「会社と共に成長していくロゴを作る」 デザイナー 大東浩司
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今回「公募ガイド」から「Koubo」にリブランディングするにあたり、デザイナー大東浩司さんにロゴを制作していただいた。会社の顔とも言えるロゴにこめた思いや、大東さんのデザイン制作プロセスについて伺った。
大東浩司
1971年生まれ。日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)正会員。百貨店デザイナーを経て、2005年出身地である徳島県を拠点とするデザインオフィス、アドファーレンを設立。
HPは
こちら。
「大胆」はOK。
「奇抜」はNG。
――今回「公募ガイド」から「Koubo」にリブランディングするにあたって、ロゴもリニューアルすることになりました。大東さんは「公募」というものをどのように捉えて、このデザインに落としこんだのでしょうか。
大東まず前提として公募というシステムは、老若男女、国籍問わず同じ土俵で楽しんだり、競ったりできるものであるという認識でした。そこで、「ニュートラル」や「普遍的」という言葉をキーワードにし、できるだけ幅広い層に受け入れられるロゴデザインを制作しました。
――デザインの主軸になったのは「ニュートラルさ」ということでしょうか。
大東そうですね。シンプルでだれが見てもわかりやすいものを、という考えが大きかったです。ただ、シンプルでもよく見るとちゃんとこだわりを感じることができるものを作ろうという思いはありましたね。
――確かにこの「クラフトマンタイプフェイス」というフォントには、表面的ではないこだわりを感じることができます。
大東このフォントは、職人が細部までこだわって作品を作りこんでいる様子をイメージしたものです。機械的ではないけれど、精緻なロゴタイプになるよう意識しました。
――ほかに候補として挙げてくださった、どのロゴタイプにも精緻なイメージがあります。
大東そうですね。丁寧でわかりやすいって、普遍的だと思うので。どのロゴタイプも、誰が見てもわかりやすいシンプルなデザインにしました。
――会社の顔とも言えるロゴがわかりやすいということは重要ですよね。
大東トレンドを取り入れたデザインは、一時的に目を引くんですが、あっという間に次のトレンドが生まれて廃れてしまうんですよ。ついついデザイナーのエゴイスティックな一面が顔を出してデザインをしてしまいがちになりますが、結局シンプルなデザインほど時間が経っても古臭さを感じにくいですし、普遍的なんですよね。
今回のロゴは昔からそこに存在しているのようなものを目指しました。さりげなくいるだけなのに、なぜか愛着が湧いてしまうみたいな。
――なるほど。私は、ロゴの候補を見た時に「レトロっぽい」と感じたのですがその思いから生まれた感情なのかもしれません。
大東そうですね。最初に浅田さん(弊社社長)とお話をしたときに「マルチバイトからシングルバイトへ」という話が出たんです。「公募ガイド」から「Koubo」という変化自体が、すごくインパクトのあることじゃないですか。変化それ自体が派手なので、ロゴは自然で主張しすぎないものにしようと思いました。変化していく環境の中で、認識はするけど自然に受け入れられるというのが理想の形ですね。
柔軟な制作プロセスが鍵
――大東さんが今回のロゴデザインを考えた際のプロセスをお伺いしたいです。
大東まず、会社の理念や理想像、ロゴのざっくりとしたイメージを聞きました。その過程で、どのような進め方が一番よいかということを考えながらデザイン案を練っていきました。
――ヒアリングしながら制作を進めていくということでしょうか。
大東型にはめたやり方があるわけではありません。論理的な思考から組み立てる場合もあれば、情緒的な思考で組み立てる場合などさまざまです。
浅田さんとお話を進めるうちに、とても論理的にお話をされる方でしたので、今回は言葉や文章から発想を得る方法がよいと考えました。
――相手によって作り方を変えているんですね。
大東大きくビジョンとビジュアル、自社の利点や課題といった、いくつかの側面から紐解いていくのですが、今回は一度キーセンテンスとしてまとめてそこからイメージを膨らませていきました。
――ある程度方向性が決まったら、いよいよ書き起こしていくわけですが、その際のプロセスも教えていただきたいです。
大東まず頭に浮かんだことを手でバーッと書きますね。アイデアシート上で言葉や、キャラクターなどを書き出します。その中から形にできそうなものを選んで、パソコン上で書き起こしていきます。
――こんなにたくさんアイデアを出すんですね! 実際に形に起こしていく際に困った点や難しかったことなどはありますか?
大東既視感の問題は結構ありました。「K」からはじまってアルファベットの会社名って結構あるので。初めてのオンラインで不安だったこともあり、ある程度幅を持たせて、多めにプレゼンをしました。小出しにしていくやり方で、完成形に至る前60~70パーセントのものを提案しながら、思考を整理していましたね。
――初めてのオンラインだからこそのやり方だったのでしょうか。
大東もちろんそれもありますし、あと時間が非常にタイトだったこともあって、方向性に大きなズレが出ないように、途中段階で投げかけて視覚的に精査していくようにしました。ABCどれにするかというパターンではなく、アジャイル型で進めていくようにしました。
初めは途中段階のものを見せることには抵抗がありました。羽化する途中の段階というのは形として完全体ではありませんから、どうしても言葉での補足が多くなってしまうので。でも、社員の方に意見を聞くことができたり、客観視する時間ができたりなどメリットもたくさん感じられて、こういうやり方もあるんだという新しい気づきもありました。
ロゴも作り方も
常にアップデートし続ける
――裏話を聞けて面白いです。作る過程で気づきがあるっていいですね。
大東そうですね。あとは、公募ガイドは事業が多岐に渡っているので、バラバラになったブランドネームがありますよね。「Kouboプランナー」とか。後ろにほかのサービスが紐づいても、マスターネームが機能するようなものにするのが難しかったです。アルファベットの後ろにカタカナがくると、どうしても不安定になりがちなので。
――会社の背景や全体感まで考えてデザインされているんですね。
大東変化に対応するためにはさまざまなことを考慮して制作しないといけないと思います。
最近は、完成したら終わりではなくデザインを常にアップデートするというかたちに変化している気がします。いったん世に出し、試験的に運用してブラッシュアップしていくというスタイルはこれから普通になっていくのかもしれません。更新しながら完成度を高めていく過程はまさに今回のプレゼンで体現できたわけですし、ロゴやグラフィック、システムなど更新することを前提に、情報を共有する、考える、運用するということは新しいデザインの形になっていくのかもしれません。
――今回で終わりではなく、この先も常に見据えているということですね。
大東そうですね。何十年後かにまた新しい「Koubo」を作れたらいいねという話もしました。
――進化し続ける「Koubo」ですが、大東さんは今回のロゴにどのような役割を担ってほしい、どのように成長してほしいという思いはありますか?
大東一番は、自然に受け入れられてほしいですね。そもそもニュートラルということを第一で作ったので、ロゴ自体が「変わりました」と主張するのは違うかな。今までの媒体から移行する中で、違和感なく馴染んでほしい。変わったことに気づいても「昔からこれだったような気がする」ぐらいであってほしいです。
あとは、どうなっていくか未知数ですね。どうなるかわからないから面白い。国や人種などを問わず、この「Koubo」が関わりのきっかけになったらいいですね。「公募ガイド」は僕もお世話になった一人なので、アップデートしていく過程にこれからも関わっていきたいです。