公募/コンテスト/コンペ情報なら「Koubo」

【小説初心者は押さえておきたい!】長編小説を盛り上げる対立・三角関係・ミステリー・サスペンスの要点を徹底解説

タグ
エッセイ
小説
バックナンバー

ページを繰る手が止まらない 読みたくなる秘薬 “面白くナール”

“面白くナール”が配合されていない小説は、平板で、退屈で、ページを繰る意欲が失せる。そうならないよう、小説が盛り上がる鉄則を作品に盛り込もう!

面白くさせるには鉄則がある

どんな平板な話でもこの要素を盛り込めば、いやがうえにも盛り上がるという鉄則がある。名づけて〝面白くナール〞。

そんな特効薬のような成分の効能は、次のページをめくりたいと思わせることだ。その方法は笑いや官能など無数にあるが、ここでは「対立・葛藤」「三角関係」「ミステリー」「サスペンス」の四つを取り上げる。あなたの長編にもぜひ盛り込もう!

対立・葛藤

複雑にからみ合い、もつれ合う

英語で言うコンフリクト。強い競争相手がいると競争原理が働いて面白くなる。

この対立の複雑版が葛藤。葛藤は板挟みという意味でも使うが、本来の意味は葛や藤がからみ合うこと。一対一の対決も盛り上がるが、味方の中にも敵がいたり、敵の敵が味方だったりするとさらにいい。問題解決が難しくなって読者にはストレスがかかるが、それが解決したときには快感がある。

『陸王』(池井戸潤著・集英社文庫・1100円)

老舗足袋業者の紘一はランニングシューズの開発に乗り出すが、番頭は反対し、銀行も融資を渋る。競合メーカーもいる。問題山積の中、紘一は勝負に出る。

『陸王』のもつれ合い具合

スクリーンショット 2026-02-06 151802.png

三角関係

漱石も生涯追求した、誰も悪くない対立

夏目漱石は「二個の者が samespace ヲ occupy スル訳には行かぬ」と言っている。これは、二人が同じ場所を独占することはできないという意味。つまり、三角関係を指し、『三四郎』『こころ』など全漱石作品に共通する命題。

漱石も命題としたこの三角関係が一対一の恋愛より面白くなるのは種の生存を懸けた対立であり、本能と倫理観がせめぎ合うから。三角関係は古くて新しい題材だ。

『ひらいて』(綿矢りさ著・新潮文庫・539円)

STORY 
愛は西村たとえが好きになるが、たとえは美雪と付き合っている。たとえが好きすぎる愛は暴走し、たとえの彼女の美雪に近づき、美雪をもてあそぶように愛撫する。

三角関係が盛り上がる理由

ルネ・ジラールは、欲望は他者の欲望のコピーと言う。コピーされた欲望は幻想だから尽きることがなく、身をほろぼすこともある。人類特有の現象で、題材にすると根源的な部分で面白くなる。

こんなことも意識しよう

緩急・落差

怖い場面の前に濡れ場があったり、シリアスな場面の前後に笑いがあったり、急展開したり。のんべんだらりとした話にもメリハリがつく。

対比・対照

生死、善悪など、どちらかだけだと意識しにくいものも対比的に描くと際立つ。人物も対照的にするとコントラストがつき、相乗効果も生まれる。

ミステリ―(謎)

推理小説でなくても謎は仕込める

『自転しながら公転する』は主人公が結婚するところから始まるが、この導入部のあと、時間が巻き戻
され、主人公は別の男性と付き合っている。これは倒叙ミステリーの手法と同じで、最初に答えが示
されたあと、時間が巻き戻され、「この状況がいかにして冒頭の状況になるのか」という謎で物語が引っ張られていく。ミステリーでなくてもミステリーの手法を取り入れ、面白くすることができる。

『自転しながら公転する』(山本文緒著・新潮社・1980円)

STORY 
都は茨城の実家に戻り、恋人もできる。結婚、仕事、親の介護に頑張る都の選択は?そこには驚きの結末が!

応用したいミステリーの手法

倒叙
最初に謎が明かされ、探偵役などの主人公がいかにそれを解明するかを叙述していく。結末ではなく、結末の一つ手前の場面を導入部とするパターンもある。

叙述トリック
「強靭な肉体を持った乱暴者=若い男性」といった先入観などを利用し、叙述の仕方で読者をミスリードする方法。映像を持たない形式の小説だからできる手法。

二重、三重の謎
冒頭の謎で物語を引っ張るのはもちろん、物語が展開するごとに謎が増えていく。謎が1、2、3と三つでてくれば、逆順に3、2、1と解かれていくのが定石。

サスペンス(緊張)

緊張感を高める二つの方法

サスペンスは、中空につり下げられたような緊張状態を指す。サスペンスを盛り上げるには、まず主人公の五感を使い、一視点で書くこと。どうなるかわからない主人公に自分を重ね、読者も緊張でドキドキする。

客観三人称で、何も知らない主人公を書く方法もある(読者は危険を知っている)。ただ、これはタネ明かしをすることでもあり、うまくやらないと台なしになる。

サスペンスを盛り上げるコツ

主人公の五感で書く
『パーキングエリア』では犯罪を見たことを知られたら殺されるという緊張感がずっと続くが、これも客観的に書いたら他人事になってしまう。主人公の一視点で書かれているので怖さが伝わる。

読者だけにタネ明かしする
たとえば、テロリストが店にいることをにおわせておき、そこに主人公がやってきて隣の席に座る。主人公は何も知らないのでお気楽だが、読者は「これはまずいのではないか」とハラハラする。ただし、におわせるだけで展開は明かさない。「まずい」「いや、大丈夫」「でもやっぱりまずい」と読者の感情を揺さぶろう。

『パーキングエリア』(テイラー・アダムス著・ハヤカワ・ミステリ文庫・1188円)

STORY 
厳冬のパーキングエリアで隣の車の中に少女が監禁されているのを目撃。犯人は誰か。緊張が続く。

小説としての面白さとは?

感動の正体は共感すること

いくら悲しい話でも「好きな人と別れました」というあらすじでは感動できない。感動するには自分と重ねるだけの情報があって、「その気持ち、わかる」と共感すること。主人公は困難にあっても前を向いていて、その結果に対して「よかった」と思えること。

さらに言えば、「希望」を描くならその前に「絶望」を配すなど、常に逆の場面をおいて差を際立たせると感動が増す。

発見する、気づくという面白さ

小説の面白さには何かを発見したり、新しい見方に気づいたりという喜びもある。

安部公房『終りし道の標べに』に「終った所から始めた旅に、終りはない」とあるが、これを読んで真理だと思ったり、芥川龍之介『藪の中』を読んで、事実は一つでも真実は無数にあると思ったり。

これらはあからさまに書いては台なし。物語の中に閉じ込めて、読者に発見させるように書こう。

「そうだ、そうだ」と思える喜び

たとえば、介護、就活、婚活、ペットロスなど、自分と同じつらい境遇を描いた小説を読むと、経験者はそれだけで共感する。さらに経験者でなければわからない微妙な感情を代弁してくれると共感度はマックスに。

「そうだったのか」と知らされる喜び

自分とはかけ離れた世界、たとえば高齢者ならアイドルおたくの世界や、逆に若い世代なら一見華やかに見える高度成長期のひどい現実など、普通なら知らないでいる世界を垣間見られるのも小説を読む喜びの一つ。


ワーク:これまでのワークで考えたあらすじに、あなたなりの〝面白くナール〞を配合してみよう。

※本記事は2022年1月号に掲載した記事を再掲載したものです。