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W選考委員版「小説でもどうぞ」第5回募集

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小説でもどうぞ
第5回W選考委員版「小説でもどうぞ」の募集がスタート!
ゲスト選考委員は、直木賞作家の門井慶喜先生です。

また、季刊公募ガイド春号(4/7発売)では門井慶喜先生のインタビューを掲載しますが、ここではこのインタビューの別バージョンをお送りします。応募前にぜひとも熟読ください。作家志望者必読の内容になっています。

レギュラー選考委員
高橋源一郎

1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。 小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。

<第5回>
門井慶喜さん

1971年群馬県生まれ。同志社大学卒。2003年オール讀物推理小説新人賞を、2018年『銀河鉄道の父』で直木賞受賞。現在、「ゆうびんの父」を地方紙23紙で連載中。

第5回ゲスト選考委員は、直木賞作家の門井慶喜さん。
新刊の『文豪、社長になる』をもとに、
主人公の条件や取材の方法などについて伺った。

主人公の何を書くか、

明確なビジョンを決める

――2023年5月5日に、直木賞受賞作(2017年下半期)『銀河鉄道の父』が映画化の予定ですね。
 試写を観ましたが、よかったですね。原作者が観ると、これを書いたときはこんなことがあったよなと感慨深く思い出すのか、それとも手の内を知り尽くしているから面白くないかのか、どっちかなと思いましたが、どちらでもなく、映画が始まり、宮沢政次郎役の役所広司さんが動き始めたらひとりの観客になってしまい、観客として楽しみ、そして観客として泣きました。ほんとにいい映画でした。
―― この3月には新刊として『文豪、社長になる』が出版になりました。主人公に菊池寛を選んだきっかけは?
 文藝春秋が100周年を迎え、執筆の依頼をされました。菊池寛の主要作品はすべて読んでいて、菊池寛という人も好きで、その生涯もよく知っていました。また、日本の近代の出版社についてもよく知っていましたから、この話が来たとき、「題材としては書ける」と思いました。
―― 書く準備にはどれくらいかかりましたか。
 持っていない資料を集めたり、高松の菊池寛記念館に行って展示物を見たりなど、知っていることも一から調べ直しましたが、下準備がいらなかったので3カ月ぐらいだったと思います。ふだんは半年から一年ぐらい、なんとなくぼんやり考える時間を持つのですが、今回の場合、なんといっても100周年というお尻が決まっていましたので……。
―― 史料は山ほどありそうです。
 近代史上の人物を描く場合は史料がありすぎるほどあります。特に菊池寛は出版人ですから、同時代の証言もあるわけですね。それを集めていたら一生が終わってしまうくらいあります。だから、近代史の場合は「調べること」と「調べるものを捨てる」というのが基本的な作業になります。
―― 何を基準に分けるのでしょうか。
 拾うものと捨てるものを分けるには、明確なビジョンがないといけないと思うんですね。菊池寛なら菊池寛の何を書くか。戦争責任について書くのか、女性関係について書くのか。ぼくの場合は「雑誌と菊池寛」という切り口で書きましたが、そういうものを最初に決めておかないとごちゃごちゃしてしまいます。逆にテーマが決まれば、そこから外れるものはある程度、落としてもいいと判断できます。
―― テーマを基準に要不要を区別するわけですね。
 あまり杓子定規にやる必要はありません。テーマに沿っていても面白くないエピソードはありますし、テーマに沿っていなくても面白いものはあります。そのあたりは現場判断です。



主人公の行動について

明確な理由づけをし、

その方向に向かっていく

―― 書きながらプロットが変わることはありますか。
 あります。テーマ自体を変えてしまうのはよくないと思いますが、長編の場合は一つのテーマで押していくだけでなく、テーマから外れたような情報も入れたほうがいいと思いますので、そういう部分を入れられないかと考えて、書きながらプロットを変えることはあります。
―― 近代史の人物の場合は史料が残っているので、フィクションを加えられる部分が少ない気がします。
 人物によりますが、菊池寛の場合は入れました。事実に反することであっても、フィクションによってテーマが深まり、話が面白くなれば、読者は許してくれるものだと思っています。ちゃんと調べている限りは、フィクションについてはそんなに目くじらは立てません。
―― 許されるフィクションと、許されないフィクションの差は?
 ぼくは「守りのフィクション、攻めのフィクション」と言っています。守りのフィクションとは、史実がわからないからフィクションにしてしまおうというもの。調べきれないから、調べる時間がないから空想で埋めてしまおうというのは作品から逃げているわけです。
―― 攻めのフィクションは?
 攻めのフィクションは、こういう印象を与えようとか、テーマとの絡みで、こういうふうに話を持っていこうとか、明確な目的があります。効果への期待があって書くなら、フィクションはあっていいし、作るべきだと思っています。
―― 史実でないことを書くためらいはありますか。
「あれはフィクションだったんですね」と好意的に言われることはありますが、昔のように大河ドラマでやったことはすべて史実だと思う人はいません。今はネットで事実関係がすぐに調べられますので、「これは史実なのかな、そうではないのかな」と思ってもらえれば、作者としてはしめしめというところです。
―― 「この状況なら主人公はきっとこうしただろう」と確信を持って書くなら、フィクションでもいいでしょうか。
 まさにそういうことですが、確信を持つのは決して簡単なことではありません。主人公の取り得る行動を十通り考えたとして、その中の七つか八つは簡単につぶせるのですが、そこから迷います。
 しかし、そこで逃げず、最後の一つになるまで考え抜く。そして「主人公はこっちを選ぶだろう。それはこういう理由なんだ」と明確な理由づけをして、その方向に向かっていく。そうでなければフィクションは使っても意味がないし、ばれたときに興ざめされます。そこを考え抜けば、「あ、やられた」という印象になるのだと思います。
―― 作者の都合でストーリーを作らないということでしょうか。
 ストーリーを考えて考え抜いて、これを伝えたいんだと確信的なところまで追いつめたのであれば、そのときは作者の都合でかまいませんが、考えずにやるとご都合主義に見えてしまうということです。
―― 主人公を選ぶ基準、条件はありますか。
 それは好き嫌いですね。好きな人物か、好きな人物ではなかったけれど、調べてみたら「面白い」と思える人物かどうか。偉人でも人間だから嫌な部分はあるんですね。それと付き合って、その部分も書かないと嘘になります。美辞麗句ばかり書いた小説ほど面白くないものもない。しかし、好きな人物だったら、嫌な部分があっても付き合いきれます。



