公募/コンテスト/コンペ情報なら「Koubo」

シナリオ創作術③シナリオをもっと面白く!

タグ
小説・シナリオ
シナリオ・脚本・台本・戯曲
バックナンバー

いよいよ実際にシナリオを書いていくが、単に場面を並べてもだめ。技術を学び、シナリオをもっと面白くしよう。

キャラクター、セリフ、映像表現を磨こう

プロットは同じでも書き方で全然変わる

シナリオはまず物語自体の独創性が問われるが、同じプロットでも脚本家によって全然違ったシナリオが生まれるように、その後の作業にも技術がいる。

たとえば、出来事を単に時系列で書いていくとダレるので、思いきって時間を省略してしまうとか、最初に結果を示し、あとで回想の形で経緯を説明するとか。

また、もとのプロットは同じでも、より人物を掘り下げて、本当に生きているような人間にしたり、面白いセリフを言わせたりすれば、作品から受ける印象は全然違う。

ここではそうしたシナリオ特有の書く技術について解説しよう。

シナリオの面白さのポイント

展開

主人公が問題をどう解決するか、そのことでどんなサプライズがあるか、あの話とこの話がこんなふうにつながるのかや、そのための伏線、展開の無理のなさなどによって作品のよしあしが違ってくる。

セリフ

有名な作品はストーリーは忘れてしまっても、名ゼリフは忘れないと言う。シナリオにとってセリフはもっとも重要なもの。意味は同じでも、「印象に残る」「格好いい」「響く」セリフを書こう。

キャラクター

キャラクター、つまりどんな性格にするかで作品のよしあしが決まってくる。映画やドラマを鑑賞する人は設定やストーリーより性格に惹かれる。性格はどんなものでもいいが、無個性にだけはしないこと。

展開で楽しませるプチテクニック

種明かし

問いを作り、あとで答える手法。「犯人がいて、引ったくりをする」という順番ではなく、「叫んでいる人がいて、何ごとかと見ると、引ったくり犯らしき男が走っていく」というように種明かしをする。

外し

予想の逆をやる。たとえば、恋人が事故にあったと聞き、慌てて病院に行く。病室に入ると、恋人の顔に白い布がかけられているが、それは別人で、肩をたたかれて振り返ると恋人が立っている、など。

飛ばし

時間を省略する。たとえば、「来週は家族でバーベキュー」と書き、1週間飛ばしてバーベキューの場面になるとか。「仕事か家庭か」と悩ませたあと、バーベキューの場面から始めると種明かしになる。

履歴・経歴を持たせ、生きた人物にしよう

桃太郎も浦島太郎も人間という設定だが、生身の人間とは違う。具体的に言うと、昔話などに登場する人物は過去を持たない。

シナリオに登場させる人物は、生きた人物であることが前提で、生きた人物はプロフィール(経歴・履歴)を持つ。

プロフィールを持たせるには、下記のような履歴書を作るといい。実際にはシナリオに書かないとしても、そこまで考えることで人物に奥行きが出てくる。

経歴や過去の体験も重要だが、趣味、嗜好、好みはストーリーに影響する。作者自身、把握して、人物に貫通行動をさせよう。

キャラクターを魅力的にするには?

憧憬

普通の人にはできないことができ、観客や視聴者が憧れるような存在にする。ヒーローはその典型。または凡人だが、特殊なアイテムや、あきらめない心を手に入れたりして、不可能を可能にすることも。

共感

ヒーローとは正反対。だめ人間など欠点のある人物。観る人はそこに自分を見る。たとえば「太った人」。外見には共感しなくても、食べたい欲に負けてしまうところには共感し、応援したくなる。

極端

性格は誰にでもあるが、主人公の場合、少し大げさにしたほうがいい。「欲に負けてしまう」性格なら、「欲に負けすぎる」など、何をするにしてもことごとく「欲に負けてしまう」ように設定する。

スクリーンショット 2025-05-14 113217.png

すべてのセリフは、人物と連動している

テレビドラマの名ゼリフというと、少し前に人気となった『半沢直樹』の「倍返しだ」とか、もっと前なら『家なき子』の「同情するなら金をくれ」がある。

名作映画での名ゼリフというと、『カサブランカ』の主人公リックが恋人のイルザに言った「君の瞳に乾杯」が思い浮かぶ。

そういう決めゼリフが書けたらいいが、半沢直樹にしてもリックにしても、まず人物造形があって、そのうえにセリフがある。

人物造形なしにセリフだけ書いても、「倍返し」だと息巻いているんだなあという感想しか浮かばない。それだけならいいが、「君の瞳に乾杯」ってキザで気持ち悪い、不自然だ、と思われかねない。『男はつらいよ』の寅さんのセリフ(下記)も、ちょっととぼけた、そしてケンカっ早い江戸っ子気質の中から出てきている。

