あなたとよむ短歌 vol.55 テーマ詠「アルコール」結果発表 ~感情と連作~(3/3)
それでは、今回はもいただいたご質問に回答していきたいと思います。
世間や周囲に対する怒りを歌にすると、
ついつい感情が発露し過ぎて後味の悪い歌になってしまいます。
冷静に淡々と短歌で怒りを表すにはどうすればよいでしょうか。
興味深い問いです。短歌には「社会詠」というジャンルがあり、政治や経済、戦争、情勢について詠む人は多くいます。そうした作品の場合、現状への疑問だったり、怒りだったりを表すことが多くなるものです。もちろん、身近なものや個人的な敵に対する怒りを題材にするケースもありますよね。
怒りや悲しみ、喜びなど、自分に起こった感情を短歌にするのは、スタンダードなようで実は難易度が高いと私自身は感じています。短歌は短いリズムのなかで、言葉を選びに選ぶので、どこか冷静にならないとうまく詠めないような気がするのです(もちろん、人にも寄るとは思います)。
たとえば、大切な誰かを亡くしたときのことを短歌にする人もいます。お別れから数ヶ月、数年が経っていることも少なくありません。自分の感情と冷静に向き合い、咀嚼し、短歌にするまでには、時間の経過が必要な場合もあります。
沸るような感情を短歌にするのも決して悪いことではありません。そういうときにしか詠めない歌もあるかもしれません。けれども「冷静に淡々と」詠みたい場合には、その感情について客観的に捉えられるくらいの時間経過が必要なのかもしれません。
連作の作り方を教えてください!
「連作」は、複数の短歌をまとめて一作品とする形式です。企業や自治体が公募する短歌ではあまり見かけませんが、出版社が主催するような短歌新人賞になると連作での募集が増えます。そういった新人賞は20首から50首と、ボリュームの多い連作が対象になります。一方、ネットプリントやWEBを利用して、個人や仲間同士で連作を発表する人も増えてきました。5首程度の短い連作の画像をSNSに載せる人もいます。
私は詠むのも読むのも、この連作という形式が好きです。国語の教科書で短歌を取り扱うことはあっても、連作という形式を紹介しているケースはあまり聞かないので、連作がもっと知られたらいいのにと常々思っています。あの有名な俵万智さんのサラダ記念日の短歌も、連作のなかに含まれる一首です。未読の方は歌集『サラダ記念日」で、ぜひ連作ごと読んでみてください。
さて、作り方ですが、短歌をまとめてタイトルをつけたらそれはもう連作です。そのほかのこだわりや作り方は、歌人ごとにずいぶん異なります。私が個人的に意識している点としては「一首ずつ読んだ場合でも読みどころのある短歌にする」「体言止めなど、同じ形式の末尾が連続しすぎないようにする」「同じリズム感の短歌が続くと単調になるため、連作全体で飽きないようなリズムを意識する」などでしょうか。
連作は、短歌と短歌の間の行間までデザインできるところが好きです。まずは短歌を詠み、紙に書いて並べて、それを入れ替え、どう印象が変わるか・変わらないのか試してみるといいかもしれません。「連作をつくるぞ!」と気負うと、ついテーマ性などを意識しすぎて窮屈になるので、まずは「短歌を詠むぞ!」そして「並べてみるぞ!」という実験を楽しむ感覚で挑むとよさそうです。
作品や質問のご投稿ありがとうございました。引き続き、テーマ詠「未来」を募集しています。
テーマ詠は、お題の単語を短歌のなかに入れても入れなくてもOKです。そのテーマにあった短歌をお待ちしています。
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応募規定 | 短歌(57577)を募集します。 テーマは「未来」。 応募点数制限なし。 応募フォームに柴田さんへの質問欄を設けています。短歌のことや、作品づくりについて選者:柴田葵さんに質問があればご自由にお書きください。匿名で質問内容とその回答を記事に掲載させていただく場合があります。必ずしも回答があるわけではございませんので、ご了承ください。 |
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締切 | 2024年10月31日 |
発表 | 2024年12月1日 |