとに句点をつけ、
「書いたよ、二十枚」。嘘だった。
と書いても誤りではありませんが、小説ではこの句点は省略します。
それは、「I write twenty pages」he tell a lie. という表記に倣ったものです。
小説だけの表記と言っていいでしょう。
セリフがあって、地の文が続き、またセリフと、改行なしで書く場合もあります。
「ただいま」靴を脱ぎながら映子の背中を睨んだ。「ちっとも書いてないじゃないの」
これは「ただいま。ちっとも書いてないじゃないの」と全部言ったあとに、〈靴を脱ぎながら映子の背中を睨んだ〉のではなく、
「ただいま」と言い、〈靴を脱ぎながら映子の背中を睨み〉、そのあとで、「ちっとも書いてないじゃないの」と言ったわけですね。
時間的な差があります。
この書き方は、外国文学(またはその影響の強い日本の小説家)に多いですね。
カッコを使わないセリフ
セリフでも、「 」を使わない場合もあります。
いつか絶対、名作を書いてやる。布団にもぐりこんで真澄をののしった。
主人公の内面の声ですね。直接話法のセリフを、カッコなしで地の文に書いています。
これを自由間接話法と言います。
これは一視点の小説にのみ許されます。
お兄さん、寄ってかない?――。客引きの声が背中を追ってきた。
「お兄さん、寄ってかない?」のようにカッコをつけてもいいですが、この場合はカッコをつけていません。
カッコをつけて強調するほどのセリフではないということですね。
次回もまたセリフについてやります。
乞うご期待!
(ヨルモ)
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ヨルモって何者?
公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。