「小説の取扱説明書」~その42 体で覚えるまで練習する~


公募ガイドのキャラクター・ヨルモが小説の書き方やコツをアドバイスします。ショートショートから長編小説まで、小説の執筆に必要な情報が満載の連載企画です。
第42回のテーマは、「体で覚えるまで練習する」です。
二つの目が必要
サッカーやバスケットボールでは、ドリブルをしながら、どこにパスをしようか、シュートをしようかと周囲を見ていますね。このとき、名選手は現実の風景という映像と、ピッチを俯瞰で見ている映像が頭にあるそうです。
スポーツをするときは、目の前を見る目と全体を見る目、二つの目が必要ですね。
二つのことを同時にこなすという意味では、車の運転にも似たところがあります。
両目は目の前の状況を見ていますが、同時にブレーキやアクセルを足で操作し、手ではハンドルやシフトレバーを操作します。
免許取り立ての頃、気持ちがシフトレバーのほうにいってしまい、ハンドル操作がおろそかになったりしましたよね。それでは危険ですね。蛇行運転してしまうかもしれません。
小説を書くときも同じで、書きながら同時に考えないといけないことがたくさんあります。
まず、文章をどう書くか。語順を考えたり、前後関係を考えたり、それだけでかなり忙しい。
加えて、表現的に凡庸ではないか、安易ではないか、陳腐ではないかも考えないといけません。ストーリー展開も、リアリティーがあるかも考えないといけません。
目の前の文章を書くだけ手一杯なら、ストーリーは蛇行してしまうかもしれませんね。
技術は考えなくてもできるようになるまで反復
NHK朝ドラ「エール」を観ていたら、楽譜どおりに歌うことと自己表現の両立に悩む妻に、主人公の裕一は、「技術は、考えなくてもできるようになるまで練習するしかないよ」と言いました。これは小説や文章表現にも通じるところがあります。
情景が頭にあり、それをわかりやくい文章にするというだけなら苦もなくできるというレベルにないと、ストーリーは面白いか、ロジック(辻褄は)通っているか、読む人を納得させられるリアリティーはあるかなんて考えている余裕はないですよね。
スポーツでは素振りや守備練習を、毎日毎日、バカみたいに同じことを繰り返しますが、これが大事です。
小説を書く場合も、書いて書いて、何も考えずとも自由に表現できるようになるまで書く必要があります。
地道な努力ですね。
ゴッホは画家を志した当初、最初の10年は敢えて素描(デッサン)だけに専念したそうです。その数、生涯に1100点。一足飛びに実作には向かわず、地道に習作を続ける。
ゴッホの絵は、こうした基礎練習の反復の賜物なんですね。
(ヨルモ)
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ヨルモって何者?
公募ガイドのキャラクターの黒ヤギくん。公募に応募していることを内緒にしている隠れ公募ファン。幼馴染に白ヤギのヒルモくんがいます。「小説の取扱書」を執筆しているのは、ヨルモのお父さんの先代ヨルモ。