第51回 高橋源一郎「小説でもどうぞ」 課題「寄生」結果と講評


1951年、広島県生まれ。81年『さようなら、ギャングたち』でデビュー。
小説、翻訳、評論など著書多数。日本のポストモダン文学を代表する作家。
■第54回 [ 才能 ]
1/1~1/31(23:59)
■第55回 [ コンテスト ]
2/1~2/28(23:59)
寄生
今回のテーマは「寄生」。難しかったのか、苦労された応募者が多かったように思う。どんなテーマでも、縛られてはダメ。いちばん大切なのは「面白い小説であること」ですね。
最優秀賞は、うえお亜維さんの「僕ら」。この作品は「朝、目を覚ますと、知らない男が台所で味噌汁を作っていた」で始まる。誰? なんと、それは「僕自身」だった。「自分自身が自分に寄生している」のだ。そんな「僕」と暮らすうちに、部屋は汚れ、生活は乱れてゆく。ところが、それに比例して、眠りは深くなり、頭の中のノイズは減っていたのだ。そんなある日、男は、というかもう一人の「僕」は「出ていく」という。だって「きみ、もう、自分で生きられるようになった」から。いろいろ考えさせられる作品でした。
七緒ようさんの「ごちそうさまでした」の主人公の「俺」は弁護士だ。子どもの頃から、テストで、スポーツで、裁判で、「勝つことで正しさを証明してきた」「俺」はなんだか疲れている。そんな「俺」の前に突然「悪魔」が姿を現し、寄生することにしたというのである。「悪魔」によれば、彼らは「人間の負の感情、怒りとか悲しみとか虚しさとかを食べる」のだ。なんてことだ。しかし、「悪魔」に寄生され「負の感情」を食べられた結果、「俺」はどんどん穏やかになってゆくのだった。これでオチにキレがあれば文句なし。
山岸ミトさんの「私の中の狼」。「私は狼に寄生されている」という文章で始まる。月に一回、狼が「私の体を乗っ取ってくる」のだ。でも意識がないので、狼が何をやっているのかわからない。いったいどうすればいいのか。そんなある日、「精神は私のまま」、「私」は狼に。やがて、別の雌の狼が現れて、「一緒になる」という話はどうなったかと詰問してくる。なんだかファンタジーっぽいお話だ。では、オチはどうなっているのかというと、そこまでは夫のエピソードで、最後に妻が目を覚ますと……なるほど。
翔辺朝陽さんの「寄生の正体」の「私」は、定年退職後も一切、家事をしない夫の態度に限界を迎えそうな専業主婦。「寄生虫」のようにゴロゴロするだけの夫、いったいどうすればいいのか。考えた「私」は「病気」のふりをすることに。「寄生虫」の夫でも「宿主」に死なれては困ると家事をするようになるかも。目論見は功を奏して、夫の家事スキルはめきめき上達する。そんなある日、「夫の胃に新たな寄生が見つかった」。「がん」だ。やがて亡くなる夫。老いぼれた寄生虫がいなくなってすっきり……って、後味がどうも。
がみのさんの「隣のバンパイア」。アパートのベランダで涼んでいると、隣の部屋のベランダで「手のひら」を「蚊の大群」に差しだし、若い女性が「赤い血」のようなものを呑んでいる。なんとその女性はバンパイアだったのだ。「ぼく」はそのバンパイアを好きになり、定期的に血を吸ってもらうようになる。なんて幸福な気持ちなんだろう。彼女は血をよい状態に保つため、いろいろ「ぼく」に命令する。でもその結果、どんどん健康になってゆく。バンパイア万歳。そして……この作品にもオチらしいオチがありませんでした。
三浦行馬さんの「倒木」。久しぶりに実家を訪ねた「俺」の前に、見知らぬ男が現れる。その男に案内されて会った「父」は以前とは変わり、すっかり衰えていた。「俺」を父のところに案内した男、それは「小村」という名前の「介護士」だった。樹齢百年の杉の大木をも切り倒した「父」は、もはや「俺」が息子であることもわからなくなっていたのだ。かつて「父」と歩いた道にあったバクテリアに「寄生」されて朽ちて倒れた「倒木」と同じように「老い」に「寄生」されていたのである……これも、直接的すぎるのが難。
跡部佐知さんの「頭上のヤドリギ」は「冬虫夏草に寄生された虫は、ゾンビになる」という文章で始まる。さて、どんなお話なのか。いつものように友だちとカフェで話す。恋愛の相談相手になってやっているのだ。ところが、様子がおかしい。なんと、その友だち、いい相談相手を見つけたというのだ。それはAI! なんでも相談できるし、なんでも理解してくれて、言われた通りにやると、なんでもうまくいく。驚いたわたしもAIに相談するようになると……その通りのお話だが、これではちょっと「小説未満」ではないでしょうか。
ともママさんの「義父の野菜」。冒頭で「私」は
■第54回 [ 才能 ]
ええ、課題は「才能」です。なんだか、身近過ぎる、というか、考えこみそうな課題ですね。でも、あらゆる分野にあらゆるタイプの「才能」があります。こんなところに、こんな! という作品を読ませてください。
■第55回 [ コンテスト ]いや、確かにこの「小説でもどうぞ」もコンテストなんですが。小説だけではなく、あらゆる表現にコンテストはありますよね。いや、それ以外のところにも、もしかしたら、コンテストと呼ぶしかないものがあるかも。
■第54回 [ 才能 ]
1/1~1/31(23:59)
■第55回 [ コンテスト ]
2/1~2/28(23:59)
本文2000字程度。縦書き。
(テキストデータは横書きでかまいません)
書式は自由ですが、A4判40字×30行を推奨します。
WEB応募に限ります。
応募専用ページにアクセスし、原稿をアップロ―ド。
(ファイル名は「第○回_作品名_作者名」とし、ファイル名に上記以外の記号類、および全角の記号は使用不可。_の記号は半角に)
作品の1行目にタイトル、2行目に氏名(ペンネームを使うときはペンネーム)、3行目を空けて4行目から本文をお書きください。
本文以外の字数は規定枚数(字数)にカウントしません。
Wordの方は作品にノンブル(ページ数)をふってください。
応募点数3編以内。作品の返却は不可。
Wordで書かれる方は、40字×30行を推奨します。
ご自分で設定してもかまいませんが、こちらからもフォーマットがダウンロードできます。
作品は未発表オリジナル作品に限ります。
入賞作品の著作権は公募ガイド社に帰属します。
AIを使用して書いた作品はご遠慮ください。
入選作品は趣旨を変えない範囲で加筆修正することがあります。
応募者には公募ガイド社から公募やイベントに関する情報をお知らせすることがあります。
第54回 2026/4/1、Koubo上
第55回 2026/5/1、Koubo上
最優秀賞1編=Amazonギフト券1万円分
佳作7編=記念品
選外佳作=WEB掲載
※最優秀賞が複数あった場合は按分とします。
※発表月の翌月初旬頃に記念品を発送いたします。
配送の遅れ等により時期が前後する場合がございます。
ten@koubo.co.jp
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