自分に向いたものを見つけるには、

わかるまで徹底的にやるしかない

―― 門井先生はミステリー作家としてキャリアをスタートさせましたが、歴史小説を書く転機はあったのでしょうか。
 ミステリー作家としてデビューし、はたから見ればそれなりの地歩を築いていたのでしょうが、よく考えたら自分が書いているものは全部歴史だよなと。文化財、古書、ルネッサンスの絵画などが本物か偽物か、作った人がどうなったかという話ばかり作っていましたので、結局、何を書いても歴史だよなということに気がつきました。
―― それで歴史小説を書くようになった?
 現代小説にもの足りなくなったということだと思います。現代小説で歴史を見ると、そこにどうしても現代というスクリーンを挟まないといけないわけです。ある時期、そのことに隔靴掻痒の感を抱き始め、だったらぼくのほうから歴史のほうに飛び込んでしまえばいいんじゃないかと思ったのです。
―― 子どもの頃から歴史が好きで、大学でも歴史を学ばれていますが、ストレートに歴史小説に行かなかったのは?
 父親が歴史好きで、その反発ということもあったのかもしれません。ただ、歴史から遠ざかったつもりでミステリーを書いても、なんだ、やっぱり歴史じゃないかと、年をとって初めて気がついたということではないかなと思います。
―― 本当に自分に向いたもの、書くべきジャンルを発見したということだと思いますが、それはどうしたら見つけられますか。本当の自分を知らず、向いていないものを目指してしまう人もいます。
 才能のない分野で努力することができるというのは、それはそれで大切なことだと思います。目的地は間違っているけど、この人は一生懸命に走る意思があって、走る能力はあるということです。
―― 努力が無駄になるということは?
 徹底的にやって、やっぱりこれは向いていないとわかるまでやるよりしょうがないんじゃないですかね。中途半端なところで引き返すくらいならやってしまう。そこで本当の自己反省が生まれるのなら、おそらくそれは本物だと思うんですよ。そこから本当に得意なものを見つけるというところにいくのではないかなと思います。
―― 本気でやったことは決して無駄にならないんですね。貴重なお話、ありがとうございました。
門井慶喜先生 新刊
『文豪、社長になる』
(文藝春秋・1980円)

1923年、菊池寛は文藝春秋を作る。仕事が、仲間が、人生が愛おしくなる、文藝春秋創立100周年記念作品。

W選考委員版 第4回「小説でもどうぞ」の結果発表と選考会の裏側は、季刊公募ガイド2023春号(4/7発売)、またはこちらをご覧ください。
応募要項
課 題

■第5回 [ 魔法 ]

小さいころは、誰でも魔法使いに憧れます。ああ、魔法が使えたなら! 大きくなって、それが不可能だとわかる。でも、そのあとでまたわかってくる。もしかしたら、この世界でも魔法は使えるのではないかって、ね。(高橋源一郎)

締 切

■第5回 [ 魔法 ] 
5/9(必着)

規定枚数

A4判400字詰換算5枚厳守。ワープロ原稿可。
用紙は横使い、文字は縦書き。

応募方法

郵送の場合は、原稿のほか、コピー1部を同封。作品には表紙をつけ(枚数外)、タイトル、氏名を明記。別紙に〒住所、氏名(ペンネームの場合は本名も)、電話番号、メールアドレスを明記し、原稿と一緒にホッチキスで右上を綴じる。ノンブル(ページ番号)をふること。コピー原稿には別紙は不要。作品は折らないこと。作品の返却は不可。

※WEB応募の場合も作品には表紙をつけ、タイトルと氏名(ペンネームの場合はペンネームのみ)を記入すること。

応募条件

未発表オリジナル作品とし、入賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属。
応募者には、弊社から公募やイベントに関する情報をお知らせする場合があります。

発 表

第5回・2023/7/7、季刊公募ガイド夏号誌上

最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載

応募先

● WEB応募
応募フォームから応募。
● 郵送で応募
〒105-8475(住所不要) 公募ガイド編集部
「第5回W選考委員版」係

お問い合わせ先

ten@koubo.co.jp


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受講料 5,500円

https://school.koubo.co.jp/news/information/entry-8069/