例文1

竜造「そうなんだよ。俺達もそれを言ってるんだよ、どうだね寅さん、ひとつ、俺の代わりあんた行ってくれんかね」
寅「俺がかい」
  さくら、ドキンとする。
つね「本当、そうしてくれると助かるけどね」
竜造「実をいうとね、国際ホテルってとこなんだが俺アそういう立派なとこは苦手でね、かえってさくらに恥かかせるかも知んねえんだよ、こりゃ寅さんの方がいいよ、第一実の兄貴なんだからな」
さくら「あの……お兄ちゃん、忙しいんじゃないの」
寅「うむ……(少し自信がない)……忙しいったってね、今、歯みがいてるだけだけどね」

例文2

博「もし、もし、あんたに好きな人がいて、その人の兄さんがお前は大学出じゃないから妹はやれんと言ったらあんたどうします」
寅「なに俺に好きな人がいてその人に兄さんが……バカヤロ、いるわけねえじゃねーか。冗談言うな」
博「いや、仮にそうだとしたら今の俺と同じ気持ちになるはずだと」
寅「(カッとして)冗談じゃねえや、判ってたまるかてめえの気持ちなんぞ、馬鹿にするなこの野郎」
博「何故だ」
寅「お前頭悪いな。俺とお前は別の人間だ、そうだろ、早え話が俺が芋食えば手前の尻から屁が出るか? どうだ」

シナリオのさまざまな表現技術

シャレード

映像表現全般のこと。時間を省略したり、時系列を崩してあとで回想で説明したり、背景で季節感を出したりなど、視覚的な工夫はすべてシャレード。つまり、下記はすべてシャレードに入る。

小道具

場面で言いたいことをただセリフのやりとりだけで伝えるのではなく、小道具に象徴させる。重い気分を天候で表すのは常套手段だが、感情には形がないので、形のあるものに象徴させると効果的。

モンタージュ

2つの場面を並べて表現する。公式はA×B=C(AとBが場面、Cが言いたいこと)。たとえば、父親が亡くなって泣く息子と、遺産が入ると喜ぶ妻を並べ、「ひどい女」と言わせずに表現する。

カットバック

カットバックは、2つの場面の時間的切り返し。たとえば、銀行強盗が入る。警備員が見回りに出る。金庫の鍵を回す。警備員が廊下を歩く。鍵が開く。警備員がドアを開けるといった表現方法。

フラッシュバック

フラッシュバックは、カットバックの一種で、一瞬、思い出すこと。たとえば、合コンで同席した女性が赤いマフラーをしていて、瞬間、今朝見た占いの「ラッキーカラー・赤」を思い出すとか。

回想

文字通り、前にあったことを思い出すこと。説明のための回想は安直だが、時間を入れ替えることでメリハリを出したい、作品の中で扱う時間を短くしたいなどの創作的な理由があればやってOK 。

あなたのシナリオにはある?

ミステリー

この先どうなる?という謎は必要。小さな謎は小出しに答えを出して気持ちよくさせ、大きな謎で引っ張る。

サスペンス

主人公の秘密がバレそうになったり、相手が殺人鬼だと知らずに会いに行ってしまうなどハラハラさせる。

ユーモア

コメディーでなくともユーモアは必要。主人公が必死、シリアスになるほどユーモアが生きる。相乗効果に。

ギャップ

真面目な人間がハメを外す、強面だが、犬が怖いなど。意外性があり、対比することで相乗効果も出る。

あべこべ

普通と逆の設定。上司と部下の立場が変わる、性別が入れ替わるなど。そこに面白さがあり、真実が見える。

リアリティー

専門分野を扱うときは、こんなことあり得ないと言われないように下調べを。ある程度はディテールも必要。

カタルシス

精神の浄化。作劇的には一難去ってまた一難のようにストレスを与え、最後に一気に解決して解放する。

時代性

なぜこれを今書く必要があったかということ。10年前に書かれていても成立したと言われないようにしたい。

楽しんで書こう!

「プロになれなければ、入選しなければ意味がない」と自分を追い込むのもいいが、それではつらいし、「応募しなければ入選もないから」と応募が手段ではなく目的になったりする。一番いいのは、「楽しいから書く」というスタンス。シナリオ(物語)を作ることはそれだけで楽しいし、ワクワクする。書いている人がワクワクしないようなシナリオは入選もしない。ワクワク感を大事にしよう。

※本記事は2019年9月号に掲載した記事を再掲載したものです。