シナリオ創作術⑤シナリオ公募対策2


シナリオ・センター 柏田道夫先生インタビュー
映画、テレビ、ラジオ、戯曲などシナリオの公募は意外と多いが、書き方はどう違うのか、何に気をつければいいのか……さまざまなシナリオ公募のコツに迫る!
どのシナリオ公募に挑戦するか?
好きなジャンルと気持ちを優先しよう
——自分に合ったシナリオ公募を見つけるにはどうすれば?
まず、映画、戯曲など、何が好きかですね。戯曲なら、演劇が好きでよく観るという人でなければ書きにくいですよね。
——どんなペースで応募するといいですか。
ラジオドラマや地方主催の賞、短編など、比較的挑戦しやすいものと、フジテレビヤングシナリオ大賞やテレビ朝日新人シナリオ大賞などのテレビドラマ、城戸賞といった映画のメジャーなものを年に2本くらい決めて、それに向けて準備するといいですね。
——地方主催の公募で気をつける点はありますか。
地方色を出すことです。BKラジオドラマ脚本賞だったら主催者は大阪だし、南のシナリオ大賞なら九州のほうだし、北のラジオドラマ大賞なら北海道とか、その場所をドラマにどう生かすか。ラジオならそれがセリフにも表れるはず。出身者やその場所に詳しい人は有利ですね。
——過去の分析は必要でしょうか。
過去の受賞作は読んでおいたほうがいい。だいたいどういう作品が受賞するかがわかります。ただ、あんまり対策をとる必要はありません。こういうのが通るだろうと考えながら作るとだいたい落ちます。自分が書きたいと思うものを書くほうがいいですね。
——ほかに気をつける点は?
テレビ局にしても映画にしても、今の時代をどうくみ取り、どう作品に反映させるかが大事。今だからこそ成立する話がいいですね。
——柏田先生おすすめの公募はありますか。
伊参スタジオ映画祭なんかは自分で映像を撮らないといけないけど、監督になりたい人にはいいですね。シナリオから映像になるには何が必要かを現場で理解できます。あと、地方主催のラジオドラマは収録のときに立ち会わせてくれたりするので、声優さんがしゃべる生のセリフを聞けて勉強になります。
シナリオ別の書き方のポイントは?
メディアの持つ特性、できることを生かす
——映画を書くときに気をつけることは?
映画化が可能で、集客できる面白さが欲しいと主催者は思っている。新鮮なアイデア、スケール感、映画でしかできないことがあることが必要です。城戸賞をとった土橋章宏さんの『超高速!参勤交代』は映画だから面白くなった。あと、テレビなら難しいポルノシーン、残虐なシーンもR15とかにすればできます。
——テレビの場合はどうですか。
テレビも映画も書き方は同じですが、テレビドラマのシナリオ公募の場合、都会のどこかで生きている若者の姿や家族の姿を切り取るなど、日常の中で何かを感じさせたりするほうがいいですね。
——オーディオ(ラジオ)ドラマは音だけで表現しますね。
書き方としてはラジオが一番特徴的です。音だけなので柱がなく、ト書きとセリフと効果音で表現します。低予算で作れ、SF、時代劇もやりやすい。大河ドラマ「八重の桜」を手掛けた山本むつみさんは、時代劇が書きたくて創作ラジオドラマ大賞に応募し、これをきっかけにテレビドラマの脚本家としても声がかかりました。
——戯曲はどうでしょう。
劇団主宰の場合、それぞれに色があるので、それを反映させます。また、役者が決まっている場合があるので、その役者が生きる内容がいい。舞台空間をうまく使うことが大事で、カメラがないので、ズームを意識したシーンやカットバックなどはやりにくいです。
——漫画原作もシナリオ形式です。
漫画もラジオドラマと同様、セットを作るといった制約がないです。テレビドラマでは予算の関係上、『スター・ウォーズ』のようなSF、時代劇はやりにくいですが、漫画の場合は問題ありません。
また、漫画もキャラクターが重要な世界。キャラクターを立たせることが大事です。あとはどういう面白い世界にするか。『スラムダンク』みたいにバスケットに特化するとか、『ちはやふる』のように競技かるたに特化するとか、シチュエーションの面白さを強調するといいです。
シナリオ公募 Q&A
公募以外でプロになる方法はありますか?
シナリオの学校やシナリオ・映像関係の協会・団体、マネジメント事務所に所属すれば、プロデューサーや制作会社からの募集(コンペ)もあるかと思います。シナリオ・センターには、進級して作家集団というクラスに所属すると、仕事やコンペの情報がメールで送られてくるライターズバンクという制度があります。あと、脚本家のマネジメント事務所もありますが、受賞歴や仕事の実績がある程度はないと難しい。公募が一番わかりやすい方法ではあります。
受賞したらデビューできますか?
受賞はあくまで名刺。その後、活躍できるかはその人次第。作品やアイデアのストック、引き出しを持っているかが問われます。公募で一番いいのは自分が書きたいものを書けること。だけど、仕事では制作費や役者や原作があるとか制約があります。それに対応できる人に声がかかります。少ないけれど、最終審査に残った応募者を対象に勉強会を実施してくれるテレビ局もありますので、大賞でなくても書けそうな人はそこで仕事の依頼をされる場合もあります。
シナリオ公募をする目的は?
新しい才能の発掘ですね。とくにテレビ局主催のものは現場ですぐ使える即戦力を求めています。テレビドラマはいろんな制約もあるので、臨機応変に制約をクリアし、イキのいい脚本にしてくれる人材や、連ドラを最後まで書いてくれる人、今までにない若い感覚を持っている人が求められます。
どのシナリオ公募も基本的には秀作とそれを書く人材発掘が目的ですが、公的団体主催のものには業界の振興を目的としたものもあります。
シナリオ別のポイント
漫画原作
主人公のキャラクターが大事。読者にページをめくらせる見開きごとの工夫が必要。セリフは吹き出しになるので、長ゼリフはだめ。実際にコマ割りし、ラフスケッチに描いてみるとわかりやすい。
戯曲
映像と違って、場面は次々と変えられない。空間が限定されていることを生かす。セリフのやり取りが重要。カメラのようにアップにできないので劇場の後ろの観客にもドラマが伝わるように書く。
オーディオ
音とセリフで表現するので、セリフが説明的になりすぎないように。また、音の持つ面白さ、迫力やスピード感を生かし、季節や自然を感じさせる美しい音も使い、視聴者の想像力に訴えかける。
テレビ
明るい場所での「ながら見」が前提なので、聞きやすいセリフを意識する。CMが入るのでチャンネルを変えられない工夫が必要。連ドラは途中から見ても面白く、最後まで見てもらえる魅力を。
映画
スクリーンが大きいので、街や建物の全景、世界を広く俯瞰で見せられる。暗く音響のよい劇場で観客がしっかり見てくれるので、複雑な世界、展開、ドラマを描きやすく、作家性も出しやすい。
※本記事は2019年9月号に掲載した記事を再掲載したものです。